再会 1
ステラさん視点です。
1章、2章始めに出てくるキャラで、
ロストくんが城塞都市シリウスで冒険者をしていた時の担当受付嬢が彼女になります。
ーステラ視点ー
話は数ヶ月前に遡る。アトラディア王国南部の都市シリウスで私はギルドの手伝いをしていた。きっかけは恩人で義父であるグレゴールの指示だったか、そのため断らず了解した。本当は人とはもう関わりたくなかった。父と母、妹、近くに住んでいる優しい高齢の家族。町とすら呼べない集落だったが私は幸せだった。そうその全てを失ったあの日までは。
私を残し集落の人々は襲ってきた盗賊に殺された。だがギルドの仕事に従事した今だからわかる。あれは盗賊なんかではない。金品には手を付けず集落の人間を殺して回っていた。私が生き残れたのは両親の犠牲と運の良さのおかげだ。両親が稼いでくれた時間のおかげで現在の義父グレゴールが間に合った。義父が集落に現れた理由は、偶然近場を歩いており森の中から見える火の手を見て駆けつけたらしい、本当に運がよかっただけのなのだ。だが私の幸運とは逆に妹は不運だった。その当時妹は森に遊びに行っていた。そしてその森の中で盗賊に出会い、一番最初に殺された。
大切な人が誰もいない世界で両親の守ってくれた命を胸に生きる。6歳の私には難し過ぎる問題だった。義父に引き取られた後私は人と関わるのが怖くなった。義父のギルド長と言う仕事故に彼は家にいる時間がどうしても取れず家政婦さんを雇った。彼女の存在を私は許容した。家政婦1人と外に出て買い物をする際に接する人間の数どちらが多いかと子供ながら考えたからだ。次に私が努力をしたのは勉強だ。子供は教会に行き勉学を学ぶ事になっている。文字の読み書き、数字の計算、歴史、国独自の法律。でも教会に行けば多くの人と関わる。子供はもちろん、神父、シスター、そんなのはゴメンだ。私は心の準備と称し義父から時間を貰い1人勉学に励んだ。教材などは義父に気を紛らわせる物として自ら指定した。
少し複雑そうな顔を義父はしたが私が求めた教材を与えてくれた。今思えば義父も気付いていたのだろう私の魂胆に、それでも心の傷を治すのに時間は必要だと見守る事を選んでくれた。私のそんな生活は6年近く続いた。私の歳は12になり相変わらず回りの人間は家政婦と義父のみだ。家政婦との関係は相変わらずビジネスライクな関係であり真に信じられる人物は義父1人だ。そんなある時義父が珍しく私に提案をしてきた。
「ステラ、ギルドの仕事を手伝って見ないか?」
「わかりました」
考える素振りも見せず了解した。今のままではいけないと漠然とだが思っていた。そして担当したのがロストだ。
「よろしくお願いします。ステラさん」
「……よろしくお願いします」
彼は人を拒絶してた私から見てもひどい扱いを受けていた。それでも諦めず人の数倍努力をし、夜遅くまでギルドに残り教官に教えを請うていた。頑張っている、そんな薄い印象を持ちつつも強い彼を羨ましがっていた。だがある日ギルドにある図書館で見た彼の姿に心動かされた。
義父の誕生なので一緒に帰ろう、そんな事を思いつきギルドに残っていたが予想以上に義父の仕事は中々終わらない。夜10:00を過ぎても終わりが見えず、家政婦さんから私がまだ帰宅していない旨の言伝が義父の耳に入り私は家に帰るよう言われてしまった。少し拗ねていた私は本を借りてから帰ろうとギルドの図書館に寄った。その時ロストがいた。普段なら近くに人がいれば気付く彼だが今回は気づきもしない。
彼の背に立ち様子を確かめると肩を震わせ涙を流していた。声を挙げることを忘れたようにただ無言で涙を流す彼に。
「大丈夫ですか?」
声を掛けてしまった。
「はは、大丈夫だよ。ステラさんもどうしたのこんな夜遅くに?」
右の袖で涙を拭きこちらに顔を向けるロストだが目元は赤く私と話している僅かな時間の間も耐えられず再び瞼から涙が溢れる。
「ステラさんごめん、僕帰るから」
彼は逃げるように走り去ってしまった。彼の読んでいた本のタイトルはローデウス伯爵が教える魔術理論。その時気付いたのは魔術に関係する本を50音順で見た場合このローデウス伯爵の本が最後に当たる物だということだ。
私は勘違いしていたのかも知れない。ロストがどんな逆境に陥っても平然としていられる強い人だと。家に着くまでロストが泣いている表情で頭がいっぱいだった。胸に抱えている本も彼が置いて行ったローデウス伯爵の本だ。
部屋に戻り本をめくる。微かだが本のページが所々湿っている。魔術理論に書かれている場所、関係ない小話、共通している所は本の終わりに近づく程湿っているページが多くなる。本好きとしては怒らなければいけない所だ、でも私にはこの本の湿りから彼の悲鳴が聞こえた。その日はすぐに布団の中に入り眠りに着く。彼に明日会うために。
「おはようございます。ステラさん今日の仕事はなんですか?」
いつもと同じように明るく振る舞うロスト。彼は仕事の説明を受けると走って出口に向かってしまう。途中意地悪な先輩に足を引っ掛けられ転ぶ。周りの冒険者が彼を笑いものにするが誰も止めない。受付の人達は何か文句を言いたそうにしていたが誰も手を差し伸べない。だがロストは何事もなく立ち上がった。恐らくだが最も今の状況に興味がないのはロストだ。何故なら彼の瞳は純粋なまでに前を向いていた。
「馬鹿らしい」
それはロストに向かっての言葉でもなく、彼を笑っている連中への声でもない、足を引っ掛けた愚か者に対してでも。
「私は何をしているのだろうか?」
確かに私の境遇は辛い。家族を殺され、心の傷も深い、でも臆病な私を待っていてくれる義父がいる。そして眼の前には1人きりでも立ち向かう勇気を見せてくれるロストがいる。そんな彼らが近場で生きていると、閉じこもっている私が馬鹿に見える。だから。
「サラさん。私に仕事を教えて下さい」
「ふふ、ご指名嬉しいわ」
少しずつ、でも確実に歩んでいく。両親に守って貰ったこの命を妹の分まで。
*
「夢?」
優しい朝日が私の目を覚ました。布団から起き、寝間着を脱いで制服に着替える。今も眠り続けているルームメイトを軽く揺する。
「起きて下さいルーミア、朝食の時間に遅れますよ」
「は、それはいけない」
彼女の食い意地に呆れながらも見つめる。背が小さく可愛らしい外見の彼女はその明るい金髪も相まってクラス内でマスコットとしての人気を博している。又貴族、平民関係なく接する彼女のお陰で私の学園生活は順調の一言だ。カルミラ学園は男女共学、そして貴族平民が共に通う学園だ。王都でも屈指の名門校として名を馳せているがその分名を使い悪さをする者も多い。
「そういえば。ルーミア荷物が届いていますよ」
ルーミアは前日遊び疲れて寝てしまった為気付いていなかったが荷物が届いていた。それを伝えると彼女は荷物に近づき共に付けられていた手紙を手に取る。
「あ、パパの手紙だ。緊急かも知れないからステラは先に食堂に行ってて」
「わかりました。ルーミアもすぐに来てくださいね。席も取っておきますから」
「了解」
少し眠そうなルーミアを部屋に残し食堂に向かう。5分程経つと朝に似合う焦った足音が聞こえる。テンパりやすいルーミアはいつも私が部屋にいないと慌てて食堂まで降りてくる。一応一言だけ声は掛けているのだが寝ぼけて聞いていない事も多い。そんな変わらない彼女を見ていると日常を感じられて安心できる。
「ステラ助けて!!」
どうやらいつもとルーミアの違う行動、その要件に興味を持つ。いつもなら「ステラ何処?」が常套句な彼女だ。
「どうしました?」
声を掛け、取っておいた対面の席に座らせ話を聞く。
「剣を届けなきゃいけないの。王都にいる冒険者のロストって知ってる?」
思わず出た知った名に驚きよりも笑みが漏れる。彼と王都でもう一度会える。夢想より早い再開に期待が胸を占めた。
拙い文ですが読んで頂きありがとうございました。
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