戦争準備①
カーリスさんとの話が終わり、大臣室に着いた俺と茉莉とナタリアさん。
一応これから、戦争の戦い方を考えていこうと思う。
しかしその前に一つ、茉莉に質問してみる。
「ねえ、茉莉。戦争、勝てると思う?」
「うーん、やっぱり三対一になるから大変ってこと以外はわからないかな。」
「そのことは百も承知してるからね。それじゃあ、やれることをやっていこう。ナタリアさん、敵の情報を教えてください。」
「わかりました。こちらが資料です。まず、知っておいてほしいのですが、この大陸の国々の軍は、それぞれが長所を持っています。神国は魔導部隊、公国は弓兵隊、帝国は騎馬隊、共和国は剣兵、そして王国は槍兵です。敵のおおよその戦力は先ほどの協議で出たとおり、約四千万人と考えられています。王国軍は、二千万人。兵力差は二千万人と、かなり不利です。共和国が敗れたとすれば、敵は北と西の二方向から攻めてくると思われます。」
「ちょっといいですか?敵は海から来る可能性もあるではないですか。全方向から攻めてくると考えるべきだとだと思います。」
「...分かりました。敵は全方向から攻めてくる可能性があり、北側以外では、地形等は利用しずらいため、注意が必要です。海から来た場合ですが、前例がないため、どのようになるのかは予想できません。十数年前まで海上戦力は皆無で、今現在も技術が未発達のため、我が国の海上戦力は、船が数隻あるだけであまり期待できません。敵が海上から来るのであれば、かなりの数の船を用意出来ていると思われます。そうなりますと、海から上陸され、戦況はかなり厳しくなってしまいます。二千万人もの戦力差がある為、全方位からの攻撃に耐えきることは至難の業です。」
「それだとだめです。勝てるようにしないと...陸軍の構成はどうなっていますか?」
「陸軍は、総勢千五百万人。そのうち、歩兵が剣兵三百万人、槍兵五百万人の総勢八百万人、騎兵が騎馬兵四百万人、騎獣兵百万人の総勢五百万人、魔道兵が二百万人という構成になっています。」
「確か王国軍は、他国に比べて槍兵が強いんですよね?」
「そうです。」
「なるほど。では、それを考慮して、私達だけで簡単に作戦を考えてしまいましょう。」
「私達だけで良いのですか?」
「簡単にですから、細かいところは、本職の人たちに考えてしまいます。」
「分かりました。出来る限りのことをしましょう。」
「まず陸軍ですが、歩兵の鎧って軽装ですか?」
「いえ、軽装歩兵はあまりいません。基本は重装歩兵です。」
「早く動ける方が有利だと思います。軽装歩兵とは別に、重装歩兵の中から一部を引き抜いて、早く動ける部隊を新しく作りましょう。あと、弓を作る部隊はないのですか?」
「はい。王国の戦法は正面突破が多いですが、弓などの遠距離部隊はなく、歩兵の重装備を活かして、敵を撃破していました。」
「脳筋?...そんなので勝てたのか...」
「さすがに今回の戦争でその戦法は使えませんよ。」
「あはは、そんな戦法は使いませんよ。ですが、今回は今までと正反対の戦い方をしようと考えているので、機動力を効率的に使えれば価値も見えてくるかもしれませんね。弓兵は、今から用意しても間に合わないかもしれませんから、私が代わりの物を用意しておきます。それを使いましょう。とりあえず、今度軍を再編成しましょうか。」
「分かりました。陸軍元帥様に軍隊の再編成をを頼んでおきます。」
「それには私もつい低下させていただきます。ちょっと気になりますので次に海軍ですね。実際に船を見たいのですが。」
「分かりました。今すぐにはいけませんので、明日見に行きましょう。手配しておきます。」
「お願いします。」
そんなこんなで、作戦までとは行かなかったが、陸軍の再編成と、海軍の視察が決まった。
就任してからまだ一日もたっていない状態なので、十分な成果なのではないだろうか?
まだ時間はあるはずだ。
その間に、この俺でも出来る出来ることをやっていこう。
まあ基本的には、本職の人たちに丸投げになると思うが...
とりあえず、今は明日の海軍の視察に集中しよう。
シュミレーションをしたところ、敵は海から攻めてくる可能性が高い。
一番防御が薄く、攻め込みやすいからだろう。
それは阻止しないといけない。
何とかして、海軍を強化しないといけないのだ。
時間はあるとはいえ、後一年もしないで敵が来るだろうから、それまでに終わらせなくてはいけないのだ。
船は作るのに時間がかかるだろう。
海軍は特に、急がなければならない。
だから、明日の視察は、とても大切だ。
どうすればいいのか、事前に案をいくつか考えておくのもいいだろう。
次の日、俺と茉莉とナタリアさんの三人で港に来ていた。
港の案内をしてくれるのは、海軍の人ではなく、ナタリアさんがしてくれるみたいである。
まあ、知らない人が案内してくれるよりかは、知人がしてくれる方が気が楽だ。
ナタリアさんは、色んな事を知っていて、俺が質問したことにすべて答えてくれている。
とても頼りになっている。
今日もたくさん頼らさせていただこう。
「早速案内させていただきます。まず、正面に見える特に大きい数隻の船ですが、あれが王国海軍の船になります。数は、あれで全てです。船の特徴としては、その大きさでしょう。今現在、確認出来ている限りでは、最大規模の軍艦となっています。この軍艦にも、王国軍の考えが浸透していて、戦列艦の側面には、多数の魔術発射口があり、そこから魔法使いが魔法を放ち、それによる物量での強行突破がメインの戦術となります。その為、火力は非常に高く、申し分ないのですが、その巨大さと重量のため、大勢の人で漕いでもスピードが出ず、長距離の航行が出来ない事です。」
「長距離航行できないのは、かなりの問題ですね...原因は大きさと重量なんですよね?なら、重さをどうにかして、動力を確保できれば、解決できるはずです。動力は何ですか?」
「人力で漕いでいます。一応、帆も有りますが、あまり役に立っていません。」
帆が役に立たない?
つけて意味があるのだろうか?
そんな無意味なものは撤去してしまえ。
いつ戦争は始まってもおかしくない。
思いついたら即実行することが大切だ。
俺は船まで軽くジャンプする。
甲板に着地することが出来た。
此処で久しぶりの登場、万変の玉。
船は木造だ。
帆を撤去するなら、柱をのこぎりで切るべきだろうか?
いや、それでは時間がかかってしまう。
チェンソーはどうだろう?
音がうるさくなってしまい、何の音かわからない周囲の人たちが、パニックになってしまうかもしれない。
ああ、もう考えるのが面倒くさい。
一気に切り倒してしまえ。
俺は万変の玉を刀に変化させ、横に一閃した。
柱はきれいに切れて、倒れ始めた。
俺は刀を鞘に収めてから、柱が倒れないように支え、そのまま持ちあげる。
切った柱は、置き場所が無いため、適当に海底に突き刺しておく。
しかし、このやり方だと、根元の方が残ってまんまになってしまう。
まあ、いいか。
どうするかは後で考えよう。
俺は、他の帆もすべて同じように撤去していった。
そして、ジャンプで茉莉とナタリアさんがいる場所に戻ってきた。
「これで少しは軽くなったね。」
「あまり人間離れしたことをされてしまうと、後処理が大変なので控えてもらいたいです。」
「まあまあナタリアちゃん、別に良いじゃない。後処理だってきっとおにーちゃんが責任持ってやってくれるはずだから、好きにさせてあげてよ。」
「それなら構いませんが。」
「次に人員を減らそうか。新しい動力を作ろうよ。」
「おにーちゃん、話聞いてた?後処理してきて。」
「茉莉、分かったからそんな怖い目しないで...」




