海軍視察
切った柱を海から出して、乾燥させるために空き地っぽいところに置いてきた。
乾燥したら、そのまま何かに使うか、適当に加工して使えばいいだろう。
どっちにしろ、乾燥しなければ使い道が無いのだ。
乾燥するまで待たなければいけないから、放置しておいても怒られないだろう。
全く、この体はとても燃費が悪いのに、働かせるんじゃないよ。
そんなに働かせられたら、午後まで体力が持たないかもしれないぞ...
そんなことをねちねちと考えながら、茉莉たちのところへと戻る。
「とりあえず、片付けて来たよ。」
「はいはい、よく出来ました。それで、次は何するの?」
「次は、どうやって人員を削減するか考えようかなって思ってる。乗組員が減れば、その分重量は軽くなるからね。まず、動力を人力から、新しいものに変更しよう。」
「具体的にどのようなものにするのでしょうか?」
「そうだね...ここは科学が発展していないから、スクリューとかを簡単に作れないよね...何か動力源になってくれるものがあればな...」
「...使えるかどうかは分かりませんが、魔法石と言うものがあります。」
「魔法石?」
「はい。魔法石は、特殊な石に魔力が込められた物です。鉱山から多く採掘することが出来るのですが、使い道が少なく、かなりの量が余っている状態です。これをうまく使えれば、低コストで大量のエネルギーを得ることが出来ます。」
「魔法石から、どうやって魔力を取り出すの?」
「魔法石は、魔力タンクとして使うことができ、触れて魔法を使用すれば、そこから魔力を使用されます。さらに、魔道線を使えば、中から魔力を取り出す事ができ、魔力を動力源にする魔道具を使用する際に利用することが出来ます。なので、魔力を取り出す方法は確立しており、簡単に取り出す事が出来るので、心配する必要はありません。」
「いいね。じゃあ、その魔道具を作ればいいだけだね。」
「それは、魔道技師の仕事になります。とりあえず出来ることは、アイディアを出す事だけでしょう。」
「アイディアは今度ゆっくり考えよう。あとはやることないよね?」
「はい。」
「じゃあ、少しここらへんで休憩にしようよ。私はちょっと、船をゆっくり見ていきたいな。ナタリアさんはどうする?」
「私は、このあたりで休ませていただきます。用事がすみましたら、戻ってきてください。」
「茉莉は?」
「私も待ってるよ。ゆっくり見てきてね。」
おや、珍しい。
こういうときは、茉莉が付いてくることが多い。
まあ、それだけナタリアさんと仲良くなったのだろう。
いいことだ。
「分かった。じゃあ、行ってくるね。」
俺はまた、船のところまでジャンプした。
今回は、事前に視察すると言ってあるため、王国海軍から五隻全部の船を拝借することが出来た。
五隻とも、今日一日フリーである。
船に関してのことは全然詳しくないが、船をよく見ていけば、多少はわかることもあるだろう。
なにせ、地球よりも技術レベルは低い。
もしかしたら、こんな俺でも、少しばかりか、この世界の技術レベルに追いつけることが出来るかもしれない。
まあ、かもしれないと言うだけで、追いつくのはかなり先だと思うが...
だが、今のうちにしっかり見ておいて、損はないだろう。
正直、気になるっていうのが本音なのだが...
そこは特に問題ではないだろう。
取り合えず、船を隅々まで散策してみる。
特に、見えないところを重点的に確かめてみる。
見えないところを見るときには、探査魔法の探知が役に立つ。
それによって、あることが分かった。
まず、王国海軍の軍艦五隻は、どれも型が同じであり、作り方も構造もすべて同じなようである。
しかし、それゆえか、とある共通の弱点を発見した。
この船は、まず最初に、幾つかのパーツごとに分けて作り、それを組み合わせて作っているようである。
作り方自体は、効率的でいいと思う。
しかし、そのパーツのつなぎ方が悪いのだろう。
パーツとパーツの間、つなぎ目のところの装甲が薄すぎる。
ちょっとした衝撃で、船体がばらばらになってしまう可能性がある。
つなぎ目は、一番ばらばらになりやすい場所である。
もっと補強すべきである。
いや、いっそのこと、木造船を鉄鋼船に変えてしまおう。
そうすれば、強度も一段と高くなるだろう。
これもアイディアとして、伝えておいてもらおう。
船を隅々まで調べてみたが、他には特に何もなかった。
もっと船の事に詳しかったら、他にも何か問題を発見できたかもしれないが、あいにく俺は船に関して素人である。
きっといろいろ実験をして行けば、他にも問題は浮かび上がってくるだろう。
現段階でも、革命と言っても差支えが無いほど、先進的な技術開発が始まろうとしている。
それだけでも十分だろう。
やりたいことがすんだ俺は、茉莉たちのところに戻る事にする。
ジャンプで戻ろうと思うが、少々ガス欠気味である。
まあ、すぐに動けなくなるわけではない。
一応、体力に余裕はある。
だが、まだ午前中でこの状況はちょっとまずい。
このままじゃ、体力が一日持たない。
しょうがない。
なるべく体力を消費せずに動けるように、魔法を併用して身体能力を軽く上げて、少しの力で済むようにしよう。
面倒くさいな...
魔法を使うと、肉体的には基本的には問題はないが、精神面で疲れてくる。
まあ、疲れてくると言っても、効率の悪い極大魔法を数十発連発しない限りは疲れないので、問題はない。
でも、面倒くさいのだ。
やるしかないから、仕方が無いのだが...
船から、解散した場所へジャンプで戻ってきた俺は、茉莉たちを探した。
二人は、木陰で休んでいた。
二人は話をしているようである。
あの表情の変化があまりないナタリアさんが、笑っている。
やっぱり二人は仲がいいのだ。
これからも仕事に行く時には、茉莉を連れていくことにしよう。
とりあえず俺は、二人のところに行くことにする。
「二人とも、何の話をしているの?」
「あ、おねーちゃん。もういいの?」
「うん、一通り見て来たよ。」
「船を見てきて、何か感想はありますか?」
「感想っていうか、問題点があったんだよね。つなぎ目のとこ炉の装甲が薄すぎるんだよね。何かあったら、つなぎ目のところからばらばらになっちゃうよ。」
「なるほど。そのことも伝えておきましょう。」
「ああ、その事なんだけど、今の船って木造でしょ?だからそれを金属にかえちゃおうよ。」
「金属にですか?」
「そう。乗員数も少なくなるからかなり軽くなるし、動力も新しいのになる予定だから、少し重くなるぐらい、問題はないと思うの。それだったら、木よりも強度がある金属にしちゃった方がいいと思うの。」
「なるほど。では、それも一緒に提案しておきます。」
「お願い。」
「じゃあ、もう仕事は終わりなの?」
「今日はもうやることはないかな。」
「じゃあ、ナタリアも一緒にお昼ごはんを食べようよ。」
「うん、そうしよう。ナタリアさんもそれでいい?」
「はい。ご一緒させていただきます。」
「じゃあ、どこで食べる?二人はどこがいい?」
「私はどこでも、ご一緒させていただきます。」
「うーん、じゃあ家でおにーちゃんがごはんを作って!」




