役職
「君に、役職をつけたいのだ。」
「役職ですか。」
「はい。今現在の状況は、前にお渡しした資料を見て、理解していただいていると思います。ですが最近、他国に不穏な動きがあります。それも、この大陸に存在する国の内、同盟国を除いたすべての国でです。これは異常事態です。これは予想になってしまうのですが、このままでは、連合軍を結成され...」
「この国に攻め込んでくるのですか?」
「その通りです。」
俺は、話を聞いた瞬間、シュミレーションを開始した。
その結果は、宰相の予想と同じだった。
他の結果になる可能性は、ないに等しいようである。
敵国の情報がかなり少ない状態なのに、この後の予想をたった一つに絞りきれるって、かなり
この大陸には、俺達がいるクハダ王国意外に、アズナリア帝国、サムリア共和国、聖タンザニア神国、ランマー公国の四カ国が、大陸の覇権をめぐって争っている。
ここ最近は、大きな衝突はなく、この大陸に存在している国の数は、かなり少なくなっているようだ。
一時期は、十以上の国があったそうだ。
それが争いが続くうちに、五つにまで統合されたようだ。
そして現在、アズナリア帝国、ランマー公国と、クハダ王国、サムリア共和国で同盟を結んでおり、聖タンザニア神国が中立を保っていて、国同士のバランスが保たれていた。
しかし今回、中立を保っていたはずの聖タンザニア神国は、アズナリア・ランマー同盟側に着くと思われ、不穏の動きを見せている。
国同士のバランスは、崩れつつあるのだ。
その状況で呼ばれたという事は、言われる事は一つしかないだろう。
「君を、軍事大臣に昇進させたいと思っています。。そうすれば、多くの情報がいち早く集まり、その権力を使って自由に行動できます。仕事は基本的に、副大臣と秘書に任せておけば何とかなるよう、優秀な人材を送っておきます。それで、引き受けて頂けるでしょうか?」
「わかりました。引き受けます。まあ断っても意味がないでしょうしね。」
「はい。なっていただかなければ、国は存亡の危機に陥ってしまうかもしれません。ですから、強引にでも受け入れさせなければいけないのですよ。」
「軍事大臣には、三日後に就任してもらう。三日後にまた来てくれ。それまでに副大臣と、秘書の二人を用意しておく。では、今日の話は以上だ。戻ってくれていいぞ。」
「わかりました、王様。失礼します。」
そう言って、俺は部屋を出た。
はあ、また面倒な事を引き受けてしまった。
断ろうと試みても、絶対に別の条件を提示してくるだろう。
俺が納得するまでずっとだ。
そこが痛いところである。
せっかくのチート能力も、役に立ちそうにない。
残念だ。
まあ、そんなすぐに戦争なんか、起きるわけがないだろう。
国同士のバランスが崩れたからと言っても、決して弱いわけではないのだ。
相手は、時間をかけて準備をしてくるだろう。
その準備期間があるから、早くても数カ月は先のはずだ。
それまでに、俺が動かなくても大丈夫なくらいに準備してしまえば、ゆっくりできるはずである。
まあ、秘書さんがついてくれるらしいから、そこまで心配する必要はないか。
気楽にやっていこう。
部屋を出た俺は、ルルの部屋に、ルルに変装して戻る。
一応、宰相さんもだます事が出来るくらいの変装だ。
なかなかのクオリティである。
だから堂々と城の中をルルとして歩く事が出来る。
それでも、安心しきってしまったらぼろが出てしまいそうだ。
少し急ぐ事にする。
少しだけだ。
あんまり急ぎすぎても、逆に怪しまれてしまうだろう。
最低ばれてしまっても、悪い事をしているわけではないから、あまり問題はないのだが。
せっかくなら、夜になるまでばれる事なくやりきりたいものである。
無事に部屋にたどり着いた。
今日は、これ以上やる事はないだろう。
そう思うと安心して、定位置となった椅子に座った。
椅子に座ると、あくびをした。
眠くなってしまったのだ。
この体になることで、すさまじいパワーを手に入れたが、燃費が悪くなっている。
これは意外と大問題だ。
確かに、今すぐに問題が発生するわけではないだろう。
しかし、戦争なんかが始まってしまえば、戦いっぱなしになってしまう可能性もあるのだ。
そうしたら、すぐに疲れて動けなくなってしまうかもしれない。
そうなったら、笑えない事態になってしまうかもしれない。
それは避けなければならない。
まあ、魔法を使えば体力を消費せずに戦う事が出来るから、あまり問題はないのかもしれない。
一応、これから成長する予定である。
ならば、体力は増えていくかもしれない。
とりあえず今は、それに期待するしかないのだろうか?
しかし、対策を考えようにも、今はとても眠い。
睡魔には勝てそうにない。
今の俺には、最大の敵である。
今から考えたとしても、考えがまとまる事はないだろう。
そんな気がする。
いや、気がするじゃなくて、確定事項だろう。
だが、このまま眠ろうとしても、椅子に座ったままで、良く眠れそうにないし、椅子から落ちてしまうかもしれない。
もしも誰かに、椅子から落ちてしまっているところをみられてしまったら、ルルに迷惑がかかってしまうかもしれない。
それはダメだろう。
だが眠気には逆らえない。
仕方がないので、ルルのベッドを使わせてもらう。
ベッドを乱さないように気をつけながら、思いっきりダイブする。
ベッドはとてもふかふかだ。
なんて最高なんだろう。
あれ?
何か引っかかる事がある気がする。
何だろう?
だが、その正体に気づくことなく、俺の意識は夢の世界へと旅立ってしまった。
何だろう?
体がふわふわしている。
この感覚は、前にも体験した事があるはずだ。
そう、こっちの世界に来たばかりの時に、一度だけ見た夢の時のだ。
これは、明晰夢ってやつなのだろう。
前と同じで、何も聞こえない。
薄暗い空間の中に、ただただ浮かんでいる感覚しかない。
そしてまた、何かが動いているのが、ぼんやりと見える。
しかし、覚えている事が正しければ、前よりかは近くに見える。
ほんの少しだけ、はっきり見える。
この前は、何が動いているのかまったくわからなかったが、今回は人型のように見える。
それが二人分見える。
何をしているのだろうか?
ああ、また目が覚めてしまう。
そこで何をしているんだ?
まだ、何も確かめられていないのに。
まだ、なにも...
目が覚めた。
うん?
なぜだろう?
ベルが俺の手を握って、心配そうにしている?
俺に何かあったのだろうか?
心当たりは何もないな。
変な夢を見ていたような気がするけど、悪夢ではなかったはずだ。
どんな夢を見ていたっけ?
うーん、どうしても思い出せない。
前にもこんな事があったようななかったような...
まあ、いいか。
「あ、やっと起きたわね。アオイちゃん、大丈夫?苦しそうじゃなかったけど、手をずっと伸ばしてたり、体ゆすっても起きなかったり...起きないのは、おかしくはないわね。とにかく、普通じゃなかったわよ。」
「そんなにおかしかったの?」
「とっても。」
「とっても?本当に?そんなになの...」
「そ、そんなに落ち込まないで。とってもおかしくても、かわいいのには変わりないし、見ててすごく癒されるわよ。」
「そういう問題じゃないでしょ!」
「そういう問題だわ。かわいいは正義だわ。」
「そうなんだろうけど...って、そうじゃないでしょ!そうだよね?えっ?わからなくなってきた...どうなの?どっちだったっけ?どっちなの?」
「そんなまじめに考えなくても良いのよ。」
「でも、でも...」
「ほら、もう夜だよ。早く帰らなくて良いの?」
「えっ、もうそんな時間なの?早く帰らなくちゃ!じゃ、じゃあね、また学校で!」
早く帰らないと怒られちゃうな。
転移使うか。
家に帰ったら、謝っておかなきゃな...




