遊び
無事に吸血鬼の館の入り口にたどり着いた俺と茉莉。
着地点にも大きなクレーターを作ってしまったが、きっと問題はないだろう。
このぐらいのクレーターぐらいならば、魔法で簡単に埋め立てる事も出来るだろうし。
そう思っているのは俺だけじゃないよね?
まあ、そんな事はどうでも良い。
とにかく、今回は吸血鬼に用がある。
たかがクレータの一つや二つにかまっている暇はないのだ。
館の玄関には、地球の家とは違いインターホンはない。
なので、ドアをノックする。
ノックの音は、あたりに無気味に響いた。
きっと館の中にも響いてくれているだろう。
しかし、少しの間待ってみても、物音一つしない。
もう一度ノックしてみるが、やはり物音一つしない。
しょうがない、乗り込むか。
一応、茉莉に確認を取ってみるが、笑顔で許可をもらえた。
なのでドアを魔法で爆破する。
「爆破!」
ドアは粉々に砕け散った。
こちらにも、ドアの破片が飛んできたが、小さすぎて痛くなかった。
まあ、目に入らないように、一応目を閉じていたが...
目を開けて見ると、俺と茉莉の前にはぽっかりと穴があいていた。
さて、無事に入れるようになったので、館の中にお邪魔させてもらう。
中は俺が勝手にしていた予想に反して、クモの巣なども一切なく、逆に埃一つない綺麗な状態だった。
俺の足元に木の粉が散乱している。
これは少し怒られてしまうかな?
まあ、怒られたならその時はその時だ。
とりあえずは、遊びに来たのだ。
この館の主を探してみる。
入ってすぐの場所にはいなかった。
少し散策してみる。
しかし、生活感のある場所がほとんどない。
本当にこの館に吸血鬼が住んでいるのだろうか?
とりあえず、探索をどんどん続ける。
すると、ひときわ大きい部屋の一番奥の方に、大きな椅子があって、そこに誰かが座っていた。
たぶん目標の吸血鬼である。
見た目は20~30歳ほどの黒髪の男性で、高身長である。
がたいは普通ぐらいである。
すると、急に立ちあがり話しかけてきた。
「貴様ら、俺様が誰だかわかっての行動か?」
「もちろんよ。おねーちゃんから聞いてるわ。吸血鬼でしょ。」
「俺様をそこらへんの吸血鬼と同じにするな!俺様は、”災害”の一人、殺戮 魔人王ギエル様の腹心の部下、バークレイ様だ!」
なんか地球にもいそうな名前である。
名前からしても、余り強そうな感じがしない。
どこかそこらへんにいそうな感じである。
こんなのが腹心とか、ギエルは良い部下がいなさそうである。
それか、バークレイが勝手に勘違いしているのかのどちらかであろう。
勘違いであるとするならば、とてもかわいそうなやつである。
同情するつもりはないが。
「貴様らは、俺様の足元にも及ばないのだ。俺様は心が広い。ドアを破壊したのは許してやろう。さっさと帰るが良い。俺様は忙しいのだ。」
「おねーちゃん、もう帰ろうよ。あんまり強くなさそうだし。どう見たって強くなさそうじゃん。そこらへんの吸血鬼と、全然変わらないじゃん。おねーちゃんもそう思うよね。」
「まあ、確かにそうだけど、言わない方がよかったんじゃない?言われた本人がかわいそうだよ。」
「き、貴様ら!所詮人間のゴミ屑どもが!俺様を侮辱しやがって!許さぬ、許さぬぞ!今すぐ消してやる!」
おお、怒った怒った。
こいつ、かなりちょろいぞ。
茉莉に合わせて正解だったようだ。
だが、俺と茉莉が言っていた事は、俺達からすれば事実である。
ステータスを見てみても、総合力は8000000程度で、一年前の俺よりも少し低い。
だから、俺達からしたら、奴の強さは普通、またはすくし弱いのである。
まあ、そうじゃなかったらこんな挑発していない。
バークレイは、本当に俺たちをすぐに消し去ろうとしているらしい。
魔法の詠唱をし始めた。
まあ、スキル 魔神の化身で知ることのできる魔法であるのであれば、俺らを消すことは不可能である。
何せ俺には、対魔法で奥の手があるからだ。
俺が今まで見てきた中で、五本の指に入るぐらいの無駄な行動を取っているバークレイ。
バークレイの周りには、ルルが魔法を使った時のように、周囲に魔法陣が展開されている。
大きな魔法を放つ時には、魔法陣を展開した方が良いのだろうか?
まあ、魔法陣を作る分の魔力がもったいない。
だから、俺はそんなもの作らずに極大魔法を作っていく。
まあ、他の人は、魔法陣を作って魔力を増殖させないと、魔力が足りないのだろう。
今はそんな事どうでもいいか。
バークレイの方を再度見てみると、頭上に火球が出来ている。
その火球はだんだん大きくなっている。
俺はそろそろころ合いだろうと思い、俺はとある行動を取る。
「詠唱中断...」
この魔法は、拳大の白い玉を相手に飛ばすのだが、その玉の速度は避けられないほどではない。
だから、この魔法を使っている事を相手が気づいて、よけたら元も子もないのだ。
しかし、詠唱するにはかなりの集中力が必要であり、集中する為に目を閉じいる人が多い。
バークレイも、目を閉じて詠唱をしているため、気づくには魔法発動の詠唱の声を聞くか、魔力を感知するしかない。
だが、わざわざ小声で言ったし、詠唱中断は、魔力を感知しにくい魔法である。
化け物でも何でもないバークレイが、感知できるはずがないのだ。
俺の予想通り、白い玉はバークレイの中に吸い込まれるように入っていった。
ここから起きる事は、ルルの時とさほど変わらない。
バークレイはが急に膝をつき、火球は消え、代わりに別の赤い玉が出てくる。
その玉が、鼓動するかのように動き出す。
そして、対消滅させきれないエネルギーはすべて、爆発のエネルギーに代わり、大爆発を起こす。
今回は、詠唱中断の発動を、相手が魔法を発動させるぎりぎりまで待ったのだ。
さらに、バークレイが発動させようとしていた魔法は、ルルが発動させようとした魔法よりも強力である。
だから、今回の爆発の威力は、前回とは比べ物にならない。
多少離れた位置にいる俺達は、ちょっと危険な状態である。
この爆発に巻き込まれたら、無傷では済まないだろう。
「茉莉、ここから出よう。」
「うん、そうだね。転移」
「くそ、貴様ら待ちやがれ!待ちやがれ!...」
茉莉は、俺の手を取って魔法を使った。
一瞬にして景色が変わる。
ここは、館から少し離れたところだ。
一応の為に、必要以上に距離を取ったのだろう。
すると、館の一角が消し飛んだ。
無事に爆発してくれたようだ。
館の一角が消し飛んだ影響で、館全体が崩れ始めた。
これで死んだかな?と思っていると、館の上に、バークレイがいた。
全身ぼろぼろである。
しとめ損ねたか。
そのままバークレイは、転移してどこかへ消え去ってしまった。
マップにも映っていないから、俺がまだ一度も行った事のないところにいるのだろう。
まあ、今回の目的は遊びに来た、と言うだけであり、しとめるのが目標ではない。
結果的に、バークレイはここからいなくなったのだ。
これで魔物大量発生も解決するだろう。
と言う事は、目標以上の事が今回で来たのだ
十分であろう。
さあ、セバスチャンが待っているところへ戻ろうか。




