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メモリーブラッド0  作者: sibatamei
第1章
7/89

メグ総長

 町を歩き約束の地へ。


 人は一人では生きていけないとエイジメモリーは言っている。


 もう一方の龍平メモリーでも人間は一人では生きていけないことを言っている。


 エイジメモリーの生きる事の最善策は、誰かの為に生きることであると言っている。もう一方の龍平メモリーでは、世の中に復習することで、自分の存在をアピールしている。

 前者は適切であると私の経験が物語っている。

 でも後者は、間違っていると私は思う。

 もし相手を傷つける事でアピールするなら、その気持ち私が受け止めて上げたいと思う。

 それは何の為なのか?自問自答すると、自分の為である。

 私が私である為に、この力を私は有効に使いたいと思っている。 


 だから、


 色々と考えながら歩き、約束の地へとたどり着いた。

 時計を持っていないし、正確な時間を知らせていないからか?誰も来ない。

 来るのは道路を走るトラックや車だ。


 やっぱり来ないか。


 仕方がない、龍平君達とは縁がなかったのだ。でももう少し待つことにする。


 後十分。


 後十分。


 夜明けはまだまだだが、だったら夜明けまで待とうかと決心した瞬間だった。


「おい」


 振り向くと、龍平君達は今日はバイクではなく徒歩で約束の場所に来たみたいだ。


 私はなぜか空でも飛べるんじゃないかと言うぐらいに嬉しくて、

「龍平君達、来てくれたんだ」


「おう」

 と返事をして龍平君達は私の元へと歩み寄ってきた。


「今日はバイクは」


「とりあえず中止だ」


「中止って?」

 すると私に大声で、


「何かてめえのおかげで何か調子が狂っちまってよ」

 ボリボリと頭をかく龍平君。


「龍平さん素直じゃないっすね。彼女に気があるんでしょ」

 と仲間の一人が言って、


「うるせー」


 私は仲間の台詞を聞いて、改めて龍平君を見ると、照れくさそうに視線を泳がせていることに私の心の奥底から後悔の念が押し寄せてきた。

 つまり龍平君は私に惚れた・・・。だから私は、


「い、言っておくけど私には彼氏がいるから、そういうのはダメよ」


「分かっているよ。お前に彼氏がいることぐらい」

 それを聞いて安心して、また龍平君の顔を見るとその視線を泳がせていた。

「何か私に言いたいことがあるの?」


「龍平さん」

 仲間がはっきり言えと言わんばかりに言う。


 すると龍平君は即座に土下座をして、それに続くように仲間達も土下座をした。


「とにかく悪かったのは俺たちの方だから、今日は、けじめを付けにこうして謝りに来た。

 あの時は悪かった」

 すると仲間達も、

「すいません」

 と謝罪する。


 突然そんな事をされて、嬉しいのやら、照れくさいやら、困惑やらで気持ちがあたふたとして、「べ、別に確かにあなた達が悪いけど、そこまでかしこまらなくても・・・」


 すると龍平君は立ち上がり、


「昨日俺たちで考えたけど、お前は昨日その気になれば、俺たちなんてミジンコのようにひねりつぶすことが出来たのにそれをしなかった」


 自分たちをミジンコだなんて例えるのは良くないと言おうとしたが、龍平君は続けて、


「あの時はお前を殺すことで夢中だったけど、後々考えて、お前の何つーか、思いやりみたいな物を感じてよ。

 お前みたいな奴に会ったのは俺も含めて仲間も初めてなんだよ」


 その時私は今まで感じたことのない嬉しさに涙がこみ上げてきた。


「どうした?泣いているのか?」


「いや、嬉しいんだよ」


「俺たちも嬉しかったよ」

 でも嬉しい涙を流すのは早いと思って、私はとっさに涙を拭って、

「でも、あなた達、また同じ事を繰り返すんじゃないでしょうね」

 黙り込む龍平君達。


 その沈黙にやましい気持ちを感じたので、

「世の中に復讐したって何も良いこと何て生まれない。だからあなた達のしている事は間違っている」


 龍平君達の目を見ると私の気持ちが届いた感じだった。続けて、


「生きるなら誰かの為になれるような生き方をしようよ」

 自分でも言っていてさらに涙がこみ上げてきた。


「確かに俺たちはおまえ達に悪い事をした。でも俺たちには居場所がないんだよ」


 龍平君の台詞を聞いて私は言葉を失う。


「学校の連中にも親にも蔑まれ、俺たちに行くところ何て、帰る所なんてないんだよ。

 端から見たら悪さに見えるけど、そうしないと生きられないんだよ」


 やるせない気持ちを悔しそうに訴える龍平君。私は返す言葉が見つからず黙るしかなかった。「だから、お前には本当に悪いことをした。今日はそれだけを伝えに来た」

 そういって龍平君達は背を向け去っていこうとしたところ、このまま行かせていけない気がして言葉を選んでいた。


 このままでは龍平君達は本当に取り返しのつかない事になってしまう。


 そんな事は私には関係ないとは言い切れなかった。


 だから私は龍平君達の背後から大声で、


「だったら私と一緒に見つけに行こうよ」


 龍平君達は振り向く、


「私と一緒に誰かのために生きれる物を見つけようよ。

 実を言うと、それは私も探しているの。

 だからもし失敗したら私のせいにして良いから、一緒に探しに行こうよ」


 すると激しい風がいきなり吹いて、私のスカートが思い切りめくれ、龍平君達は視線を泳がせながら嫌らしい顔を垣間見せた。


 こんな大事な話をしているのに、


 すると龍平君達は笑って、

「お前のパンツは白か」

 前言撤回本気で締めてやりたいと思った。


「もう。エッチ」


「男はみんなエロいんだよ」

 仲間達も笑う。


 なぜだろうか、みんな気持ちよさそうに笑っているとつられるように気持ちが和やかになり、見られたのは嫌だけど、それもあって良いと思えて私も笑ってしまった。


「お前の名前聞いていなかったな」


「川神メグ」


「じゃあ、メグ」

 私に一枚の布を投げつけ私はキャッチする。


 広げてみると、この暴走族の旗だった。


「何?」

 訳が分からず龍平君の目を見る。


「じゃあ明日から、メグが俺たちを仕切ってくれよ」


「私が」

 困惑する私。


「メグ言ったよな。一緒に誰かのために生きられる者を探しに行こうって。俺は便乗するよ」

 すると仲間達も


「俺も」


「俺も」


「俺も」


 言ってみんな便乗した。

 仲間達の龍平君の信頼は熱いものだと感じた。「今日からメグが俺たちの総長だよ」


「そんな勝手な事を言われても困るよ。私が暴走族の総長だなんて」


「今日のところはこれまでだ。もしメグにその気があるなら明日また、この時間で待っているよ」


「ちょっと」


 龍平君達はだまって背を向けて去って行ってしまった。


 龍平君達が見えなくなるまで、その姿を見ていた。


 そして見えなくなり、自分に貸せられた責任に押しつぶされそうになり、


「どうしよう」


 と叫んだ。

 するとまた嫌らしい風が私のスカートを全開にめくり上げ、


「何よ」


 と風に当たっても仕方がないと分かっていても私は地面を思い切り踏み、地面に亀裂が走る。


 手渡された総長の証だと思われる族の旗を見て、困惑して頭がおかしくなりそうだった。


 そろそろ夜明けだ。


 エイちゃんの部屋に戻り、手渡された旗を見られたら面倒な事になりそうなので、どこに隠そうかと思って隠すところが見あたらず、仕方なくパンツの中にとりあえず入れておいた。


 そして夜が開け私は考える。


 本当に大変な事になってしまったが、私の目的は私が思っていた以上に達成できたんじゃないかって。


 だから私が総長になってみんなをエスコートして上げれば良いんじゃないかって。


 でも暴走族の総長なんて。


 でも私は無力じゃない。  


 でも私の中で様々な葛藤がわき起こる。


 そんな中眠っているエイちゃんの寝顔を見つめ、心の栄養補給をしていた。


 そんな不安の中、こんな時いつもなら眠れなかったが、朝は無性に眠くなり、自然と眠りに吸い込まれるように私は眠りにつく。


 いつものように夜起きて、時計を見ると、二十時を示していた。


 起きたと同時に私の頭に不安が押し寄せてきた。


 それは昨日、龍平君達に暴走族の総長に任命された事。


 頼られる事は嬉しいが、私に龍平君達を引っ張っていけるか不安で、私はパソコン室でメールでエールを送っている豊川先生の所に行った。


 私は失礼ながらもノックも忘れて、パソコン室に入り、豊川先生の背中越しに語りかける。


「豊川先生、聞いてくださいよ」


「どうしたの」


 豊川先生はいつもなら背中越しで私の話を聞いていたが、今日は私がせっぱ詰まっていることを察したのか、振り向き笑顔で私の話を聞いている。


 豊川先生に私は昨日の顛末を話した。


「すごいねえ。メグちゃん。暴走族の人の心を掴んで、さらに頼られ総長に任命されるなんて」


 嬉しそうに笑いながら関心する豊川先生。


「確かに気持ちは嬉しいけど、私に出来るかどうか不安だし、このままほおっておくことも出来ないし、私どうしたら」


 豊川先生は「フフ」と笑ってパソコンの画面に向き作業に取りかかり、


「さあね」


 それは昨日と同じく自分で考えろと言っているような感じがして、でも私は自分一人では決められなくて、不安で不安で仕方なく、私は、


「豊川先生」


 と何とかしてと言うようにその名を呼ぶ。


「不安は付き物だよ。やるやらないはメグちゃんが決める事だから、僕がそれに対してこれ以上言う事はないよ」


 豊川先生の発言は正論だと思って、私もこれ以上豊川先生に話をしても仕方がないと思った。


 部屋に戻り、自分の気持ちを整理してみると。


 総長になれば私が龍平君達をエスコートできる。


 それは願ってもないことだ。


 それで私は気がついた。いや気がついていた。


 ただ単に不安だったことに。


 豊川先生は言っていたが何事も不安は付き物だって。


 その豊川先生の言葉はまるで私の背中を押しているようにも感じて、本当の優しさを感じた。


 だから後は私次第なんだ。


 一度乗りかかった船だ。


 その船は不安の荒波に煽られて、激しく揺れているが私はそれでもやりたい。総長になって龍平君達を私の手でエスコートしたい。


 そこで気がついたが不安に思うことは、その物事に対して真剣に考えている証拠だと、昨日の豊川先生の言葉を思い出して気がついた。


 パンツの中に隠していた総長の証の旗を見つめて、その旗をぎゅっと握りしめ、


「やるしかない」


 人知れず揺るぎない決意を人知れずに呟いた。


 そんな時、エイちゃんがドアを開け、私はとっさに旗を見られると何か面倒な事になりそうだから、すかさず、こんな所に隠したくないが、隠すところがないのでパンツの中に押し込んだ。


 この白いワンピースはかわいいんだけど、ポケットがないんだよね。でも私のお気に入りでエイちゃんは私に白い純白のワンピースが似合うって言ってくれていつも着ている。


「お帰りエイちゃん」


「ただいま」


 何か今日は明るい感じだ。そういえば龍平君達の事で頭がいっぱいで忘れていたが、私の生命維持のために血液の問題もあったのだった。


「メグ」


 明るい笑顔で私を見て、鞄の中身を逆さまにして、血液バンクがボトボトと大量に出てきた。


「メグ、これで心配はいらなくなったぞ」

 とエイちゃんは明るく言っているが、心の奥底から不安がわき起こってくる。


 この血液どうしたんだろう?


 何か嫌な予感がして気が気でなくなってくる。


 そんなエイちゃんに、

「この血液どうしたの?」


「いや、まあ、ちょっと医者の御曹司と仲良くなって、その分けてもらったんだよ」


 エイちゃんの口調とその視線を泳がせていることに何かやましさを感じた。


 もしかしたらエイちゃん何か悪いことをしてこの血液を手にしたんだと、疑った。


 でも眠っているときにメモリーブラッドでエイちゃんの心を読めば分かることだ。


 血液の事、暴走族の事で様々な問題が私の中でわき起こっているが、とにかく立ち止まって悩んでいる場合じゃない。


 とにかく私の目の前に起こっている問題を一つずつ解決させようと、気持ちの整理をつけ、とりあえず今日の所は大量に持ってきた輸血バンクを一つ吸って、エイちゃんが眠るのを待つ。


 そしてエイちゃんは眠りにつき、私はそれまでマンガを読んで暇をつぶしていた。


 エイちゃんはいつものように眠っている。


 ここでエイちゃんの手を取りメモリーブラッドを発動させ、エイちゃんの手をおもむろに握りその心を読むと。


 どうやらエイちゃんは同じ大学の医者の御曹司の弱みにつけ込み、大量の輸血バンクを手にしたみたいだ。


 エイちゃんの気持ちに私は複雑な気持ちだった。

 でも仕方がないと、その気持ちはおいといて、早速夜の町へ。


 町の展望台に上り私はいつものようにこの場で気持ちの整理をする。


 エイちゃんが悪さしてまで私の為に血液なんて持ってきて欲しくない。


 でもそうしないと私は生きられない。


 考えてみれば、私が血を吸わなければ、私の本能が暴走して、理性をなくして手当たり次第の人に襲い、その血液を吸い下手をしたら、その相手を殺してしまうかもしれない。


 もし血を欲する私に理性がなくなり、やがて私の大切な人たちが・・・・。


 考えただけで恐ろしくなる。


 だったら私は存在をなくなれば良いんじゃないかと思ったが、私は死にたくない。


 私を必要とする人はいる。


 それは昨日暴走族の総長に任命された事が物語っている。


 パンツの中にしまってある暴走族の総長の証の旗を取り出して、それを握りしめ、そろそろ約束の時間が迫っているので、いつものように展望台から飛び降りて、約束の場所に向かう。


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