再会
エイちゃんと私、せっかく同じ吸血鬼になれたのにな。
エイちゃんと私だったら究極の愛を共有できたはずなんだけどね。
ここはどこ?
私の意識しかない。
エイちゃんに会いたい。
それとみゆきちゃん節子ちゃん聡美ちゃんにダンデライオンの二人、それと藤沢三姉妹にも会いたい。それにいつも頼りになり豊川先生にも。
何だろう一筋の光が私を導いている。
その光の方へ私は進んでいく。
すると何か生ぬるい液体がポタリポタリと私の頬に流れ込んでくる。
そしてその滴が私の口元に流れ落ちると少ししょっぱい味がした。
私はその液体を知っている。
これは涙の味だ。
意識を取り戻すとみゆきちゃんが私の顔をじっと見て泣いていた。
「良かった。メグさん生きていたんだね」
生きるも何も私は禁忌を受け継ぎ吸血鬼、死ぬことはない。
でも魂を壊されるのは別だ。
「みんなは?」
「分からない。とにかくメグさんが生きていて良かった」
そういえば私達はアラタトから放り投げられ、バラバラになってこの地に辿りついたのだろう。
空を見上げると漆黒のオーラに包まれている。
デジャブは顕在している。
「ところでみゆきちゃん、ここはどこなの?」
辺りを見渡すと海岸であり、海もデジャブの仕業か赤く染まっている。
さらにイルカの死体が何体も何体も打ち上げられていた。
そんな光景を見て私は絶望に陥った。
「これもみんなデジャブの仕業だよ」
「誰かいないの?」
「ここにはみゆきとメグさんだけ」
「みゆきちゃん飛べる?」
「何とか、でもデジャブの漆黒のオーラが邪魔して力は落ちているけれど」
私たちは空を飛び、上空から海を見下ろした。
相変わらず、赤く生き物の死骸の臭いがたまらない。
これがデジャブが望んでいる世界?
「みゆきちゃん」
「何メグさん」
「頼まれて欲しいんだけどホーリープロフェットで私たちの仲間達を占えないかな?」
「分かっている。みゆきはメグさんを求めてここに来た。でもこれ以上力を使うとなると少し休憩が必要になってくる。しかもこのデジャブが作った世界では」
みゆきちゃんの力も私の力も弱める程のデジャブの漆黒のオーラ。
私たちの明日が見えてこない。
「みゆきちゃん、お腹すいていない?」
「すいてないけれど、メグさんは禁忌を受け継ぎし吸血鬼だからお腹すかないんじゃないの?」
「そうなんだけれども、みゆきちゃん。お腹すいていないか気になって」
「みゆき缶詰工場を見つけて、そこでお腹いっぱいに食べられるから大丈夫よ」
「それじゃあ、その缶詰工場まで案内してよ」
「分かった」
この世界異臭が漂う。
みゆきちゃん以外に生きている人を捜すのは至難の技かもしれない。
工場にたどり着き、工場内の人たちは白骨化した死骸が何人か見受けられた。
そんな光景を目の当たりにして、私は極度の絶望に陥った。
「何よこれ」
「もうみゆきは慣れっこだよ。この世の中で生きている人間は私たちの仲間以外に知ることは出来ない」
「それも予言で知ったこと?」
「そうだけれども、みゆきの予言はすべてじゃない。
でも私たちが外で何をしているかはデジャブに知られている。
この世界全体がデジャブその物と思った方がよさそうかも。
だから決して外ではリリィさんを出したらダメだよ」
そういえばリリィは私がデジャブにとらわれそうになった時、封印の壷で封印したんだっけ。
「みゆきちゃん。アラタトはどうなったの?」
「そのサンピラーの光の中におきっぱなしになっている。きっとデジャブはリリィを見つけ次第にとらえてアラタトにある世界の人口の魂千回壊すつもりでいる」
「そうなのか」
かわいそうだけどリリィを壷の中に封印したのは正解だった。
この漆黒の空すべてがデジャブその物と言っても過言じゃない。
世界の人々は死んでしまったのか、でも魂まではデジャブでも壊すことは出来ない。
でも特定の人なら魂を壊す事が出来る。
漆黒の空を見上げて私達の事も見張られている。
何か落ち着かない状況だが仕方がないだろう。
工場内に入ると、真っ暗で何も見えないのでみゆきちゃんがホーリープロフェットの源であるビー玉サイズの光を放った。
この中にも白骨化した死体がごろごろと転がっている。
「メグさんも食べる」
「私は食べなくても大丈夫だから」
よくこんなところで食事が出来るとみゆきちゃんは恐ろしい子だと思ってやまない。
でも仕方がないだろう。生きて行くには缶詰でも生きている物を食べなければ、禁忌を受け継いだ吸血鬼以外は食べないと死んでしまう。
「さて食事も済んだことだし、この状況を忌避するためにみゆきはホーリープロフェットでみんなの行方を探すよ」
「お願いだよみゆきちゃん」
みゆきちゃんはホーリープロフェットの水晶玉を握りしめ予言をし始めた。
「メグさん西に行けと言っている」
その時、建物が揺れる音がした。
「何?」
外を見てみると、巨大な骸骨だった。
骸骨は不気味な声で言う。
「リリィを寄越せ」
と。
「おいでなすったわね、みゆきちゃん」
そういってみゆきちゃんは剣に変身する。
私たちの力はデジャブの漆黒のオーラに包まれている。
勝てるかどうかは分からないが、巨大な骸骨にホーリーブレードを切りつける。
ダメージはあったが致命傷まではいっていない。
巨大な骸骨はその工場内に転がっている白骨化した死体を吸収して、ホーリーブレードで切りつけた所を治療している。
勝ち目がない。
逃げるしかない。
私はホーリーブレードを握りしめたまま、空を飛び巨大な骸骨から逃げた。
強大な骸骨は飛ぶことが出来ない。
でも万事窮すだった。
この漆黒のオーラは何とかならないのか、てんで力が入らない。
すると矢が飛んできて、私はホーリーブレードでその矢を弾いた。
巨大な骸骨の仕業だ。
今は形成が悪すぎるだから逃げるしかない。
逃げながら強大な骸骨の攻撃をかわしつつ逃げる私とみゆきちゃん。
何とか逃げ延びた。
この世界はいったいどうなっているんだ。
デジャブだ。すべてデジャブのせいだ。
私が愛するものすべてデジャブが殺してしまった。
私とみゆきちゃん以外に誰でも良い、生きている者はいないか確認するしかない。
みゆきちゃんは西に行けと言っていた。
漆黒のオーラに包まれた空で西を示す太陽を見ることが出来ない。
「みゆきちゃん。西はどちらか分かる?」
剣から変化したみゆきちゃん本人に聞いてみる。
「あっち。この山脈を越えた所に何か私たちに力になれる者がいると示している。
それとメグさんの指輪の世界だけれどもみゆきはその中には入れない」
そうだった。私には指輪の世界があった。
そこで流霧さんの力を借りれば何とかなったかもしれない。
でもみゆきちゃんを一人にする訳にはいかない。
「どっちにしろ私たちの行動はデジャブに監視されている。この空の蔓延る漆黒のオーラがデジャブその者とみゆきの予言では言っている」
私はみゆきちゃんの話を聞いて愕然とした。
私たちの行動は監視されている。
西に向かっているとき、いきなり巨大なドクロが飛んできた。
「ぐげげげげげ、リリィを寄越せ」
みゆきちゃんに剣になってもらおうとしたが私はもう戦意が消失していた。
「メグさん諦めちゃダメだ・・・けれども・・・」
みゆきちゃんも戦意を消失している。
このままデジャブに心を支配され私の魂事、闇に染めるのであろうか?
「みゆきちゃん。指輪の世界に行くしかない。そこにはもう一人のみゆきちゃんと戦う事になるけれども」
「良いよここ以外のどこならば」
私は指輪をかざして指輪の世界に入り込んだ。
そこも同じようにデジャブが支配する空が漆黒のオーラをまとった世界だった。
「そんな・・・ここもデジャブに?」
ここで気がついたが指輪の世界と私たちが住む世界はリンクしていると聞いたことが会った。
でもデジャブに監視されている気配はない。
流霧さんが巨大な骸骨と戦っている。
苦戦しているようだ。
「みゆきちゃん。援護するよ」
「はい」
流霧さんが私たちに気がつくと流霧さんは私たちの手を取った。
するとデジャブの化身とも思われる骸骨はどこかに消え去った。
なるほどこの世界でのデジャブの化身のような骸骨は流霧さんしか見えないようになっているようだ。
「なぜあなた達が?」
「この世界でもデジャブに支配されてしまっているんですね」
「まあ、それよりも助かったわお礼を言うわ。立ち話も何だからあなたが私の手を引いて」
そうすれば敵に遭遇しても私たちに気がつくことはない。
流霧さんに手を引かれ流霧さんの隠れ家に私たちは案内された。
「本当に助かったよ」
「そうですか?みゆきちゃんが一緒だけれども大丈夫ですよね」
「この世界の者は皆、悪魔と化してしまったわ。
メグいったい表の世界で何が起こっていると言うのだ?」
私は洗いざらいすべての顛末を流霧さんに話した。
「そのデジャブにこの聖なる力をも打ちひしぐ漆黒のオーラが世界を包み込んでいるのね。
表の世界がそうならこの指輪の裏の世界も同じ事になっている。
あえて言うなら、こちらの世界のデジャブに打ちひしがれた人間も魔物化している。でも幸運な事にあなた達には気づく事はないわ。
この世界には私しか力を持つ者はいないからね。
私を狙ってその魂を壊すつもりでいるのねそのデジャブって奴は」
「何かデジャブに打ち勝つ打開策はないですか」
「そんな力を持つ者の打開策なんてないわ」
流霧さんの話を聞いて私とみゆきちゃんは愕然とした。
流霧さんは立ち上がり「まあ、でも考える価値はありそうね。この神が授けて下さった知恵を絞れば」
「本当ですか?」
「ちょっと待っていて」
私とみゆきちゃんは目を合わせて流霧さんを待った。
すぐに戻ってきて、二つのピンクの羽衣を渡された。
流霧さんの分もあり三つある。
「この羽衣を被ればデジャブの邪悪なオーラに気づかれる事はないわ」
「本当に?」
「でも邪悪なオーラで力が抜けることは回避出来ないけれどもね」
「じゃあ、みゆきちゃん。この羽衣を羽織って私たちの仲間であるみんなを探しに行こう」
何だろう、打開策は見つかっていないが、一筋のマッチのような光が見えてきた気がして嬉しかった。
「神は私たちを直接は救いの手はのべないわ。でもその材料となる物知恵はあるわ」
「それじゃあ、流霧さんも来てよ。表の世界に」
「いや私はこの世界の管理人みたいな者、その使命を全うするしかないわ」
「分かったありがとう流霧さん」
「健闘を祈るよ」
そういって指輪の世界から私たちが住んでいたデジャブに支配された表の世界に戻る。
羽衣を纏いながら私とみゆきちゃんは西を目指していた所に行く。
本当だ。この羽衣を纏っているとデジャブに気づくことは出来ないみたいだ。
「メグさん、あそこに光が」
みゆきちゃんの言うとおりピカッピカッと言う光が見えてきた。
「行ってみよう」
光が見えたのは山の頂上だ。
近づいてみると、そこは洞窟から、私たちにサインを送っているような気がした。
洞窟の中は真っ暗だった。
「みゆきちゃん」
と声をかけみゆきちゃんはホーリープロフェットの力を駆使する水晶玉を出した。
「誰かいるの?」
私が声をかけると、「何だお前たちは?」
剣を私に向ける。
水晶玉をみゆきちゃんが照らすと、エイちゃんとその子供たちだった。
「エイちゃん」
私は嬉しくて泣いてしまった。
「メグなのか?」
「そうだよメグだよ」
私とエイちゃんは抱き合った。
すると子供たちは、「誰パパ」
「パパ?」
「ああ、このデジャブの地で生き残った子供達だよ。俺の事をパパと慕っている」
「お前達、この人は俺の恋人だ」
「パパの恋人?」
「すっごく頼りになる恋人なんだ」
すると女の子供が「パパ、パパは私と結婚するんだよね」
「そんな小さな約束もしていたんだ」
エイちゃんを不審な目で見つめた。
「いや、その、これは、とにかくメグが生きていて良かった」
エイちゃんは私にこっそりとして、「美里ちゃんの前では恋人と言うことはタブーって事で」
「分かったわよ」
どうせい子供の遊びに近い小さな約束だろうと私は解釈した。
「とにかくメグ、よくここが分かったな」
「何か光みたいな物を見つめて」
「ああこれか、これは翡翠と言ってこれを時々天にかざすと神の導きがあるようなんだよな。
まさか本当にその通りだとは気がつかなかったけれどもな」




