危険とわかっていても仲間を思うその気持ち。
最近私がガラスが弾け割れるような奇声が聞こえて、心壊れそうな衝撃を受けたのは里音が原因だと豊川先生は言った。
だから里音に近づいてはいけない。
私達四人に特殊能力があるからと言って、その力で何とかしようなんて決して考えてはいけないと念を押されて豊川先生に言われた。
豊川先生は私達四人が集った部屋を出て、私達四人は里音の事が心配でたまらなくなった。
「里音に近づくなってどういう事なんだろう?」「それは盟、里音に何か危険が迫っているからに決まっているからじゃん」
盟と梓の二人は里音の事が心配な面もちで言う。
「メグさん。みゆきには聞こえなかったけれども、いったいどんな声を聞いたの?」
みゆきちゃんが私の目を真摯に見つめて言う。
その目は里音を何とかしたいと思いが混ざったまなざしだった。
私は考えさせられる。もしみゆきちゃんがあの衝撃的な幻聴を聞いて、その体が粉々に砕けるのを想像してしまい、思わずみゆきちゃんを抱きしめて、
「今回は私達の出る幕じゃないと思う。
豊川先生言っていたじゃない。
今回の件は力ではどうにも出来ないって」
「でも里音が心配だよ」「里音は僕達の仲間だもんな」
そうだ。アスターの二人の言う通り、里音は私達の仲間だ。
でも今回の事は豊川先生の言う通り関わってはいけない気がする。
もしあの奇声をアスターの二人とみゆきちゃんが聞いて、精神が破壊されてしまうんじゃないかと私は恐れた。
私はあくまでここのスタッフだ。
それにみゆきちゃんの保護者でもあり、アスターの二人を舎弟として率いている。
そんな三人に里音と関わり、何か合ったら私の責任だし、豊川先生にどう顔向けして良いのか分からない。
だから私も豊川先生と同じように三人に念を押して言う。
「確かに里音の事は心配な気持ちは分かるけれども、今回は私達が関わるのはよそう」
「どうしてだよ」「メグさん、里音の事が心配じゃないのかよ」
聞き分けのないアスターの二人に、
「黙りなさい。あなた達はあくまで私の舎弟、その舎弟が親分の私の言うことを聞かずに勝手な事をしたら、どうなるか分かっているわよね」
と威圧的な視線を向けたが、アスターの二人は一瞬びびりはしたものの、反抗的にも私にその威圧的な視線を返すように、言う。
「里音は僕たちの仲間だ」「そうだそうだ。里音は僕たちに取ってとても大切な仲間だ。その仲間が大変な目に遭っているんだぞ」
仲間の為なら、私に厭われても恐れないその気持ち、二人の親分としてそれはとても嬉しい事だ。
みゆきちゃんの目を見ると、里音を思う気持ちはアスターの二人と同じような感じだ。
みゆきちゃんもアスターの二人も、人間として大切な物を持っている。
その思いを尊重してあげたい。
だから私は「分かったよ。三人とも。私も里音が心配だし、今回の件は私たち四人も積極的に動こうと思う」
「「だよね」」
嬉しそうにはしゃいでいるアスターの二人。
「でも、私の言う事を聞かない場合、言って置くけれども、三人とも、本当に辛い目に遭って貰うからね」
と三人に威圧的な目をそれぞれ送り、三人はそれぞれ息を飲んでいた。
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いつものように朝が始まり、朝のランニングを四人で終えて、帰って、朝食を取って、みゆきちゃんは学校に出かけて、アスターの二人は徳川さんと同じ部屋で、いつものように勉強をさせる。
私もそうだが、三人とも、やっぱり里音の事が心配だと言う気持ちは態度や仕草を見て安易に分かる。
豊川先生の話を聞いてから、心壊れるような、衝撃的な声は聞こえなくなっていた。
どうして私にだけ聞こえたのだろう。
それに豊川先生は私達に関わらないように念を押した。
その事も視野に入れて、里音の事を何とかしてあげたいと思う。
三人も同じ気持ちだ。
いったい里音に何が起こっているのか?
とにかく三人は里音の事に対して勝手な事をしないように遠くから見守るように目を光らせて置かないといけない。
豊川先生が念を押して私達に訴えた時のあの態度、表情を想像して、無性に怖くなったりもする。
正直あんな豊川先生を見るのは初めてだ。
里音に相当やばい事が関わっているのは火を見るより明快だ。
里音は私が吸血鬼になる前に出会った時は私のお姉さんのような存在だった。
本当に面倒見が良くて、エイちゃんと喧嘩した時、独りぼっちになってしまったと思ったら、笑顔の里音が側にいた。
そして喧嘩の事情を聞いて、その仲介に入り、仲直りのさせてくれた事も合った。
後、厳しく叱ってくれた事もあった。
思えば、里音に叱られた事は生まれて初めてで本当に私が悪かったのだと自覚して、一つ大人にしてくれた。
あの時、里音が本気で私を叱り、私の頬を強めに叩いた時の感触は今だに忘れない。
最初はそんな事をされて里音を激しく恨んだりしたけれども、それが本当の優しさだった事を里音に気づかされた。
里音は私の素敵な自慢できる友達と言っても過言じゃない。
里音がいなければ、今の私は存在していないと言っても、過言じゃないと思う。
思えば、里音には貰ってばかりのような気がした。
そんな里音に何かお返しが出来たかと言うと、していない。
そういえば里音の事は何も聞いた事がない。
いつも人前では気丈に振る舞い、自分の弱みを見せたりはいっさいしない。
そんな里音にいったい何が起こっているの?
私にはまだ里音にお返ししていないし、里音は私にとってこれからも大事な友達であって欲しいと私は切に思っている。
それは本当に嘘偽りのない私の気持ちだと断言できる。
里音の事で物思いに耽り、気がつけば徳川さんはもちろんの事、アスターの二人もちゃんと勉強をしている中、時計を見ると、午前十一時半を示している。
そろそろお昼か。
区切りの良い所で、徳川さんとアスターの二人の勉強を見ようと思った瞬間、塾に一本の電話が鳴り響いた。
きっと豊川先生の相談の電話だろうと別に気にとめる必要はないと思っていたが、その電話は誰も取らずに、ただ鳴り響き続けているだけだった。
さすがに気になり、たまに豊川先生は不在になるときがあるのでたまに私が出て、泣きながら豊川先生に相談を持ち込んできた生徒の声を聞いて動揺してその時は、『豊川先生は今いません』と言ってそれでも泣き続けるその生徒に私はとりあえず、いつも豊川先生に言われている『落ち着いて複式呼吸をしてね』となだめたのは記憶に新しい。
とにかく鳴り続ける電話に出ようと思って、勉強室から出てパソコン室に行くと豊川先生は不在だった。
だから私はここのスタッフとして電話に出た。
「はいもしもし」
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私は地平線を上を走り、みゆきちゃんが通っている小学校に向かっている。
電話はみゆきちゃんの学校のクラスの担任からであり、みゆきちゃんがトイレで気を失っているのを発見されたのだ。
原因を聞いてみると、担任の先生も分からないと言う始末。
心配は募る。いったいみゆきちゃんに何が合ったのか?
私がみゆきちゃんと共にいない事を良い事にまたメビウスが襲ってきたのか?それともみゆきちゃんは激しいいじめを受けて、気を失うほどの暴力でも受けたのか?
本当にみゆきちゃんに何が合ったのか?心配で心配でたまらなく、とにかく一秒でも早くみゆきちゃんが通っている学校へと向かうしかない。
そしてみゆきちゃんが通っている学校に到着して、職員室に行き、担任の先生の篠原先生という男性教師にみゆきちゃんがいる保健室まで案内された。
その篠原先生の話を聞くと、突然二時間目が終わる二十分休みの間にいなくなり、心配になった篠原先生は色々と探したみたいだ。
みゆきちゃんは真面目な生徒で無断で授業をさぼる生徒ではないと篠原先生はひどく心配して、探して、そしてたまたま三時間目が終わった五分休みの時に、女子トイレに入ったまま出てこないと知らせを聞いて、ドアをこじ開けるとみゆきちゃんはトイレ内で倒れていた。
それになぜか近くにビー玉が落ちていたので、それを篠原先生から受け取った。
多分このビー玉を見て、篠原先生はただのビー玉だと思っただろうが、これはみゆきちゃんの能力を発揮する大切なビー玉なので、ちゃんとみゆきちゃんの元に返しておかなければならない。
きっとみゆきちゃんはホーリープロフェットで里音の事を占って、何か合ったのか?
その答えを知っているのはみゆきちゃん本人だ。
保健室に案内されて、みゆきちゃんは保健室で入院患者のようにベットから体を起こして給食をもりもり食べている姿を見て、とりあえず安心した。
「みゆきちゃん」
と声をかけると、食べるのをいったん止めて、
「メグさん」
と何か申し訳なさそうに目をうつろわせ、私に何か後ろめたい事があるのだと悟った。
それは私が予想するには里音の事が気になって占って、何があったか分からないが、それで気絶した。
そのような憶測を巡らせると、豊川先生が私達四人に念を押して『里音の事に首を突っ込むな』と言うような事を言っていた意味が改めて理解が出来た。
まあこれはあくまで憶測だが、その真相はみゆきちゃん本人しか分からない。
その真相を聞く前に私はみゆきちゃんに「事情はその給食を食べてからゆっくり聞くから、早く食べちゃいなさい」
私にそう言われてみゆきちゃんは、再びスプーンを手に取り、先ほどまでおいしそうに食べていたカレーライスだったが、おいしそうには食べているような感じではなかった。
多分里音の事で勝手なことをして私に怒られる事を恐れているんじゃないかと感じた。
まあ、怒るかもしれないけれども、食べ物はおいしく食べて欲しいと思って、みゆきちゃんに笑顔で「おいしい」と言うと、みゆきちゃんも私の笑顔を見て、安心して「うん」と返事をして再び給食のカレーライスをおいしそうに食べてくれた。
「川上さんですよね」
と篠原先生。
「はい」
「とにかくみゆきちゃんが大事に至らなくて良かったです。本当にこのまま目覚めなかったらどうしようと、心配しましたよ」
「ご迷惑をかけて申し訳ありません」
「あなたが謝る事じゃないですよ。担任として私がちゃんとしてないから」
と落ち込んでいるが、そういうことにしておく。
本当はこの篠原先生が悪い訳じゃないけれども、真相を語ったって、信じてはくれないだろうし、仮に信じて貰っても面倒な事になるからな。
「川上さんでしたっけ、あなたもお昼まだ何じゃないですか?」
私は篠原先生に学校の給食をご馳走になる事になった。
篠原先生は保健室を出て、わざわざ給食を持ってきてくれた。
もちろんみゆきちゃんと同じカレーライスにサラダと牛乳にフルーツの半分に輪切りされたキウイだ。
「いただきます」
と言ったと同時に篠原先生にはみゆきちゃんと二人で話がしたいために、席をはずして貰った。
私が食べる頃にはみゆきちゃんは食べ終わっていて、ついでにみゆきちゃんの食器を篠原先生は片づけてくれた。
その姿を見て、
「みゆきちゃんの担任の篠原先生って良い先生ね」
「うん。篠原先生は良い先生だよ。良くみゆきの事を気にかけてくれる」
「そう」
私はその篠原先生にもてなされた給食のカレーライスを口にして、それはもう絶品だった。
みゆきちゃんがおいしそうに食べる訳が分かる。
こんな給食が食べられるなら、私は毎日みゆきちゃんが通っている学校に通いたいともみゆきちゃんがちょっとうらやましく思ったりする。
私が食べている間、みゆきちゃんは私に後ろめたい事があるかのようにずっと黙っていた。
私は食べながら思っていた。
勝手な事をしてみゆきちゃんを叱ろうと思ったが、里音の事を思うとみゆきちゃんの気持ちも分かる気がする。
でもその水晶玉でどんな事が起こったか分からないが、やはり迂闊に里音の事を詮索してはいけなかったのだ。
「ごちそうさま」
と食べ終わりみゆきちゃんの目を見るとみゆきちゃんは「ひっ」と身をすくめた。
「みゆきちゃん。里音の事を占ったんだね」
「はい。それで・・・」
みゆきちゃんが続けようとした所、そのつもりはなかったが、みゆきちゃんの方に駆け寄り、その頬をちょっと強めに叩いていた。




