第2話 養成院
ミハイルがシェリア姫から騎士団への採用を告げられてから一夜が明けた。
ミハイルはいつものように早朝に眼を覚まし、母であるアリエラを文字通り叩き起こす。
母親はいつも際どいネグリジェを着て寝ているため、起こすたびにそれを視界に入れる羽目になる。
ミハイルが年齢考えろよ、とか思っているのは秘密だ。
そこからミハイルの朝は始まるのであった。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
まぁ、俺は今日から騎士となるわけだが・・・。
騎士とは言うが正騎士ではなく、見習い騎士である。
この国の制度により、15歳を迎えた者の中から、将来有望な者を選出し、翌年よりの3年間の養成期間を経て、それを終えると正騎士になることができる。
選出とはいうものの、人数は毎年200名ほど。
案外多かったりするのだ。
とにかく俺が今日から出向するのは、騎士団本部ではなく、騎士養成機関|《オルフェウス院》。
オルフェウスは初の聖騎士の名で、この国を危機から救った英雄なのだとか。
ちなみに、通例でこの養成院には名を隠した王族も入ることになる。
先々代国王の意向らしいが、詳しいことは知らん。
予め手渡された制服に身を包み、背に帯剣した俺は早速院へと向かう。
制服は渡されたが、得物は自由とのことだったため、俺は家に保管してあった刃渡り1.5mを越える細身の長剣を母親の許可を取って持ち出した。
なんでも、今は亡き父親が冒険者時代に使っていたらしい。
まさか父親が冒険者やっていたとは初耳だった。
普通は両手を用いて振るらしいが、あの日以来、自分の身を守りたいと思うようになり、毎日鍛錬を欠かさなかった結果、この程度の剣なら、余裕を持って片手で振り回すことが出来るようになった。
「うわ・・・。人多いなァ・・・・。」
ちなみに、人ごみは嫌いではないが好きでもない。
「エル!」
後ろから可愛らしい声をかけられた。
この声は・・・。
「シェリアか。」
「ふふ。おはようございます。」
「あぁ、おはよう。」
「あれ?眼・・・?」
「あぁ。流石にあのままだとマズい気がしたのでな。魔道具で誤魔化してきた。」
「ええ。それがいいですね。あ、それとここでは“リーシェ”とお呼びください。」
「リーシェな。分かった。ついでに俺の呼び方も・・・」
「直しません。」
ニコニコしながら返すシェリア改めリーシェ。
可愛いんだ。
非常に愛らしいのだが、名前は直してもらえないのだな・・・。
「時間だ。全員整列!」
初めに割り当てられた番号順に十秒で整列する。
それ以上かけると怒鳴られるため、皆必死に整列する。
俺の横にはリーシェが立っていた。
・・・・王様ェ・・・。
絶対情報操作したろ・・・。
あの人シェリアには甘甘だからな・・・。
「これより30名ずつのクラスに振り分ける!名を呼ばれたものは返事をして前へ!」
さすが騎士養成院というべきかきびきびしている。
ここでこれから3年を過ごすのか・・。
ま、養成院といっても卒業後の進路は自由だ。
国王の目的はあくまで戦力の育成。
冒険者をやろうが、そのまま騎士になろうが別段かまわないといった様子だ。
「ミハイル!ミハイル・ヴァーミリオン!」
「はッ!はい!!」
俺は慌てて、前へ歩み出る。
「お前は2組だ。」
「はい。」
“2組”と書いたプレートが掲げてある場所の列に並ぶ。
良く見ると、シェリ・・・じゃなかったリーシェもいた。
どうやら同じクラスのようだ。
待つこと少々。
振り分けは完了して、それぞれの教室へ向かった。




