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転生人語 ー紫の語りー  作者: 岩田 ヒロ
明石の君(あかしのきみ)

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雨の日の再会

 雨の日は、どうにも人の行動を勝手に変えてしまう。降り出した途端、まっすぐ帰るつもりだったのにふらりと寄り道をしたり、家でじっと雨を眺めていると会う予定もない相手の顔が浮かんだりする。「気づいたら着いていた」なんて言い訳も雨の仕業だ。雨が少しばかり背中を押しただけなのだ。


 ***


 僕は昔から雨が降るとワクワクする。それは子供の頃、台風が来ると学校が休みになることをこっそり楽しみにしていたことから発しているのだと思う。今日も休日だというのに朝から雨だ。でもなんとなく胸騒ぎがしていた。


 そんなとき、インターフォンが鳴った。びっくりしてドアを開けると彼女が立っていた。

「え、どうしたの?」

「朝から雨が降ってたから、来ちゃった」

「え? ああ、こないだも雨の日だったっけ?」

「うん、覚えてる?」

「うん。入って、入って」


 彼女は前回と同じようにジーンズの裾が濡れていた。

 彼女は靴を脱いで、部屋に上がった。

「ジーンズ替える?」と聞くと、

「ううん、そんなにずぶ濡れじゃないから、いいよ」と彼女は言った。


 そして僕に一歩近づいて、

「ねえ」

「うん」

「朝から雨だったから、ここに来ようって思ったんだ。連絡もしないでね」

「連絡くれれば、掃除していたのに」

「びっくりさせたかったの。びっくりした?」

「いや、それほど。でも何か胸騒ぎはしていた」


 その言葉を聞いた瞬間、彼女の表情が明るくなった気がした。


 僕がソファに腰を下ろすと、彼女も僕の隣に座った。前よりも距離が近い、気がする。肩が触れるか触れないかの距離。

「この部屋、落ち着く」

「そう?」そのとき、彼女が僕の手の甲に触れた。僕はその手を握った。

「雨の日だけ来るの?」

「雨じゃなくてもいい?」

「もちろん」


 そう言うと、彼女は僕の肩に頭を預けた。彼女の髪の匂いが僕を金縛りにする。窓の外では、雨がしとしと降っている。 やっぱり、雨の日はワクワクが止まらない。


 ***


 そもそも、雨の日に人はなぜさみしさを覚えるのだろう。湿り気が人を恋しくさせるのか、理由は分からない。ただ、雨は人を動かす力がある。


 光の君もまた、雨に導かれた人であった。旅の途中、嵐に遭い、雨を避けるように辿り着いた宿で一人の女性と出会うのだった。縁もゆかりもない二人が偶然に出会ったように見えて、実は雨が導いた結果であった。


 雨はいろいろなドラマを生むことを、わたしは昔から知っている。


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