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転生人語  作者: 岩田 ヒロ


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転生人語#059 ー友人を推す僕― 

 ともだちの恋愛を見ていると、つい口を出したくなることがある。本人たちは真剣なのかもしれないが、周りの者から見れば、じれったく、まどろっこしくて、手を貸したくなるのだ。


 ときには自分のことより、ともだちの恋愛を支えたくなる人がいる。そういう「名もなき脇役」が登場する。


 昔も他人の恋愛を取り持っては、あれこれ騒ぎを起こしていた。誰かの恋愛を応援したくなる気持ちは、今も昔も変わらないように思える。


 ***


 タクミが「好きな子ができた」と言い出したのは、先週の金曜の夜だった。焼き鳥屋で三本目のねぎまをかじっていたときだった。いきなりだったので、僕は思わず串を落としそうになった。


「え?好きな子?」

「なんだよ、その目。ダメか、好きな子できて」珍しく怒っている。

「だって、昔から女関係はいつも受け身だったじゃん、お前。だから、びっくりだよ」ほんとにびっくりだった。


 タクミの顔は真剣だった。あれ、こいつはマジだと思った。

「で、誰なの?」軽く聞いたつもりだったのに、返ってきた名前を聞いた瞬間、ビールを吹き出しそうになった。


 僕の部署の、僕も狙っている子だったからだ。焼き鳥屋の店の中が静かになった。テレビドラマのワンシーンみたいに。悟られないように、それこそ俳優のような笑顔を作った。


「うちの部署の子だよね。いいじゃない。でも、ライバル多そうだな」

「だよな。でも、なんか気になっちゃって」

「なんかきっかけがあったの?」

「こないださ、会社のタスクフォースとかいった組織横断のチームで一緒になったんだよね」

「あー、なんかあったな」

「そこで初めて会話したんだ」とタクミは照れくさそうに笑った。


 よし、二人のキューピッドになろうと僕は決めた。タクミの顔が輝いていたから。僕の気持ちは押し入れの奥にしまうことにした。


 ***


 翌週、僕は昼休みに近くの席の彼女に話しかけた。

「タクミとタスクフォース一緒になったんだって?」

「タクミ?あー、タクミさんですね。あ、先輩、もしかしてタクミさんと同期かなんかですか?」

「そうそう。先週飲み行ったら、一緒になったって言ってたよ」ラッキーなことに周りに人はいない。

「タクミってさ、大学からのともだちでさ、なかなか面白いやつなんだ」なんとかタクミのことをいろいろ話してみた。

「へー、そうなんですか。先輩と長い腐れ縁みたいですね」彼女の笑顔が可愛かった。


 ダメ、ダメ。タクミを推すと決めたんだった。


 ***


 数日後、タクミからメッセージが来た。

「俺の昔話してくれたみたいだね。サンキュー。彼女からいろいろ聞かれたよ」

「よかったじゃん」

「今度焼き鳥奢る」

「安っ、笑」


 スマホを見つめながら、ため息をついた。嬉しいようで悔しい。まぁ、いいか。タクミが嬉しそうだ。


 次の日の夜、タクミから電話。

「彼女と飲み行くことになった」

「誘ったの?」

「うん、お前入れて三人で」

「はぁー、二人で行けばいいじゃん」

「しょうがないでしょ、話の流れで三人って言っちゃったんだから。お願い、行こうよ」


 こんなところがタクミの良さなんだろうなと思った。僕はピエロになればいいのだと思った。


 たまに脇役でもやっていれば、いつか自分にも運が回ってくると信じて。正直、胸の奥は痛い。でも悪い痛みじゃない。悪くない。


 どんなピエロになるか考えて布団に潜り込んだ。


 ***


 そもそも名脇役がいるから主役が輝く。それは映画でも、恋愛でも。しかも、自らの想いを押し隠して、ともだちの恋愛の後押しをするなんて美しすぎる。


 昔、わたしが書いた光の君なんかは「取り持つ」というよりは「巻き込む」ことばかりして騒ぎを起こしたものだ。


 おっと、この話はまた別の機会で紹介しよう。


読んで頂き、ありがとうございます。

気に入って頂けたら、ブックマークや評価をもらえると嬉しいです。


#100まで続けます。

ようやく転生人のプロファイルを確定しました。

超有名人です!

#100までには明らかになるようにします。

みなさん、誰だか予想しながら、お付き合いください!

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