転生人語#057 ー予感―
この時代のカフェという場所をわたしは好きになれない。自分をよく見せたい人が集まっているような気がしてならない。本を読んでいれば賢く見られると思っているのか。静かに一人コーヒーを飲んでいればおしゃれと見られると信じているのか。
けれど、そんなカッコつけなんかよりも、ふとドキドキするような瞬間に出会うことを本当は期待しているのではないかと思ってしまう。
そんなトキメキを感じた「わたし」がいる。
***
休日の朝、目覚ましをかけずに眠り、朝、自然に目が覚めると、うれしくなる。
洗濯を終え、顔を洗うと、ふと近くのスタバに行きたくなった。今日は特別な予定もないので、コーヒーと甘いパンでも食べようと思った。読みかけの本も持っていくことにした。
スタバの扉を開けるとコーヒーの香りと心地よい音楽が迎えてくれた。窓際の席が空いていたので、そこに腰を下ろす。外は風に揺れる街路樹の若葉が春の光にあたりキラキラしている。
本をテーブルに置いて、オーダーの列に並ぶ。そのとき、列の前のほうの男性に目が止まった。
白いシャツにジーンズ、横顔が爽やかだ。彼はレジで注文していて、店員さんに笑顔で「ありがとう」と言っている。
ああ、好きなタイプだ。さっき見た街路樹の若葉のようにわたしのこころも揺れた。
席に戻るとなんと彼はわたしの二つ隣の席に座って、コーヒーを飲みながら本を読んでいる。一人で。
わたしは本を読んでいるふりをしながら、ときどき窓の外を眺めるふりをしながら、彼を見る。何の本を読んでいるんだろう。
しばらくするとわたしの後ろを通った人のトレーの上のナプキンが床に落ちた。ちょうどわたしと彼の間にひらひらと舞い落ちたのだ。
拾おうと身をかがめた瞬間、同じタイミングで、彼も席を立ちナプキンを拾おうとしていた。
指先が触れそうで触れない距離。思わず顔を上げると彼と目があった。
「あ、僕が拾いますよ」彼はそう言って、ニコッと笑った。
「ありがとうございます」わたしは手を引っ込めた。彼の笑顔がかわいい。わたしのドキドキはマックスだ。
彼はナプキンを拾ってあげて、席に戻った。その後は何も会話はない。でも、なんとなく空気が変わった気がした。彼もときどきこちらを見てる気がした。
あれ、わたし、どんな服着てたっけ。あ、洗濯終えてそのまま来たから、黒のロンTとジーンズだ。あーもっとおしゃれな服着てくればよかったと後悔。
少しして、彼が席を立ち、出口に向かう。その途中彼が振り返った。
目が合う。彼は少しだけ、会釈をした。
わたしも驚きながらも、同じようにこくりと頭を下げた。
それだけ、名前をも知らないし、会話もしてない。でもトキメキが残った。
わたしも席を立ち、家に向かう。そして、また、来週の休日、おなじじかんにスタバに行こうと思った。彼に会える保証はないけど。
でも次会えたら、こう言おう。
「あ、先週もいましたよね」
***
人は偶然出会った人にときめく事がある。そもそも、恋愛なんて理屈で始まらない。
会える保証もないのに足取りが軽くなる「わたし」を見ていると、やっぱりカフェなんて行くなんて、そんな下心があるのではないかと疑ってしまう。
千年前の社交場、お茶会の方がよっぽど潔かったと思う。みんなそれを目的にか着飾って集まっていたのだから。
今も昔も変わらない。
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#100まで続けます。
ようやく転生人のプロファイルを確定しました。
超有名人です!
#100までには明らかになるようにします。
みなさん、誰だか予想しながら、お付き合いください!




