転生人語 #031 ―無駄の楽しさ―
若い頃はお金はないけど時間はある。だから無駄なことをして時間をつぶすのだけど、その時はそれを“無駄”だなんて思わない。あとになって初めて気づくものらしい。
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「なぁ、覚えてる? 大学の時、夜中にみんなで車に乗って肝試しに行ったこと」
「覚えてるよ。曲がると子供が飛び出すって有名な道、あったよな」
「そうそう。角を曲がるとライトの中にいきなり子供たちが現れるやつ」
「俺、すぐ分かったぜ。あれがポスターだって」
「嘘つけ。ビビって大声出してただろ」
「出してないって。あれ、確か幼稚園のポスターだったよな」
「あとさ、昔病院だった古いビル」
「行った、行った。夜中の2時くらいに車で行って、地下室まで降りたよな」
「俺、本当に怖かった。お化けはタバコの煙嫌うって言われてたから、ずっと吸ってた」
「手術台みたいなベッドあったよな」
「あそこは本当にやばい。夜中に行っちゃダメな場所だって。おかげで俺、遊園地のお化け屋敷入れなくなったし」
「でも一番怖かったのは、あの山の中のトンネル」
「そうそう。真ん中で車止めて、外に出て手を叩くと誰かが叩き返すって噂のとこ」
「俺が叩いたら、後ろから聞こえたよな。覚えてる?」
「覚えてる。トンネルの中でお前の音がこだまする中、明らかに違う音が返ってきたやつ」
「怖くて速攻で車に戻って、トンネルから逃げたよな」
「そう、俺を置いてな。なぁ、あれ本当に信じてる?」
「えっ、聞こえたろ。お前も」
「あれさ、俺が叩いたんだよ」
「はっ? 嘘だろ?」
「本当!」
「なんか、無駄なことしてたよな」
「ああ。こうして思い出して酒飲んでる今も無駄」
「昔は楽しかったし、今も楽しい」
「そうだな。無駄って楽しいな」
「一年前の飲み会でも同じ話してたよな。肝試しの話」
「そうだっけ。酔ってたから覚えてないな」
「無駄なことは何度繰り返しても楽しいな」
「そうだな」
***
そもそも「無駄な時間を過ごすこと」は人生を面白くする。自動化やAIの登場で、人間は仕事をしなくてすむ時間が増えてきた。その余った時間を、もっと無駄なことや遊びに使えばいいのにと思う。
今の人は、それを後ろめたく感じるのだろうか。
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