転生人語 #015 ― ゲン担ぎ(小さな偶然が背中を押す)―
昔から、人は良い結果になることを願って、縁起を気にしたり、縁起の良い行動を繰り返したりする。
彼もそんなことに気づいたのかもしれない。
***
僕は大事な商談の時、必ずこのブルーのネクタイをする。
それは、たまたま昔にこのネクタイを締めて行った商談がうまくいったことから始まった。
最初は、このネクタイが良いとは思っていなかった。
いろいろな組み合わせを分析した。
着ていたスーツが良かったのか。
革靴が良かったのか。
家を出るときに左足から靴を履いたのが良かったのか。
その日が大安だったのか。
昼に食べたカツ丼が良かったのか。
赤い下着が良かったのか(僕はサル年だ)。
いろいろ試した結果、
「このネクタイが幸運をもたらす」
という結論にたどり着いた。
本当は、事前の調査やプレゼンの準備をしっかりしたとか、
営業さんが根回ししてくれたとか、
先方のキーマンを押さえていたとか、
そういう“現実的な理由”が成功の要因だったのだと思う。
でも、そうではない何か——
縁、偶然、会議の“間”みたいなものが商談をうまく進めてくれたのかもしれない。
そして、その時このネクタイが僕の背中を押し、勇気や自信を与えてくれた気がする。
このネクタイはもう十年使っている。
何度もクリーニングに出し、大事に扱ってきた。
最近は本当に大事な商談にしか締めていかない。
「新しいのプレゼントするわ」
彼女はそう言ってくれるが、僕は丁寧に断っている。
千切れるまで使っていこうと思う。
だって、本当にうまくいくのだから。
***
そもそも、「ゲンを担ぐ」とか「ゲンがいい」なんて昔からよく言うが、
そのことで平常心を保てて、実力を発揮できるのだろう。
わしもこの水晶の腕輪は手放せない。
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