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夜の眷属の仲間入り~これからの生を共に~

真祖からの提案で新たな真祖になったフィミア。

吸血鬼になっても不満は現れるもので──




 血の契約を行う事になった。

 血を吸う吸血鬼ではなく、もう一人の真祖として私を吸血鬼にするらしい。

 それを行うのは御真祖様。


 夜、月夜の下で、私の周囲を血が揺らめいて流れています。


「フィミア・ローレンス。血の口づけを」


 私は周囲の血の一部に口づけをしました。

 血が口の中に入ってきて、私はそれを飲み込みました。


 ごくりと飲み込み、体が熱くなりました。

 鉄の味が口に広がったと思ったら蕩けるような甘い味に変わりました。


 体の熱はすぐに熱が冷めました。


 肌がいつもより白く映って水鏡に見えました。

 碧の目は真紅に染まっていました。


「フィミア・ローレンス。これで其方は吸血鬼であり、余と同じ真祖だ」

「いいえ、真祖様。真祖様は貴方様一人です」

「ふ、謙遜する娘だ」

「フィミア……」

「吸血鬼になったこと、嬉しくないですか?」

「いいや、嬉しいとも! でも、これで君は……」

 私はふふっと笑ってルカード様の唇を指で触ります。

「一応真祖ですので、日の光も水なども耐性ありますわ」

「そ、そうか」

「お父様達を見送る時、私一人だけ若い姿なのが寂しいですが……それもまた私の生、受け入れましょう」

「フィミア……君は強い女性だ」

「いいえ、悪女ですわ」

「そんな事は無い、君は誰よりも誇り高く美しい!」

「まぁ」

 ルカード様にそう言われると悪い気はしません。



 人間から吸血鬼になったということで、満足した者達も居れば逆に不満を持つものが現れました。

 フォード大公に領地を取り上げられ、王都でひっそり暮らすようになった者達です。


 吸血鬼の特権欲しさに結婚した悪女。

 と夜会で私の名前が挙がりましたが──

 ルカード様が一括し、これ以上私を悪女にするならば、爵位を没収家を取り潰すと脅した結果、表だっての行動はなくなりました。


 が、裏では悪女の評判はあり、ルカード様はそれを消すのに翻弄しておりました。

「ルカード様、言わせておけばいいのです」

「そんなことはない! 君は悪女じゃない、心の美しい女性だ!」

「まぁ、ルカード様ったら」

 私はクスクス笑います。


「この国に孤児院を建て、子どもを虐待から防いでいるのも君」


「研究者を集め、この国をより発展させたのも君」


「医療者を集め、この国の医療を発展させたのも君!」


「全部君がやってきたことじゃないか」


 ルカード様は悲しそうに言います。

「それが気に食わないのでしょう。貧相な頭の方々は」

 私は嫌みたっぷりに言います。

「はは、それは言えていますね」

「ルカード様、御真祖様に呼ばれてらっしゃるのでしょう?」

「そうだ、父上に呼ばれているのだった、行ってくる」

 護衛が私を守ります。

「少しだけ離れてください」

「え、ですが」

「お願いしますわ」

 そう頼むと護衛が少しだけ私から距離を取る。

「そこに居るのでしょう、姿を見せなさい」

 複数の吸血鬼の貴族達が居ました。

「私に何のご用でしょうか?」

「人間の分際ルカード様と結婚し、あげく吸血鬼になった強欲な悪女め!」

「八つ裂きにしてルカード様の目を覚ましてあげるのだ!」

「そうだそうだ!」

「この国を犯す悪女め!」

 と襲いかかってきました。

 護衛が動く前に、私はヒールをカツンとならします。

 流れ水が私の前を流れ、吸血鬼達を押し流し、水の塊に顔だけを浮かせた状態になりました。

「ルカード様をお呼びになって」

「は!」

 護衛の一人にそう言うと私は彼らに言う。

「そう、悪女よ。国の為、ルカード様の為ならば何でもする悪女よ私は」


「だから国の民の為にキチンとした医療機関を作った」


「虐待されてるという噂から孤児院を作り職員も虐待してないか不定期検診をしている」


「そして研究職をよりよくする為に、他国から貴賤で排除されている人たちを集めた」


「他もそう、全部国とルカード様の為」


「貴方達のような吸血鬼の為では無いわ」


「で、でばなぜ吸血鬼になっだのだ⁈」

 溺れかけながら吸血鬼の一人が問いかける。

「知れたこと、ルカード様と居るためよ。あの方を一人にしないようにするため」

「フィミア!」

「ルカード様」

「無事か⁈」

「ええ、無事ですとも」

 私はヒールをカツンと鳴らし水魔法を解除する。

「この者達を連れていけ! 全員処刑だ!」

「ルカード様、そこまでしなくても良いのですよ」

「だが……」

「家を取り潰してしまえばいいのです、それだけで十分ですわ」

 私はにっこりと微笑む。

「フィミア……」

「私はルカード様とこの国の為に身を捧げると誓いましたからあの日」

「……有り難う」

 ルカード様はそう言って私を抱きしめました。


 しばらくして、まだ子どもを作らない私達に、いえ、ルカード様に側妃としてうちの娘をというのが来るようになりました。

 ルカード様は激怒し、一喝。

 御真祖様も、激怒し、一喝。

 そのようなのは来るのは激減しました。

 が、それでも寄越してくるおバカさんはいらっしゃいます。

「またか……」

「ルカード様、ならいっそ子作りをしませんか」

 そう言うと、ルカード様は飲んでいた紅茶を吹き出しました。

「な、何を言うんだフィミア!」

「その覚悟は出来てますわ」

 私はルカード様に抱きつきます。

「言ったでしょう、ルカード様にこの身を捧げる覚悟はできていると」

 そう言って、その夜、私達は抱き合いました──



 二ヶ月後──

「妊娠しておられますね」

「まぁ」

 透視魔法で検査をした結果、私の妊娠が発覚しました。

「フィミア、有り難う、有り難う!」

 ルカード様は涙を流して喜びました。

 御真祖様も、涙を流し喜んでくださいました。


 そして一年ほど経過して、漸く赤ん坊が生まれました。

 綺麗な金髪に金色の目の赤ん坊です。

「ルカード様、貴方そっくり」

「本当だ」

「名前を何にしましょう」

「男の子だからな……アルスというのはどうだろう」

「良い名前ですわ」

 私は我が子に話しかけます。

「アルス、私の可愛い子」


 それからまもなく、事件が起きます。

 とある貴族の娘がルカード様との子を妊娠し、産んだと言い出したのです。


「私は君以外とそのような行為はしていない、だから私の子ではない、安心してくれ」

 ルカード様は真実の石を持って私に言いました。

 石は割れずに光ったまま、その貴族の娘の子がルカード様の子ではないと証明されました。


 私は御真祖様に問いかけます。

「御真祖様、ルカード様と瓜二つの男性に心あたりはありませんか?」

「……ある」

 それはルカード様の母親である王妃と双子の側妃が産んだルカード様の弟だということが分かりました。

 ルカード様は聡明に育ちましたが、側妃が産んだ弟君は我が儘放題でこのままでは国を滅ぼすと、王籍を除籍処分にしとある公爵夫妻に預けたそうです。

 ですが、その弟君が一年前から行方不明になったと公爵夫妻から連絡があり、もしやと思ったのです。

「どうしたものか……」

「ところでどうして王妃と側妃を両方娶られたのですか?」

「本当は姉である王妃だけを迎えるはずだったが、侯爵が姉は容量が悪い、妹を是非と言われてな、私はそうは思わなかったが此奴等の考えを探るべく両方娶ったのだ」

「そしてどういうことが分かりましたか?」

「奴らは姉を虐げていた、だからそれをバレないように妹に監視させていたのだ、バラしたらお前の息子に危害を加えると脅してな。それが分かった私はその侯爵一家を処刑、側妃は日の塔へと幽閉する罰を与えた」

「時間がかかったのですね」

「奴らはなかなか尻尾をださなかったのでな、そして今回の件、一体どうするべきか……」

「真祖様私を町に出させてください、護衛やルカード様を隠して」

「何?」

「考えがあるのです」


 私は我が子を真祖様に任せて、夜の町へと繰り出しました。

 一人ひっそり歩いていると、貴族服のルカード様──そっくりの吸血鬼が現れました。

「やぁ、我が妃フィミアよ! こんなところでなにを?」

 私は笑い出しました。

「何がおかしいんだい?」

「だって、我が妃なんてルカード様は呼ばないもの」

 本当のことを言ってヒールをカツンと鳴らし、水魔法で、彼の動きを拘束します。

「くそ!」

「まさかお前が犯人だったとはな、愚弟フォルスよ」

 ルカード様が険しい表情でそっくりの吸血鬼──異母弟であるフォルスを見ます。

「ルカード! 何故お前なんだ! 何故俺じゃないんだ!」

「お前は昔から欲しがりだった、何でも奪いたがった、お前の母親同様にな。側妃がお前が公爵に預けられてから日の塔へと幽閉されたのを知っているだろう。私の母である王妃を害なして大怪我をさせたからだ」

「俺の母親の罪は俺の罪だってか⁈ ふざけるな‼」

「おだまりなさい」

 私はフォルスを睨み付けます。

「国を混乱させる為だけに、一人の娘をだまし妊娠させ、子どもを産ませたのです。それだけで貴方にはこの国にいる資格がないのが分かります」

「その通りだ、フォルス」

「父上⁈」

「御真祖様⁈」

「父上! どうしてなんだ、なんで俺じゃだめなんだよ!」

 御真祖様は我が子を抱きながら言った。

「お前ではこの国は任せられぬのだ、此度のような事件を引き起こし、幼い頃には母親にそそのかされてルカードを殺そうとしたこともあったであろう」

 初めて知る事実に私は驚愕します。

「ああ、父上達とあの屋敷に行ったとき湖に突き落とされた事か……やはりわざとだったのだな、しかもお前の母に言われて!」

「だって、母さんが彼奴さえいなければ俺が王様になれるって!」

「馬鹿者!」

 御真祖様の怒声に我が子が目覚め泣き出した。

「御真祖様」

 私は御真祖さまに近寄り、我が子を抱きしめなだめる。

「フィミア様、私があやしておきます」

「メリーお願い」

「はい!」

 メリーと護衛が少し離れた場所に居ると、御真祖様は息を吐き出し、じろりとフォルスを見つめた。

「お前も母親と同じように日の塔へ送る」

「な⁈ おい、そんな事をしていいのかよ‼」

「そしてお前が産ませた子はお前を預けた公爵夫妻に預ける、ルカードそっくりの別人だったということを報告させた上でな」

「っ……」

「金のない子爵家の娘をだまして、もし問題があったら子爵家に全ての責任を擦り付けようとしたのは明白だ」

「そうですわね、子爵家の方々は本当にルカード様と思っていらしたものね、育てる金もないからどうか助けて欲しい責任を取って欲しいと言われた時は驚きましたが……」

「近衛兵、このものを連れて行け! お前はもはや他人、遠慮はせん!」

「父上、そんな、あんまりだ!」

「あんまり?」

 私は彼の頬をひっぱたきました。

「公爵夫妻の元でおとなしくしていれば何も問題は起きなかったのに、貴方は問題を起こしたのです! 弱い立場の方を利用して、自分の都合の良いように行かないと子どものようにだだをこねて! ルカード様が何故選ばれた? そんなの選ばれて当然です、母親のいいなりになって異母兄を殺そうとしたり、何でも欲しがって奪うなど略奪癖と、他害癖があり、殺しを命ずるような母親のいいなりになるような男に国を任せられますか!」

「う、ぐ、ああ」

 フォルスはボロボロと泣き出しました。

「……連れて行け」

 子どものこころのまま大人になり、自分の都合のよい空間を作り出そうとした結果、(フォルス)は全てを失うことになりました。


 そして件の生まれた子は引き取られ、公爵夫妻の元で育てられているそうですが、王籍からは除籍されているそうです。


「別人にだまされたとは言え、ルカード様の名誉を傷つけてしまい申し訳ない」


 とその子爵からは謝罪がありました。

「やれやれ、波瀾万丈になりそうですわね、これからも」

 私はふぅとため息をつく。

「国の為悪女をやるのも辛いですわね」

「だから君は悪女じゃない」

 我が子をあやしながら言う私に、ルカード様がおっしゃりました。

「君は美しい、人じゃなくなっても、変わらずに美しいままだ」

「有り難うございます、ルカード様」


 その後私は子宝にも恵まれ、御真祖様が公から退いた後、国王となったルカード様を生涯ささえ続けました。

 薔薇の期間と呼ばれ、国は大いに発展していきました。


 その間に私の父母は死去、妹は人間の夫を迎え子を成し、家を紡ぎましたが、老衰で亡くなりました。

 私の侍女のメリーも亡くなりました。


「フィミア様……」

「メリー今までよく本当に仕えてくれました……本当に」

 年老いたメリーの手を掴む。

「フィミア様はいつまでもお美しいです……心も、お姿も……どうかそのままで……」

 そう言ってメリーは目を閉じました。

「メリー?」

 医師の診断で死亡が確認され、私はつぅと涙を流しました。


 私が父母と妹、メリーが亡くなった時が私が私情で涙を流した時でした。

 悪女と言われた私でも、愛しい家族の死は堪えました。

 その後の私の侍女はメリーの娘が引き継ぐことになりました。

 彼女は──


「母を幸せにしてくださった貴方様に私達一族はお仕え続けます」


 といいました、そんな彼女もいずれ見送ることになるのでしょう。


 人間で無くなった事で後悔したのは大切な人間を見送る側にばかりなってしまうことでした。


 でもそれ以外はありませんでした。


 ルカード様はそんな私をいつまでも愛してくれて、国王を退いてからは二人でゆっくりと長い余生を過ごすことにしました。

「ルカード様」

「なんだい、フィミア」

「愛しています」

「私もだよ」

 抱き合い口づけをします、月夜の下で幾度も、幾度も──








フィミアは吸血鬼としての生をルカードと共に生きる為に選びました。

そしてトラブルも率先して解決していきました。

彼女はルカードと共に、メア王国の為に尽くすでしょう、一生。


ここまで読んでくださり有り難うございました!

次回も読んでくださると嬉しいです!

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― 新着の感想 ―
子も子なら親も親とはまさにこのことですね。フェル公爵夫人があんなだからメイフェがあんなふうに育ったんでしょうかね。父である公爵は温情を求めていましたが、ルカードが許すはずもないですね。そりゃ幼なじみと…
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