362話 身体に付いた錆(さび)を落とす 1
ゲシュタルト王国 辺境域
『クラウンからスペード1』、
薄暗い森の木々の枝の上で話し声がする。
『こちらスペード1、クラウンどうぞ』
独り言かと思われた声に、無線機越しの声が応じる。
『目標の状況を送れ、どうぞ』
『対象の魔物村、現在の所ゴブリン31、ホブ5、小鬼強者1です・・・』
無線が一時途切れる。
『狼系の魔物が3でおそらくレッサーウルフ。魔法使い系統は確認できず。5時間の偵察で判明した数だが、あばら家の中までは未確認の為この数値はおおよそのもの、どうぞ」
『クラウン了解』
『以上、スペード1』
無線機での会話が打ち切られる。
「しっかし、本当にこんな雰囲気は久し振りだなアリシア」
「今は『状況』中よ。クラウン」
「君と初めて出会ったのも森の中で、君はゴブリンと独りで闘っていた」
「・・・、昔話を懐かしむようになったら歳をとった証拠らしいわよマコト」
軽口をたたくマコト(ヤマト公国国王)に対して、アリシア(ヤマト公国公妃・葬送曲現団長)が辛辣に返す。
「王冠、王妃、夫婦喧嘩は他所でして下さい」
2人はのやり取りに護衛の親衛隊員が苦言を提する。
「『御忍びで他国で冒険者の仕事を』とゲシュタルト王国に来たかと思えば、田舎の冒険者ギルドの受付嬢に『ゴブリン討伐を』ってSランク冒険者2人が冒険者証を見せたら混乱させるでしょうに。お妃様まで」
他の親衛隊員もつい、といった感じで愚痴をこぼす。
事の発端は、仕事、仕事でろくに家庭を省みない夫に対して奥さん方が不満を抱いたが、公王としての責務と重圧を理解していた彼女達はまずマコトのメンタルを回復させてから自分達に目を向けさせようと考えて今回の一件を計画したのだ。
軍と事務官達を巻き込み、20日分の業務を15日間の過密スケジュールでマコトにこなさせて5日間の猶予を作り出したのだ。
激務でぐったりしていたマコトだったが妻達の考えと計画を知り復活して今に至る。因みにゲシュタルト王国の義父ハイマン国王にはもちろん事前に連絡はしていたので密入国では無い。
凡そ50匹と推測されるゴブリンに対してマコトとアリシアそして葬送曲の冒険者10名と親衛隊員20名の布陣で挑んでいる。
冒険者と偵察兵数名が事前に偵察をしていた。その結果は先の会話の通り敵の予想規模は大きく外れることはなかった。




