オミオツケさんは条件を出す
オミオツケさんが食堂に入ると五つのお椀がテーブルに並んでいた。
コーンスープ、コンソメスープ、玉子スープ、お吸い物、そしてみそ汁。
オミオツケさんが来る前に作ったのだろう、もう中身は冷めているようだった。
レンレンは、ゴム手袋をはめた手で制服の上に身につけたエプロンを外すと和かにオミオツケさんに微笑む。
「こんにちはオミオツケさん」
そういえば今日は会うのが初めてだったっけ?
「こんにちは……レンレン君」
オミオツケさんは、普通に挨拶したつもりだったがその声が少し固かった。
レンレンは、それに気付き眉を薄く顰める。
「どうかしました?オミオツケさん?」
レンレンは、心配げに言う。
オミオツケさんは、レンレンが心配しているのに気づくも首を横に振り、小さく唇を釣り上げる。
「なんでもないよ。レンレン君」
そう言ってオミオツケさんは、テーブルに並んだ五つの汁物を見る。
「今日は何をするの?」
「はっはい」
オミオツケさんに促され、レンレンもテーブルに目を向ける。
「今日は少し特訓をしてみようと思います」
「特訓?」
オミオツケさんは、眉を顰める。
「はいっ」
レンレンは、頷くとズボンのお尻のポケットに手を入れ、少し厚めに畳まれた黄色い布のような物を取り出す。
「特訓です」
そう言ってレンレンは、黄色い布を折れ目を離す。
すると、布はするんっと長く垂れる。
それは体育祭のリレーで使うような黄色のハチマキだった。
「オミオツケさんにはこれで目を隠してもらいます」
レンレンがそう言った瞬間、オミオツケさんは、顔を引き攣らせながら胸元を両腕で守るように覆う。
その目はまるでケダモノ!と言わんばかりに震えている。
「……何を想像したんですか?」
レンレンは、半眼でオミオツケさんを見る。
「前も話したように恐らくあの現象が起きる理由として視覚的な要因がとても大きいと思います」
レンレンの言葉にオミオツケさんは、テーブルの上に並んだ五つのお椀の一つ、みそ汁に目を向ける。
「それに前回でみそ汁の味を覚えたから例え視覚の壁を超えても味覚で反応する可能性もある。まあ、そんなこと言ったら嗅覚もかもしれませんが……」
オミオツケさんは、冷めた目をレンレンに向ける。
「それって万事休すってこと?」
オミオツケさんの顔が青ざめる。
そんなこと考えもしなかった。
まさか、人生最大の歓喜とも言える場面がさらに絶望を膨らませることに繋がるだなんて……。
力を落とすオミオツケさんにレンレンは笑いかける。
「その為の特訓ですよ」
そう言ってハチマキをたたみ直す。
「オミオツケさんにはみそ汁を見ても飲んでも動じない心作りをしてもらいます」
「心作り?」
オミオツケさんは、首を傾げる。
「はいっ」
レンレンは、小さく頷く。
「ここに用意したみそ汁を含めた五つの汁物を目隠しした状態で交互に飲んでいってもらいます。いつみそ汁が来るか分からない中、みそ汁の味を感じても飲むことが出来たら成功です」
つまりみそ汁当てゲームか。
しかもロシアンルーレット的な。
オミオツケさんは、思わず唾を飲むこむ。
「まずは飲んでも動じない。次に匂いを嗅いでも動じない、そして見ても動じない。子どもがピーマンやトマトを克服するのと一緒。難しいことじゃありません」
子ども……。
自分は、好き嫌いする子どもと一緒なのか……。
それに子どもがトマトやピーマンに触れてもファンタジーになんて起きないだろう。
そんな疑問をオミオツケさんは視線でレンレンにぶつける。しかし、レンレンはそれに気づいてるのか、気づいてないのか?和やかな笑顔でオミオツケさんを見た。
その笑顔で見られると……何も言えなくなってしまう。
「分かった」
オミオツケさんは、静かに頷く。
「やってみる」
オミオツケさんの言葉にレンレンは笑みを深める。
「頑張りましょう」
そう言って綺麗に畳んだハチマキをオミオツケさんに渡す。
「大丈夫です。クールで知的なオミオツケさんなら乗り越えられますよ」
クールで知的……。
周りがオミオツケさんに勝手に持って、与えた印象。
何故だろう?
彼からそんな風に呼ばれるのが凄く嫌だった。
しかし、クールで知的なオミオツケさんはそんな感情をおくびも出さず、冷静な顔で「分かったわ」とハチマキを受け取った。
オミオツケさんは、椅子に座り、目にハチマキを巻いた。触り心地がとても薄かったのに目の部分に巻きつけると途端に闇が視界を覆い隠す。
特訓の内容はこうだ。
視覚を閉ざした状態でランダムにお椀の中身を飲んでいく。
オミオツケさんは、いつ来るか分からないみそ汁に備えて気持ちを落ち着かせて、平静を保ち、舌がみそ汁を感じても動じず、現象が起きなければ成功、と言うことだ。
まるでいつ、どこで仕掛けが動くか分からないお化け屋敷で驚くなと言われているような気分で、そんなの動揺するな、と言う方が無理な話だ。
(クール、クール)
オミオツケさんは、心を、平静に冷静に保てるよう自らに催眠術をかけるように言い聞かせる。
「それじゃあ始めます」
レンレンの和やかな声が耳に入ってくる。
「オミオツケさん、お手数ですが匂いが分からないよう鼻を摘んでから器を取ってもらっていいですか?」
「……テッシュを鼻の穴に詰め込んだらいいんじゃないの?」
「……それはやめましょうか」
レンレンは、少し引き気味に言う。
女の子同士では特に珍しい会話ではないが男の子は違うのだろうか?とオミオツケさんは首を傾げながらも自分の小さな鼻を指で摘み、もう片方の手で器を取ろうとして……気づく。
器が見えないことに。
緊張し過ぎて肝心なことに気づいてなかった。
レンレンもそれに気付いたのか「あっ」と声を上げる。
どうしよう……このまま手を闇雲に伸ばしてお椀をひっくり返したら元も子もない。
悩みあぐねるオミオツケさんの耳にレンレンの予想外の言葉が飛んでくる。
「俺が持たせますね」
「えっ?」
そう言うや否やオミオツケさんの鼻を摘んでない方の手に固い温もりが触れる。
レンレンの手だ。
ゴム手袋をはめてるのにその感触と温もりがしっかりと伝わってくる。
レンレンの手が優しくオミオツケさんの手に触れてゆっくりと持ち上げる。
ハチマキに目を覆ったオミオツケさんの顔が弾けんばかりに赤く染まる。
「ちゃんと握ってくださいね」
そう言ってオミオツケさんの手にお椀をゆっくりと持たせる。
しかし、オミオツケさんはレンレンの手の感触にばかり意識がいってお椀を上手く持つことが出来ない。
レンレンは、それを"意外と不器用なんだな"くらいにしか思わず、口元まで運ぼうと彼女の手を握ったまま動かす。
オミオツケさんもそれに気付き、さらに舞い上がって止めようとするも時既に遅し。
お椀の端が唇に触れて、中の汁が流れ込んでくる。
とろりっとした濃厚な甘味が舌に絡みつき、喉の奥に入り、口の端を溢れる。
これは……。
オミオツケさんは、喉を鳴らしてから口を開く。
「コーンスープ?」
オミオツケさんは、恐る恐る訊く。
「正解です」
レンレンは、嬉しそうに言う。
顔は見えないがいつもの和やかな笑みを浮かべてるであろうことが想像ついた。
「良かったです」
レンレンは、ほっとしたように言う。
「なんか凄い動揺してたからみそ汁と勘違いして反応したらどうしようか、と思いました」
そんなに動揺してたんだ……。
オミオツケさんは、自分の頬が熱くなり、心臓がバックン、バックンと高鳴るのが耳の奥から響いてくる。
そこに更なる追撃が来る。
オミオツケさんの口元に柔らかい感触が伝わる。
敏感になっていたオミオツケさんの感覚がそれがタオルハンカチであることを伝え、更に丁寧に拭かれていることを告げた。
レンレンに。
「………………っ!」
オミオツケさんは、声にならない悲鳴を上げる。
その声に驚き、レンレンは反射的に手を引っ込める。
「な……なななな……何を⁉︎」
オミオツケさんは、もはや響めきとしか言えない声を上げる。
「い……いや……その……」
レンレンは、手に持ったタオルハンカチとオミオツケさんを交互に見る。
「口元が汚れてたから……オミオツケさん見えないから気づかないかと思って……」
「言ってくれれば拭けるから!」
そう叫ぶとオミオツケさんは手探りで自分の鞄からハンカチを取り出して乱暴に口元を拭っていると脳裏に昨日のスポーツ女子とレンレンのやり取りが過る。
「ねえ、レンレン君って……タラシなの?」
「はいー⁉︎」
オミオツケさんの言葉にレンレンは素っ頓狂な声を上げる。
「だって……妙に女の子の好きなもの分かってるじゃん。きめ細やかで親切だし……それにやたらと気安く触ってくるし……」
最後の方は恥ずかしくて声が尻すぼみになる。
「いや……そんなことは……」
レンレンもオミオツケさんに指摘されてようやく自分のしてきたことが何とも大胆であったことに気づく。
不可思議な現象が起きずにみそ汁を飲めるようにする。
そんな現実離れした指標と目標が無意識の内にオミオツケさんに対するタガを緩めていたらしい。
「すいません……不快な思いを……」
「そうだよ……あの子にも勘違いされちゃうよ」
「……あの子?」
レンレンは、疑問系で呟く。
恐らく首を横に傾げてる。
オミオツケさんは、レンレンに気づかれないように小さく唾を飲み込む。
「昨日、校舎の裏であの子と親そうに話してたじゃない。美味しそうな手作りクッキーまでもらっちゃってさ」
オミオツケさんは、務めていつも通りに、クールに、自分には関係ないと言わんばかりに言葉に出す。
そして出した後に……後悔した。
これでは自分が覗き見して、更に嫉妬して言ってると勘違いされてしまうではないか……。
レンレンは、何も言わなくなる。
その沈黙が堪らなく怖い……。
オミオツケさんは、居た堪れなくなり、ハチマキを外して出て行こうか、と思った時、レンレンが「あーっ」と声を上げとと同時にポンっと音がした。
恐らく握った手を手の平に当てたのだ。
「あれはお礼です」
そう告げるレンレンの声は冷静そのものだった。
「お礼?」
オミオツケさんが聞き返すとレンレンは小さく頷いた……と思う。見えないけど。
「彼女……小麦粉アレルギーで以前、米粉でラーメンを作ったんですけど会う度にそのお礼ってお菓子をくれるんです。もういいですよって言ってるのに……律儀ですよね」
そう言ってレンレンは小さく笑う。
お礼……?会う度に……?
それはやはり何かあるのではないか?
オミオツケさんは疑うものの当事者であるレンレンはまるで疑問を抱いてないようで、「なんか申し訳なくて」とか「今度、俺からもお礼返ししないと」と笑いながら言う。
オミオツケさんは、疑わしく思いながら同時にレンレンが何とも思っていないのだと知って何故かホッとした。
ホッとしたと同時に……一つの想いが浮かび、気がついたら口にしていた。
「それじゃあ……私もお礼するね」
「んっ?」
オミオツケさんが発した言葉にレンレンは眉根を寄せて聞き返す。
「この特訓が……うまく言ったらお礼に付き合って」
お礼に付き合う?
おかしな日本語にレンレンは更に戸惑う。
「来週、エガオが笑う時の映画がやるの知ってる?」
「はいっそれは」
レンレンもファンなので当然知ってる。見に行きたいとも思うがどちらかと言うと女性向けの映画なので行きずらいと思って悩んでいたところだ。
「行きたいんだけど……誰も誘えなくて困ってたの。妹には早いし。これが上手く行ったら一緒に行きましょう」
一緒に映画に……?
そう考えた途端、レンレンに緊張が走る。
オミオツケさんと映画……それってデート⁉︎
そう思い至った瞬間、レンレンは心の中で悲鳴を上げて慌てて断ろうとする。
しかし、ハチマキを巻いたオミオツケさんの冷静な顔があまりにも真剣で口に出すことが出来なかった。
それにこの願いを叶うことで彼女の特訓に対する意欲が上がるのなら……。
「……わかりました」
レンレンは、重々しく頷く。
その瞬間、クールで知的なオミオツケさんの顔が輝いた……気がした。
「約束だよ」
「……はいっ」
オミオツケさんは、テーブルに向かい合う。
「始めよう」
「……はいっ」
レンレンは、頷き、特訓を再開した。
玉子スープ。
コンソメスープ。
オミオツケさんは、恐々とお椀に口を付け、味を確認するとホッとして飲み干し、器をテーブルに戻した。
そして緊張する。
残りは二つ。
お吸い物と……みそ汁だ。
「レンレン……ちょっと意地悪じゃない?」
オミオツケさんは、むっと唇を突き出す。
二つや三つで来てくれたらひょっとしたらみそ汁と気づかずに飲み干せたかもしれないのに、これでは緊張で嫌でも感覚が過敏になってみそ汁に反応してしまう。
「そうじゃないと特訓になりませんからね」
そう言ってレンレンが苦笑したのが分かった。
そして次のお椀が置かれたことも。
「さあ、飲んでください」
レンレンの言葉にオミオツケさんは頷くと手を動かして器がどこにあるかを確認し、見つけるとそれをゆっくり持ち上げる。
鼻を摘んでるので匂いはまるで分からない。
やはり味で見極めるしかない。
(クール、クール)
オミオツケさんは、呪文のように胸中で繰り返し、お椀に口を付け……愕然とする。
この塩味の効いた深い出汁の味わいは……。
「お吸い物?」
オミオツケさんは、言葉固く口に出す。
「正解です」
レンレンは、和かに言う。
オミオツケさんは、思わずお椀を落としそうになる。
五択中四択不正解!
いや、不正解ではない。敢えてレンレンはこの選択をしてオミオツケさんに飲ませていったのだ。
みそ汁以外を。
でも……。
「レンレン君⁉︎どう言うこと?これじゃあゲームの意味が……」
オミオツケさんは、言いかけてハッとする。
これはみそ汁当てゲームじゃない。
特訓だ。
レンレンは、五つの汁物を見せることでオミオツケさんの認識をみそ汁当てゲームのようだ、と思わせてそして意図的に違う汁物を飲ませたのだ。
次に来るのがみそ汁である、と。
そしてそれを分かった上で心を落ち着かせて飲むことが出来るか、と。
これはオミオツケさんの心を鍛えるための特訓。
みそ汁の味を感じても、匂いを嗅いでも、見ても動じない、現象が発動しなくする為の特訓なのだ。
トライ・アンド・エラー。
ちょっと前にレンレンが口にした言葉が頭の中で蘇る中、手からお椀の感触が一瞬消え、再び感触が戻ってくる。
少し重くなって。
オミオツケさんは、レンレンが吸い物のお椀からみそ汁のお椀に変えたのだと、すぐに分かった。
その瞬間、お椀の中でみそ汁が暴れ出しているのが指先から伝わってくる感覚で分かった。
どうしよう……どうしよう……。
オミオツケさんは、みそ汁と一緒に自分の心持ちざわめき、泡立ち始めるのを止めることが出来なかった。
唇を噛み、心臓が激しく鳴り響き、涙が溢れそうになる。
その時、オミオツケさんの小さな肩に固い温もりが乗る。
「……大丈夫です」
レンレンの優しい声が耳朶を打つ。
「オミオツケさんなら出来ます」
レンレンの声が静かに震える心に染み込んでいく。
心臓の音が少し静かになり、お椀から伝わるみそ汁の感覚が少し静かになる。
「その調子です」
そう呟く声がレンレンの和やかに笑う顔を想像させる。
「……レンレン君」
オミオツケさんは、静かに、しかし縋るように声を絞り出す。
「飲ませて」
「えっ?」
レンレンの驚く声が聞こえる。
「身体が緊張して……これ以上動けないの。お願い……さっきみたいに飲ませて……」
オミオツケさんの肩に乗るレンレンの手が強張る。
手のひらが汗で濡れていくことが分かる。
オミオツケさんも自分がもの凄く大胆なことを言ってることは分かってる。
でも、負けたくない。
失敗したくない。
妹の為にも……。
そして……。
「……わかりました」
肩に置かれたレンレンの手が離れる。
その次の瞬間、お椀を握るオミオツケさんの手にレンレンの手が添えられ、自分の手をゆっくりと動かしながら口元に向かっていく。
再びオミオツケさんの心臓が激しく鳴り響き、お椀の中が暴れ出す。
(お願い……落ち着いて……私の心……)
オミオツケさんは、自分の心に願った。
お椀の端が唇に触れる。
甘く、深い味噌と出汁の味が舌を通り、喉の中に流れ込む。
ごっくん。
オミオツケさんの喉が大きく音を鳴らす。
「ぷはあ!」
オミオツケさんの口から大きな息が漏れる。
レンレンの手とお椀がオミオツケさんの手から離れる。
オミオツケさんは、慌てた目隠しを外す。
LEDライトの光が目を焼き、思わず両手で覆う。
「みそ汁は⁉︎」
オミオツケさんは、両手で顔を覆いながらレンレンに訊く。
しかし、レンレンは答えない。
その代わりにテーブルの上に固い何かを置く音が聞こえる。
オミオツケさんは、両手を顔から離し、ゆっくりと目を開ける。
テーブルの上にあったのはみそ汁の入ったお椀。
その中身は……半分以上減っていた。
「成功です」
レンレンが優しい口調で言う。
「おめでとうございます。オミオツケさん」
レンレンは、大きな微笑を浮かべる。
オミオツケさんは、信じられないと言わんばかりに目を大きく震わせ、お椀を見て、レンレンを見る。
「泡吹き出してエガオが笑う時に出てくる鬼の姿になり始めた時はどうしようかと思いました」
そんなことになってたのか……オミオツケさんは呆然と半分になったみそ汁を見る。
「でも、流石ですオミオツケさん。見事、ゲームクリアです」
そう言ってレンレンは笑う。
クリア……ゲームクリア。
その言葉を聞いた途端、現実感がオミオツケさんを満たす。
自分は……またみそ汁を飲むことが出来た。
そして……。
「お礼……」
オミオツケさんは、ぽそりっと呟く。
「えっ?」
レンレンは、小さく声を出す。
オミオツケさんは、冷めた目をレンレンに向ける。
「お礼……付き合ってよね」
その言葉にレンレンは大きく目を開く。
オミオツケさんの冷めた、しかし、力強い目がレンレンを下から覗き込む。
それだけで彼女がいかに今回の特訓を真剣に受けていたかが伝わってくる。
(本当にみそ汁が飲めるようになりたいんだな)
妹のために。
そしてこんなに頑張ってるオミオツケさんのお礼をしたいと願ってるのだから自分もしっかりと答えなければ……。
「いつ行きますか?」
そう口にした瞬間、オミオツケさんの冷めた目と表情が輝く。
「今度の日曜日!チケットは私が取るから!」
オミオツケさんは、小学生が先生の質問に挙手して答えるように大きな声で言う。
「約束だからね!」
「……はいっ」
レンレンは、小さく笑って頷いた。




