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「ピッピッピッピッピ」
小鳥は生まれてきたばかりだというのに元気に机の上を走り回っている。大きさは手乗りサイズで、一般的にひよこと呼ばれるサイズとそう変わらない。
けれど、問題は全身の色。卵の色からして着色でもしていなければ普通の色じゃなかったが、こうやって生まれてきたのがオレンジ色なことからこいつは普通のひよこではないとわかる。
「なんだと思う?」
「…………十中八九魔物だと思いますよ」
「だよなぁ」
魔物の卵が流れてくるのは珍しいことだが、ないことはない。街の外にいけば魔物を見つけることはできるし、卵を盗みだすことも無理ではない。ただ、捕獲してくるには難易度が高い上に魔物は基本的に卵から育てようと懐かない。要はメリットが薄いので市場に出回らないのだ。
とは言え、だ。今、手元にいるのは魔物の雛、なのだろう。推測の域を出ないのは俺には魔物の知識がないからで、こんな鳥見たことないからという雑な判断だ。魔物だとすれば少々、いやだいぶ不味いかもしれない。
魔物は懐かない。これが普遍的な認識であり、国からの認識。つまりは飼っていることが公になると問題になるのだ。即刻、臭い飯を食うことにはならないだろうが然るべき機関に報告しなければならない。
「ピ?」
「ハハハ、呑気なもんだ。そういやお前って何食うんだ。あ、名前も決めないとな」
「鳥なら種でも食わせとけばいいんじゃないですか。ほれ食え」
「それ何の種?なんか紫色なんですけど」
絶対に普通じゃない。普通の野菜の種はあんな禍々しい色とオーラを放ってない。あ、食べるんですね、はい。名前をどうしたものか。
正直に言って、俺には美的センスがない。正確にはないと断言された。カノンさんに。店の配置を決めてくれたのもカノンさん、店の名前を決めてくれたのもカノンさん。
俺が考えていた名前は「なんでも屋」。必要そうなものをジャンル問わず置いてるんだから、わかりやすくて良い名前だろ。でも、カノンさん曰く、「色々な意味で誤解を受けます」とのこと。よくわからん。で、結局は「ライトオン」になった。
「センスはないですが、折角です。店長が名付けをしてみては?」
「えー……アカさんとかどうよ」
「ピ?」
うーん、あんまり反応が芳しくないな。カノンも「なぜ敬称を」とかなんとかぶつぶつ言ってるし、ダメそう。なら、「アカさま」でどうだ。反応なし、ね。カノンからの視線も鋭くなったので真剣に考えるとしよう。
「…………エン」
「ピ!」
「お、反応あり……ってなんか光っとる。俺」
「これは……」
エンと名付けた小鳥が緑色の光に包まれていったかと思うと、その光が近くにいた俺をも飲み込んだ。反射的に身を引いてしまったが、別に熱くも気持ち悪くもない。むしろ少しの安らぎすら感じる光は10秒もすれば霧散した。
「名付けによって結ばれた。おめでとうございます。パートナーの誕生ですね」
「含みのある言い方辞めてくれる!?」
小鳥の名前が決まったかと思えば、俺と契約が成立してしまった。




