第82話:長引く腰と脇腹の不調
左のアンダースロー橘周は、メジャー4年目を成績下げたわけだが、その一番の原因となった腰の不調は、シーズン終了後も長引いていた。身体の中央に位置する腰の不調は、下半身・上半身両方のトレーニングが満足できなくなり、非常にやっかいである。しかもアンダースローでの投球練習が、ほぼ全くできない。
そもそもプロスポーツ選手は、一般人のように、調子が良くなるまで何もしないというわけにはいかない。筋力はすぐに衰えるし、走力にも影響する。何よりピッチャーは、肩や肘を作りつつ様々な球種を試すわけなので、長引く腰の不調は、特に橘周にとってより深刻だ。
ダッシュ系のトレーニングは控えて、スクワットや据わった状態での筋トレ、上手からのキャッチボール等制限された中で頑張るしかなかった。
1月にトレーナーの高井と橘周の自宅で
高井「なかなか状態上がってこないよな」
橘周「そうですね、もう終わりですかねーー。
これが老いというものか!(笑)」
高井「いくらなんでも早いわ(笑)。そもそも腰と脇腹以外元気だし」
橘周「そうなんですよ。肩、肘、膝、後股関節が悪く無いのをラッキー
と思って気分をまぎらわせています」
高井「トレーナーとしても申し訳ない」
橘周「いやー23歳からアンダースローで全力で投げすぎたんで、無理する
なってことでしょうね」
高井「キャンプどうする?」
橘周「不参加かどうかもう少し様子みてからですね」
結局キャンプは遅れて少しだけ参加したが、3月にはマイナー調整となった。
シーズンが始まってようやくアンダースローで投げても違和感が少なくなった。でもここからちゃんとした身体作りと投球練習が始まるので、メジャーに上がるのはまだ先のこととなる。
こんな状態なので、ファンもメディアもスポンサーも手のひら返しが多くなった。なんせ昨年は年俸とスポンサー収入を合計した年収が100億超えていたから、妬みややっかみ多かった。
今回のケガは、治ればまた復活ということではなく、先発ピッチャーとして
ドクターストップがかかって、良くてもショートリリーフなので、スポンサー
の契約打ち切りが半分以上にのぼった。
例えれば、孫悟空がもう2度とスーパーサイヤ人には成れない身体になってしまった感じ。ルフィーがギア3までしか変われなくなって、ギア4,5は一生無理になった感じ。分かりにくいか・・・(笑)。
高井「スポンサー打ち切り残念やな。不倫もしてないのに(笑)」
橘周「仕方ないです。今まで希少価値もあって他のスター選手より大分
多くもらってたので」
高井「金は大丈夫かいな?」
橘周「それは大丈夫ですよ。もちろん。それほどの贅沢も投資もしていない
し、一番大きな出費は寄付ですから」
高井「素晴らしい!それでこそ俺が見込んだ男(笑)」
5月になるとさらに状態が上がってきた。アンダースローで145キロの球速が投げられた。一昨年までの150キロは無理だけど、145キロで少し浮き上がるから、ライジングストレート復活だ。
5月後半にはマイナーで登板が始まり、3試合に投げて、いよいよメジャー昇格の準備が整った。
中継ぎ投手として、また活躍できるのか??