第77話:シュートをひっさげて復帰だ!
激しい腰痛を発生して故障者リスト入りした橘周は、約1ヵ月でメジャーの試合に戻って来た。
腰痛の治療はあったが、他は元気だったので、真夏にいい休養が取れたと前向きに考えるようにしていた。それと復帰登板で例のシュートボールが、操れるのか?通用するのか?のテストも兼ねていた。
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元ジャイアンツの西本聖氏のシュートボールは、手首を捻らず、また握りを変えるツーシームでも無かった。投げる時に外側に滑らせるというか切るという独特のシュート。捻らないので、肘の負担も少な目。ただ橘周の場合、低い位置から下方向へ縦回転かけるように滑らせるから、コントロールが難しい。しかし、故障中に腰の負担が少ない立ったままのサイドスローで練習して、コツをつかむことができた。落差は30~50cm。例を上げるなら、WBC1回大会で胴上げ投手になった大塚投手の縦割れの高速スライダーだ。
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手首を捻るシンカーやツーシームと区別するために、実際にシュートと名付けて試合で投げた。故障明けということで、まずは5回80球を目安としてマウンドに上がった。
1番打者の3球目で早速使って空振りを取った。「うん、有効だ!」と効果が上々だと分かった。それと「今日からシンカーは眠らせてシュートだ」と決めた瞬間だった。実は投げる時に手首を強く捻るシンカーとパワーカーブは、無理な低い体勢であるがために、腰の負担に少なからず影響しているのではないかと考えていたので、やれやれとホッとした。
復帰戦は5回72球無失点7脱三振で勝利投手となった。新球シュートは3つの三振と2つのゴロアウトと、想像していた以上の武器になった。シンカーより急激に沈み、ツーシームより曲がり幅が大きく、チェンジアップより10キロ程度速いからストレートやカットボールと合わせて、今まで以上に打者にはやっかいな組み合わせの配球ができたのだ。
野手としての出場や登板日のバッターとしての出場は当面無い方針だが、まあそれは仕方ない。
次の試合は、5回2失点79球とギリギリの勝ち投手で、そして復帰3試合目の登板を迎えた。球数制限が100球までになり、橘周は、気持ち良く思い通りのピッチングができた。この日は、久しぶりにバッタバッタと三振を取りまくった。縦割れのシュートがさらにキレを増し、相手バッターは空振りの山だ。そうなると当然浮き上がるストレートにもバットが当たらないし、ライジングカッターやツーシームにも当てるのがやっとになる。たまに来るチェンジアップは、タイミングを外され見送るしかない。
終わって見ると7回93球無失点15脱三振と今シーズン一番の結果となった。
高井「シュート通用しなたあ」
橘周「ありがとうございます。先輩が病院と練習に付き合ってくれて、
腰のケアもしてくれたおかげです」
高井「それが仕事だからね。でも臨時ボーナスもらってもいいかな(笑)」
橘周「ボーナスはどうか分からないので、日本のご家族にプレゼント送って
おきます」
高井「マジ?それは助かる」
橘周「しかし、西本聖さんのシュートを選んで良かったです」
ここまで開幕12連勝が続いていた。
新たな武器を手に入れて、シーズン最後まで突っ走る!




