第285話:MJのスーパーヒット曲から新たな伝説の幕開け
先発陣不足の中、ヒーローが先発
ドジャースの面々は、ジョージア州アトランタ郊外の
トゥルーイスト・パークにいた。
先発の橘周は、入念に準備をしていた。
ポストシーズンでの先発は本当に久しぶりのこと。
肘の違和感が少しあるし、腰のハリもある。
しかし「この試合で引退しても本望」と、今シーズンは
昨年以上にずっと思って戦ってきたから、問題無しだ。
球場内に溢れるブレーブスファンは、ワールドシリーズ進出
が近くなった期待でワクワクするとともに、先発橘周を見ら
れることにも期待感がある。
ドジャースファンは一部ではあるが、「ここから巻き返す」
と、気合入りまくりだ。
と、ここで、歴史上最も有名な曲の1つが球場内、
いや全世界に響き渡る。
Michael Jackson - Billie Jean
曲とムーンウォークによって、エンターテインメント界に
革命を起こした、マイケル・ジャクソンの「ビリージーン」
とともに、橘周が颯爽と登場する。
意外な曲での登場に、球場内のボルテージは、早くも最高潮
に達する。
不幸な死を遂げたマイケルを想い、涙する者までいる。
先発ピッチャーの登場だけで、この異様な盛り上がりは、
史上初めてかもしれない。
「よし、MJの力を借りて、必ず抑える!!」
メラメラと燃える気持ちを抑えて、淡々と投球練習をする。
試合開始。
1番バッターが右打席に。
・初球:133キロの速いナックル ストライク
・2球目:118キロの遅いナックル 見送ってボール
ブレーブスはナックルの見極めに時間を費やしたようだ。
・3球目:148キロの真ん中高めストレート 空振り
メジャーでは遅めだが、伸びのある軌道には合わせにくい
・4球目:135キロのシンカーに空振り、三振!
早いナックルと変わらない速度だが、バッターの手元で
急速に逃げていくボール球に手が出た。
幸先良く、三振で仕留めた。
2番バッターは左打席。
初球のナックルカーブを打って、セカンドゴロ。
3番バッターも左打席。
・初球:138キロの外角低めスライダーでストライク
・2球目:144キロの外角低めに、バックドアのツーシーム
左右のバッターに対し、フロントドアとバックドアが
自在に使えるピッチャーは早々いないので、実はこれも
橘周の大きな武器でもある。
・3球目:今度はフロントドアのカットボール。見送って三振。
ナックルが頭の隅にあったから、横に曲がるツーシームと
カットボールについていけなかった。
メジャーリーグ屈指のバッターを、意表を突く投球で三球
三振で1回を締め、
「やっぱりヒーローは格が違う」と見せつけた。
さあ、新たな伝説の1ページになる試合が始まった。
これまでの経験の全てを活かしたピッチングが始まった!




