第101話:弟壮太郎の初勝利で、橘周も楽になった
弟から兄への兄弟リレーからの、弟の橘壮太郎がメジャー初勝利した翌々日、試合前の練習で壮太郎の表情が明るかった。アメリカに渡って2ヶ月で一番だろう。
壮太郎は、プロ野球で若くして20勝を3回達成した大物ルーキーだからこそ、1勝するまでは落ち着かなかったのだ。改めて先人達の凄さ、特に野茂英雄さんと兄の凄さを思い知った。おっとりした壮太郎が、キャンプ以来ソワソワしていたわけだけど、やっとふうっと一息付けた。
兄の橘周は、「さあこれでやっと、壮が落ち着いて技術的な打合せができるな」と笑った。
ここから、シーズン完走に向けて、兄弟で助け合って高めていけば、いい結果が待っていると考えていた。
特に壮太郎の球種や配球等がどこまで通用しているか?どう改善すると良いのか?その他守備や審判との相性問題等一度全体を棚卸して、改善ポイントを探っている作業をしていくことが重要だし、真っ先に取り組むもの。
橘周としても、弟が先発投手として力を発揮すればするほど自身のセーブ機会が増えるので、相乗効果が大きいのだ。
でもそれ以上に、壮太郎がメジャーで大投手になっていくことに寄り添うことができることが、兄として大きなやりがいを感じていたし、高いモチベーションになっていた。
その日も、クローザーとして9回にマウンドに上がった。弟の初勝利で少し余裕できたのか、初めてチェンジアップとスローカーブを使った。しかし、1球ずつだ。クローザーとして遅い球種を使うのは、絶対にタイミングを合わせられないと確信がある時だけだ。
2三振で試合を締めてセーブポイントを獲得した。
翌日、久しぶりにバッティング練習の機会を与えてもらった。
気持ち良くホームランを連発したが、130m級の飛距離もあり、ちょっとした騒然とした雰囲気になった。後はベースランニングを80%の力でしてみたが、やはりヤンキースでも最速なのだろう。何をやってもトップレベルというか、走力は今でもメジャーでNo1かもしれないから、他の選手達はヤレヤレって感じで見ていた。
若い選手からは、バッティングやベースランニングについての質問を受けていた。クローザーのピッチャーが有望な若手に、ピッチャーではなく野手としてアドバイスするのは、まあ初めてだろう。
監督も「あれを見ると、バッターや走者としても使いたくなるな。いや安易に頼るのはまずいな」と笑った。




