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歪んだ感覚
雛子さんの唾液という体液が僕の体を巡って栄養になること。
逆に、僕の唾液が雛子さんの体中を巡る事が愛おしくてたまらなかった。
僕には届かない恋だからと諦めていた。
だからこそ、箸を口に入れることも出来た。
雛子さんは帰ってきて、温かいミルクティーを持っていた。
離れた席から、僕がしばらくじーっと見ていると、彼女は僕に気づいた。
最低な僕に気づいて。
彼女はニカッと笑って見せた。
僕は慌てて俯いたけれど、諦めていたからこその行動だったそれは、考えられないものになっていた。
自分にも、あわよくば、もしかしたら、チャンスがあるかもしれないと思った。
だからずっと、雛子さんを見ている。
好きなものだとか、誕生日だとか嫌いな食べ物だとか。
同じ教室の時に話している内容はなるべく耳に入れるようにした。
でも、段々と、もっと知りたくなったから。
雛子さんの帰り道も。
雛子さんがどこから登校してくるかも。
変な道を通ると危ないから。
僕がずっと後ろからついて行った。
雛子さんが常に何をしにどこに行くかを把握しなければ気が済まないようになった。
雛子さんが好きなんだ。




