死神さんの様子
死神さんが私を殺すまで、残すところ二週間になった。
しかし、肝心の死神さんの様子が最近おかしい。
「ネルさん。今日は雨が降るって夢で見たから、洗濯物は家の中に干しておいてくれる?」
「わかりました」
まず、目が合わない。
今私が話しかけても、私の方を少しも向いてくれなかった。
でも、一番変だなと思ったのは昨晩。
「何で記憶を消したんだ!」
ネルさんの怒鳴り声が聞こえた時だ。
いつも敬語を使う、温厚な性格からは考えられないような雰囲気だった。
今朝、誰に怒鳴っていたのかと尋ねてみても、上手く誤魔化されるから、きっと聞かない方がいいのだろう。
…凄く気になるけど。
そんなこんなで、一週間が過ぎていった。
私はいつも通り、自室のベットに横になって夢を見る。
(ここは…私の家)
見る未来は大体、自分に身近な物が多い。
だから大抵見る夢は、私の家で起こる出来事だ。
(私が家の周りを走っている…これは、誰かを探している…?)
未来の私が家の周りを駆け巡りながら、あちこちに向かって叫んでいる。何があったのだろう。
(誰かがいなくなった…でも、そんないなくなる人なんて…)
いた。
人じゃなくて、神だけど。
(そういえば、この夢。まだ一回もネルさんが出ていない)
まさか、まさか…
ネルさんがいなくなった?
夢で見た未来は、次の日の出来事である可能性が高い。つまり、私が目覚めた時には…
「………っ」
無理矢理夢から覚めて、ベットから這い出す。
カーテンを開けると、朝日が差し込んできた。
家の中、家の周り、隅々まで探す。時々、名前を呼んでみる。でも彼はいない。
そう。
私はいつの間にか、三週間を共にした彼のことを、自分の日常の一部にしていた。
私でさえも、気付かないうちに。
心に言い表せない虚無感が広がる。
寂しいわけじゃない、そんな義理もない。
この家から出ていくのも彼の勝手、私がどうこう言うことでもない。
残されていたのは、テーブルの上に置いてある、季節外れのワスレナグサだけだった。
もともと、短編として書く予定だったので、
展開が早いのです