番外編 本編後の二人
以前、ブログに掲載していた番外編です。
☆猫好き~(本編後)
――まぁ、久しぶりの再会が甘い雰囲気になるとは思わなかったけどな。
宰相邸の応接間。そこにあるふかふかのソファに俺は身を沈めていた。
腕にはじたばたと暴れる元気の良い子猫のようなサアラを抱っこして。
城でサアラと久しぶりの再会をした後に俺はサアラをかついで馬車で宰相邸へ。
皇帝より城にてゆっくり滞在をとの誘いがあったが、そこはやっぱり彼女と過ごしたいので宰相邸に宿泊。
「離しなさいっ! 変態っ!」
「俺の事もよく抱っこしてたじゃんか。それより、ちゃんと髪飾り使ってくれていたんだな。嬉しいよ」
「これは貴方からじゃなくて私の可愛い猫王子からのプレゼントっ!!」
「猫王子は俺なんだが……」
宰相に話を聞けば、サアラ的には猫王子は理想を具現化したようなレベル。そのため、サアラの好みにぴったりだったらしい。
なので、別人格として割り切られるのも無理もない気がする。極度の猫好きだし。
それでも、俺としては人間に戻れて良かったって思う。心底。
サアラに何かあれば、守られるだけではなく守る事が出来るから。
「猫の姿だとサアラの事をこんな風に俺は抱っこ出来ないぞ?」
「別にだっこなんていい。私が猫王子をだっこするから」
「そう言うと思った。でも、しばらくこうしていて欲しい。結構がんばって色々動いてなんとかルドルフ――……あぁ、今はミアか」
女性なのでルドルフという名ではなく、ミアと新しい名前を俺が付けた。
コンクェストの猫神・コアの妻であるミアの名。
彼女の加護を受け、これから落ち着いた生活が送れますようにと願って……
「ミアの件をまとめたんだよ。父上……国王すら知らなかったからさー。しかも、現段階で確認できる最高ランクの魔力。コンクェスト大揺れだよ。外交にも影響あるし。だから、褒美ちょうだい。サアラにも猫王子の時にせがまれて褒美やっただろ?」
「……混沌の魔女。あの子、どうなったの……?」
ぴたりとサアラの動きが止まった。
「ん? 名前をミアに変えて、今は姫として過ごしている。腫物を扱うような感じになるかと予想していたんだが、あの容姿と魔力目的で媚びを売る連中が押しかけてきて大変だった。だから、あまり人を寄せ付けないように離れの離宮で暮らしているよ。ストリッドが毎日訪ねてきて、物陰からミアの事を覗いている。どう接していいのかわかんないんだろうな。まぁ、でも今からだろう。全部。サアラも色々あったけど、コンクェストに来たら仲良くしてやって欲しい」
「コンクェストに行く用事なんてないわ」
「猫祭り」
「……行く」
「あと、サアラにおみやげがあるから後で開けてみて。部屋に持って行って貰ったから。コンクェストから猫グッズ」
「猫グッズ!?」
猫好きなサアラにコンクェストの名産品や宝石よりは猫グッズが一番と思ったからだ。
幸い、コンクェストは猫が有名なのでグッズも多い。
王宮も神殿も猫モチーフの物も多数。
徐々に徐々にサアラにコンクェストの良い所をアピールし、最後には婚約の件を頷いて貰うつもりでいる。
猫好きな彼女は手ごわいけど、諦めるつもりは毛頭ない――




