表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約破棄された悪役令嬢ですが、仕事を奪った王宮が先に崩れました  作者: 水城ルナ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

99/100

第99話 監察官

 「監察官だ」


 その一言で、空気が固まった。


---


 広場にいた全員が、同じ方向を見た。


---


 通りの奥。


---


 ゆっくりと、人影が現れる。


---


 急いでいない。


---


 だが、


---


 一歩ごとに、


---


 場の温度が下がっていく。


---


 黒い衣。


 整った歩調。


---


 護衛はいない。


---


 それでも、


---


 誰も近づかない。


---


 アルノーは息を呑む。


---


「……一人?」


---


「十分だ」


---


 レオンハルトが答える。


---


 短い。


---


 それだけで理解できる。


---


 “それだけで足りる存在”だ。


---


 監察官は広場の中央で止まる。


---


 視線を一度、全体に巡らせる。


---


 そして、


---


 ルシアを見る。


---


「あなたが」


---


 静かな声。


---


「ルシア・エルフェルト」


---


 名前を確認するように言う。


---


 ルシアは頷く。


---


「はい」


---


 揺れない。


---


 監察官は続ける。


---


「中央神殿の命令に従わず」


---


「独自の神託を行った」


---


 事実だけを並べる。


---


「さらに」


---


 一拍。


---


「神託官の資格を自ら放棄」


---


 広場が静まる。


---


 誰も口を挟まない。


---


 監察官は言う。


---


「確認する」


---


 短く。


---


「それで間違いないか」


---


 ルシアは答える。


---


「間違いありません」


---


 即答。


---


 迷いはない。


---


 監察官は少しだけ目を細める。


---


「理由は」


---


 問う。


---


 ルシアは言う。


---


「間に合わなかったからです」


---


 短い。


---


 だが、


---


 重い。


---


 監察官は一瞬だけ沈黙する。


---


 そして言う。


---


「神託は」


---


「間に合わせるものではない」


---


 冷たい声。


---


「示すものだ」


---


 その言葉に、


---


 空気が張り詰める。


---


 ルシアは答える。


---


「示すだけでは」


---


「人は救えません」


---


 真正面から返す。


---


 監察官の目がわずかに動く。


---


 初めて。


---


「救う必要はない」


---


 静かに言う。


---


「導けばいい」


---


 その言葉に、


---


 アルノーの胸がざわつく。


---


 違う。


---


 完全に違う。


---


 リリアーナが一歩前に出る。


---


「導かれなかった人は」


---


 静かな声。


---


「どうなりますか」


---


 監察官は彼女を見る。


---


 初めて視線が向く。


---


「選ばれなかっただけだ」


---


 即答。


---


 迷いはない。


---


 それは、


---


 カルドと同じ論理だった。


---


 アルノーの手が震える。


---


 ここに来て、


---


 はっきりと分かる。


---


 これは、


---


 思想の違いだ。


---


 ルシアが言う。


---


「それでは」


---


「同じことが繰り返されます」


---


 監察官は答える。


---


「繰り返されるべきものだ」


---


 冷たい。


---


「最適は常に一つ」


---


「そこに至らないものは淘汰される」


---


 広場の空気が凍る。


---


 誰も、


---


 すぐには言葉を出せない。


---


 その時、


---


 アルノーが言った。


---


「違います」


---


 自分でも驚くほど、


---


 自然に出た。


---


 全員の視線が集まる。


---


 監察官も見る。


---


「何が違う」


---


 短い問い。


---


 アルノーは言う。


---


「一つじゃない」


---


 息を吸う。


---


「ここでは」


---


「いくつも動いています」


---


 周囲を見る。


---


 分かれた流れ。


 働く人。


 出ていく人。


---


「全部を一つにしようとすると」


---


「崩れます」


---


 監察官は黙る。


---


 聞いている。


---


「だから」


---


「分けている」


---


 アルノーは言い切る。


---


「それでも動いてます」


---


 事実。


---


 監察官の目がわずかに細くなる。


---


「非効率だ」


---


 短く言う。


---


「無駄が多い」


---


 アルノーは頷く。


---


「はい」


---


 認める。


---


「でも」


---


「壊れてません」


---


 沈黙。


---


 その言葉は、


---


 強かった。


---


 監察官は周囲を見る。


---


 確かに、


---


 崩壊はしていない。


---


 完全ではない。


---


 だが、


---


 維持されている。


---


「……暫定だ」


---


 低く言う。


---


「いずれ崩れる」


---


 アルノーは言う。


---


「なら」


---


「その時また選びます」


---


 即答だった。


---


 迷いはない。


---


 監察官の視線が変わる。


---


 少しだけ。


---


「……なるほど」


---


 小さく言う。


---


 そして、


---


 一歩引く。


---


「報告する」


---


 それだけだった。


---


 処罰はない。


---


 強制もない。


---


 ただ、


---


 持ち帰る。


---


 その意味は重い。


---


 広場に空気が戻る。


---


 アルノーは大きく息を吐く。


---


「……終わった?」


---


「いいえ」


---


 リリアーナは答える。


---


「これで」


---


 一拍。


---


「始まります」


---


 その言葉と同時に、


---


 遠くで鐘が鳴る。


---


 別の都市。


---


 同じ対話。


---


 同じ選択。


---


 そして、


---


 同じ対立。


---


 それが、


---


 広がっていく。

ついに「中央」との直接対話が始まりました。


ここは大きな分岐点で、

単なる対立ではなく「思想のぶつかり合い」になっています。


アルノーが完全に“当事者”になったのも重要なポイントです。


ここから先は、局地ではなく“構造そのものの戦い”になります。


ここまで読んでいただきありがとうございます。

面白いと感じていただけたら、ブックマークや評価で応援いただけると嬉しいです。


次話では、この対立がどう広がるのかが描かれます。

ぜひお楽しみに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ