第97話 選ばれない選択
「異端指定を開始しました」
その言葉が、遅れて重く落ちてくる。
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広場にいる誰もが、理解するまでに時間がかかった。
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異端。
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それは、
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否定ではない。
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**排除の始まり**だ。
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アルノーの喉が乾く。
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「……対象は」
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自分でも分かっている。
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だが、聞かずにはいられない。
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使者は答える。
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「独自判断を行う神託官」
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一拍。
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「及び」
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全員の視線が動く。
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「それに従う者」
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沈黙。
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完全に、
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巻き込まれた。
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アルノーの手がわずかに震える。
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自分も対象だ。
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もう、
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外にはいない。
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その時、
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ざわめきが広がる。
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「ふざけるな」
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誰かが言う。
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「こっちは生きるためにやってるんだ」
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別の声が重なる。
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「それを異端だと?」
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怒り。
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だが、
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前とは違う。
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向いている方向が違う。
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今は、
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明確な対象がある。
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中央。
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ルシアは静かに立っている。
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少しだけ目を閉じる。
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そして開く。
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「……構いません」
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静かな声。
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だが、
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はっきりと。
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アルノーが振り向く。
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「構わないって」
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言葉が続かない。
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ルシアは答える。
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「私は」
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「もう、神託官ではありません」
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事実。
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だから、
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「異端でも」
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「問題ありません」
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その言葉に、
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アルノーの胸が強く揺れる。
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それは、
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覚悟だった。
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だが、
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簡単ではない。
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「……俺たちは」
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思わず言葉が出る。
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「どうなるんですか」
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ルシアは少しだけ考える。
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そして言う。
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「選べます」
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短い答え。
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「離れることも」
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「残ることも」
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その言葉は、
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冷たくもあり、
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優しくもあった。
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強制しない。
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だが、
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守らない。
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アルノーは拳を握る。
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怖い。
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当然だ。
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異端。
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それは、
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“安全圏”から外れること。
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だが、
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その時、
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あの若い男が言う。
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「残る」
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短い言葉。
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迷いはない。
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「どうせ外でも同じだ」
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少し笑う。
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「なら」
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「ここでやる」
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アルノーの胸が熱くなる。
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それは、
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昨日の言葉の続きだった。
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他にも、
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声が上がる。
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「……俺も」
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「私も」
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少しずつ。
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だが、
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確実に。
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残る者が、
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選んでいる。
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その時、
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レオンハルトが言う。
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「……愚かだな」
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低い声。
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だが、
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否定ではない。
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「守られる場所を捨てるとは」
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アルノーは言う。
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「守られてないです」
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思わず出た言葉。
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だが、
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止まらない。
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「昨日」
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「守られませんでした」
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沈黙。
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レオンハルトの目がわずかに動く。
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否定できない。
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その時、
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リリアーナが言う。
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「安全は」
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静かな声。
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「常に後から与えられるものです」
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全員が彼女を見る。
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「先にあるものではありません」
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アルノーはその言葉を聞く。
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理解する。
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今、自分たちは、
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安全ではない。
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だが、
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ここから作る。
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その時、
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使者が言う。
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「……警告は伝えた」
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それだけだった。
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去る。
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止めない。
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だが、
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見逃さない。
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その態度が、
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逆に重い。
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アルノーは息を吐く。
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終わりではない。
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だが、
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戻る道は消えた。
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その時、
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リリアーナが言う。
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「選びましたね」
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アルノーは頷く。
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「はい」
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迷いはない。
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怖さはある。
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だが、
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それでも。
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その時、
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遠くで鐘が鳴る。
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また別の都市。
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同じ選択。
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同じ分岐。
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そして、
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同じように、
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誰かが選んでいる。
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アルノーは空を見る。
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煙の向こう。
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星は見えない。
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だが、
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関係ない。
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もう、
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見上げるだけでは、
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足りない。
ここでついに「残るか、離れるか」という明確な選択が描かれました。
重要なのは、強制ではなく“自分で選んだ”という点です。
これにより物語の軸は完全に「主体性」に移っています。
そして中央との対立は、もう後戻りできない段階に入りました。
ここからは一気に緊張感が上がっていきます。
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次話もぜひお楽しみに。




