第93話 波及する選択
「リュミアで同様の混乱が発生!」
その言葉が、遅れて現実になる。
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広場の空気が一気に変わった。
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「……もう一つじゃない」
アルノーが呟く。
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ヴェルクだけではない。
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同じことが、
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別の都市でも起きている。
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リリアーナは静かに言う。
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「広がりましたね」
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それだけだった。
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だが、その一言が重い。
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昨日までの問題ではない。
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今は、
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“現象”だ。
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その時、別の声が上がる。
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「じゃあどうする!」
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誰かが叫ぶ。
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「ヴェルクだけでも手一杯なのに!」
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当然だった。
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アルノーは答えられない。
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自分が整理したのは、
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この場だけ。
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他の都市までは、
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届かない。
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ルシアが一歩前に出る。
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「神託を広げます」
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短く言う。
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全員の視線が集まる。
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「各都市に」
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「同じ指針を送ります」
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ざわめき。
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「同じことが起きるだけじゃないのか!」
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声が飛ぶ。
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ルシアは頷く。
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「可能性はあります」
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否定しない。
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そのまま続ける。
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「ですが」
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「何も示さなければ」
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「もっと崩れます」
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正論だった。
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だが、
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不完全でもある。
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レオンハルトが言う。
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「軍も動かす」
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短い言葉。
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「主要都市に部隊を配置」
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「同様の封鎖を行う」
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アルノーが息を呑む。
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「それは……」
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「連鎖的に抑える」
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レオンハルトは言い切る。
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効率的。
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だが、
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強制だ。
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リリアーナが言う。
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「それでは」
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「同じことが繰り返されます」
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視線が交わる。
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神託。
力。
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そして、
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その間に立つもの。
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アルノーは拳を握る。
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「……やるしかない」
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小さく言う。
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誰にでもない。
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だが、
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聞こえる。
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「何をだ」
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レオンハルトが問う。
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アルノーは顔を上げる。
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「繋げます」
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短く言う。
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「各都市の状況を」
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「共有して」
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「同じ形を作る」
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沈黙。
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リリアーナの目がわずかに動く。
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それは、
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彼女のやり方だった。
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だが、
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今は違う。
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アルノーが言っている。
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「情報を繋ぐ?」
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レオンハルトが言う。
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「間に合うのか」
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「分かりません」
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アルノーは正直に答える。
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「でも」
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「やらなければ」
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「全部、同じになります」
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沈黙。
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その言葉の意味は重い。
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神託だけでも、
力だけでも、
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同じ崩れ方をする。
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だから、
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別の方法が必要だ。
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レオンハルトは少しだけ考える。
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そして言う。
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「……許可する」
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短い言葉。
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「だが」
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「時間はやらん」
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それだけだった。
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アルノーは頷く。
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「十分です」
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初めてだった。
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“自分の役割”を自分で引き受けたのは。
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その時、
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ルシアが言う。
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「私も協力します」
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アルノーが振り向く。
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「神託を」
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「調整します」
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それは、
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変化だった。
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神託が、
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固定ではなくなる。
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人と連動する。
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リリアーナは小さく頷く。
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「良い形です」
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その一言で、
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場が少しだけ落ち着く。
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完全ではない。
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だが、
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進む方向が見えた。
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その時、
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使者がもう一度叫ぶ。
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「追加報告!」
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全員が振り向く。
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「王都でも」
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「同様の動きが確認されました!」
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沈黙。
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アルノーの背筋が凍る。
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都市ではない。
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王都。
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中心。
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そこまで、
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広がった。
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リリアーナが静かに言う。
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「……もう」
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一度、目を閉じる。
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「局地ではありません」
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開く。
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その目は、
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変わっていない。
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「これは」
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「世界の問題です」
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誰も否定できなかった。
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ヴェルクから始まったものは、
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もう止まらない。
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そして、
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どこまで広がるのか、
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誰も知らない。
ここでついに“世界規模”に入りました。
ヴェルクの問題は、局地的な事件ではなく
「構造そのもの」だったことが明確になっています。
アルノーが一歩進み、
ルシアも変わり始め、
そしてリリアーナの役割も変化していきます。
ここから一気にスケールが上がりますので、
ぜひこの先も見届けてください。
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次話もお楽しみに。




