第76話 王国の視線
都市連盟に神託が入り始めたという報せは、神殿だけで止まらなかった。
王都にも届いている。
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王都。
石造りの広間に、地図が広げられていた。
都市連盟の位置。
交易路。
そして星導教の影響圏。
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「広がりが早いな」
低い声が響く。
レオンハルト・ガルド。
王国軍の将軍だった。
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彼は地図の上に指を置く。
「ここがリュミア」
「交易の要所」
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「そこに神託が入った」
補佐官が言う。
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「はい」
「港の優先順位や税制に影響が出ています」
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レオンハルトはしばらく黙る。
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「戦争は起きていないな」
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「はい」
補佐官は答える。
「むしろ摩擦は減っています」
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それが問題だった。
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「厄介だな」
レオンハルトは呟く。
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「争いを起こすなら、対処は簡単だ」
「だが」
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「争いを減らす思想は、止めにくい」
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広間の空気が重くなる。
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「星導教は宗教です」
別の官僚が言う。
「軍が動く理由にはなりません」
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「分かっている」
レオンハルトは短く答える。
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「だが」
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地図の上の線をなぞる。
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「このままいけば」
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「いずれ王国の決定にも、口を出す」
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沈黙。
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補佐官が慎重に言う。
「対抗策は」
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レオンハルトは少し考える。
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「情報だ」
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「そして」
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「人だ」
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彼は顔を上げる。
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「整理役」
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その言葉に、補佐官が反応する。
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「都市連盟で動いている……」
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「リリアーナ・ヴァルセイン」
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レオンハルトは頷く。
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「神託と逆の思想を持つ」
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「迷いを前提にする人間」
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それが今、
唯一の対抗軸だった。
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「接触しますか」
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「する」
即答だった。
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「敵か味方かは関係ない」
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「だが」
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「無視はできない」
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王都の窓の外には夕焼けが広がっていた。
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同じ空の下で、
神託が広がり、
都市が揺れ、
王国が動き始める。
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星はただそこにあるだけだ。
だが人は、
その意味を変え始めていた。
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