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婚約破棄された悪役令嬢ですが、仕事を奪った王宮が先に崩れました  作者: 水城ルナ


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第1話 完璧な婚約者

この物語は、

婚約破棄された悪役令嬢が感情的に復讐する話ではありません。


主人公は泣きません。

声を荒げません。

その場でざまぁもしません。


彼女がしたのは、

役目を終えた場所から、静かに去っただけです。


その結果、

切った側が「何を失ったのか」に

遅れて気づいていく物語になります。


・復縁なし

・主人公は最後まで冷静

・ざまぁは少しずつ効きます


ゆっくりとした逆転をお楽しみください。

 王宮の控えの間は、いつもより空気が重かった。

 それでも、リリアーナ・エヴァレットは背筋を伸ばし、静かに立っている。


 ――今日も、問題は起きなかった。


 第一王子アルベルトの発言が、社交上ぎりぎり危険な線を踏みかけた瞬間、彼女は一歩前に出て話題を変えた。

 貴族たちの表情が緩み、場は何事もなかったかのように流れていく。


 それを見て、リリアーナは内心で小さく確認する。


 (調整完了。追加の火種なし)


 彼女にとって、それは感情を伴わない作業だった。

 王子の婚約者として、王家の信用を守る。

 それだけのこと。


「リリアーナ、助かったよ」


 控えの間に戻るなり、アルベルトが笑顔で言った。

 悪気のない、いつもの声音。


「当然です。婚約者としての務めですから」


 リリアーナは微笑み、淡々と返す。

 それ以上でも、それ以下でもない。


 アルベルトは満足そうに頷き、すぐに次の予定の話を始めた。

 まるで、今の場を成立させたのが誰だったのか、考えもしないように。


 ――それでいい。


 期待しなければ、失望もしない。

 彼女はそうやって、長い間ここに立ってきた。


 そこへ、扉が静かに開く。


「失礼します……アルベルト様」


 少し控えめな声。

 振り返った先に立っていたのは、白を基調とした衣を纏う少女だった。


 エミリア・ノース。

 つい先日、“聖女”として認定された存在。


 アルベルトの表情が、一瞬で変わる。

 わかりやすいほどに、柔らかく、期待を含んだ顔。


「エミリア、どうしたんだい?」


「その……ご迷惑でなければ、お話を……」


 彼女は遠慮がちに視線を伏せる。

 その仕草一つで、場の空気が自然と彼女に寄っていく。


 リリアーナは、それを黙って見ていた。


 (――ああ)


 理解は、早かった。


 この国は、物語が好きだ。

 救う者と、救われる者。

 光と、影。


 そして今、目の前に現れた聖女は――

 誰もが“正しさ”を投影したくなる存在だった。


「もちろんだ。リリアーナ、少し席を外してもいいかな?」


 アルベルトの言葉に、含みはない。

 ただ、当然のようにそう言っただけ。


「ええ。どうぞ」


 リリアーナは即座に一礼する。

 止める理由はなかった。


 彼女が控えの間を出ると、背後で楽しげな声が重なった。

 それを聞きながらも、歩調は変えない。


 (……そう)


 役割が、変わるだけ。


 自分は婚約者という立場で、十分に仕事をした。

 ならば次は、その“後”を想定するだけだ。


 廊下の窓から差し込む光が、床に長い影を落とす。

 その中を歩きながら、リリアーナは静かに思考を切り替えた。


 (切られる前提で、動こう)


 それは悲観でも、怒りでもない。

 ただの、現実的な判断だった。


 彼女の表情は、最後まで変わらなかった。

ここまでご覧いただきありがとうございます。


当面の間は、1日に3話を投稿予定です。


ブックマークをして、続きを楽しみにお待ちいただけると嬉しいです。

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