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幕間 本当の狙い

「マスター、お疲れ様でした」


 会議室から翔英達が去った後、笹さんがギルドマスターに言う。


「でもマスター、彼で良いのですか?」

「良いとは?」

「彼に何かなせるとは思えないのですが」

「ええ、その通りだと私も思います。正直に言えば、ショーエイ君には何も期待していません。レオネラさんがいれば、エーカちゃんは無事に逃がしてくれるでしょうから、特に心配もしていませんよ」


 ギルドマスターはカップに入った水を飲みながら言う。


「では直轄のチームと言うのは?」

「それは本当です。その役目もね」


 軽く伸びをしながら、軽く答える。


「ここでの話の中で、チームリーダーになるはずのショーエイ君はまったく積極的な発言はありませんでした。こう言うとなんですが、ショーエイ君はまだまだ蛹にもなれていない幼虫です。と言うか、卵から孵っているかすら怪しいです。ショーエイ君、レオネラさん、エーカちゃん、あと沼のデデレデさんの四人の中で考えるとショーエイ君は群を抜いて一番役に立たないでしょうね」

「凄い評価ですね」

「妥当だと思いますよ。それでもショーエイ君が周りから評価されているのは、彼がどうこうではなく、彼の持つアドバンス・ウェポンが別格だからです。あんなお荷物なのにティガーやレッドブルを倒したと言うのは事実ですから、あの武器にはそれほどの力があると言う事です。武器の性能だけで言えば、笹さんや隊長の武器を遥かに上回る性能ですよ。笹さんや隊長の武器を持っていたとしての、あのショーエイ君ではレッドブルどころかオーク退治もまともに出来ないでしょう」

「そんな人物にチームを任せるのですか?」

「そんな人物だからチームを任せるんですよ。アドバンス・ウェポンには数も種類も無数にありますけど、ショーエイ君の持っている武器には心当たりがあります。アドバンス・ウェポンの使用者はその適正のある人物で、おそらくショーエイ君はあの武器の使用者としては歴代でもっとも適した人物でしょう」


 ギルドマスターの言葉に笹さんは眉を寄せる。


「詳しいんですか?」

「まあ、私はここに来て長いですからね。ショーエイ君の武器は使用者を操る能力を持っています。ただし、支配力は強くない。なので、ショーエイ君みたいに怠け者で意思が弱く流されやすい人物である必要があるんです。チームは言わば足枷ですよ。そうでもしないと、ショーエイ君は武器に流されてすぐに死んでしまうでしょう。せっかくの強力な玩具ですからね。とことん遊びつくさないと」

「時々感じますけど、マスターって怖いところがありますよね?」

「私なんて可愛いモノですよ。他の街のマスターと比べれば、ね」

「他の街のマスターを知っているのですか?」


 笹さんの質問に、ギルドマスターは笑顔で頷く。


「孫子は、攻めるのは守りの備えが整ってからと言っています。笹さんと隊長の選抜隊で守りの体勢は整いました。ショーエイ君は斥候としては使い勝手良いコマですから、役に立ってもらわないと」

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