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第三十八話 ギルドマスターの思惑

「まあ、ゲームはしてますけど、ワンタウンって何ですか?」

「一箇所の拠点で行うモノとでも思ってください。ダンジョン物とか狩ゲーとかに多いんですが、この世界もおおよそそれに近いんです。拠点周辺から離れるほど敵は強くなり、街と街の間はこの世界で最速の乗り物であっても二、三日かかります。徒歩だと二週間くらいですね。つまり、その拠点毎に切り離された世界と言えます」

「その割には詳しいね」


 レオネラが訝しそうに言う。


「マスターの立場になれば、色々と知る機会があります。マスターになってみますか?」


 マスターの質問に、レオネラも翔英も首を振る。


「で、私の直属の部隊にはいずれ他の街との接触を行って欲しいと思っています。だから個々の能力が高くないと話になりません。どうですか?」

「ショーエイはともかく、私はどうなのさ。そこの奴らとの戦闘にも手に負えないってのに」

「相性の問題ですよ。レオネラさんの得意分野はおそらくショーエイ君の苦手分野になりそうですから、チームとしては良いバランスになると思いますよ」

「私がいれば十分よ」


 デデレデが割って入る。

 少なくともギルドマスターの言葉はデデレデにも通じているので、割って入る。

 デデレデはレオネラと比べられるが嫌みたいだ。


「そうそう、貴女にもショーエイ君のチームに加わってもらう予定です。で、これを用意しました」


 ギルドマスターはそう言うとローブの中から、首輪のようなモノを取り出す。


「人型に使うようにはできていないので見た目にはかなりアレになりますけど、これを首に巻いておけば言葉が通じるようになります。隊長の騎獣に使っているモノですけど、見た事ありますか?」

「ありません。それに首輪って……」


 翔英がギルドマスターに言う。


「いや、仕方が無いですよ。魔物を手懐ける為のアイテムなんですけど、あくまでも騎獣用に作られたものですから、人型に使う事なんて想定外なんです。でも意思の疎通には非常に役に立つモノですよ」


 そうやって言い訳しているが、このヒトの事だから別の形状のアイテムがあったとしても首輪の方を渡してきそうだ。

 エーカの態度を楽しんでいるフシもあるのでドMかとも思えるが、その正体はかなりのドSではないかと翔英は疑っている。


「さ、ショーエイ君、彼女の首に巻いてやって下さい。これでチームとして機能出来るようになりますから」

「それがあれば、私の言葉が通じる事になるのね。それじゃショーエー、お願いするわ」


 デデレデはそう言うと、目を閉じて顎を上げる。


「美少女に首輪を付けるって、萌えるシチュエーションですね」


 ギルドマスターはニヤニヤしているが、翔英にはそんな趣味は無い。

 とは言え、デデレデの言葉を同時通訳しなくて済むし、ギルドマスターは絶対譲ろうとしないだろう。

 仕方が無いので、デデレデの首に首輪を巻こうとする。


「それくらい自分でやらせれば良いんじゃないか? 甘えてるのか、イチャ付こうとしてるのか」


 レオネラはそう言っているが、今はまだ言葉は通じていないので揉め事にはならない。

 コレ、大丈夫なのか、と言う不安がよぎる。


「どうしたの?」


 デデレデが目を開けて不思議そうに首をかしげる。


「いえ、これで話が出来るようになりますから、まずは話し合いをしましょう。殴り合いとかじゃなくて」

「もちろんよ。当たり前でしょ?」


 さも当然と言わんばかりであるが、これまでのデデレデの行動は口より先に手が出ていたと言うのも気になる。

 すこぶる心配であったが、デデレデの細い首に首輪を巻く。


「苦しくないですか?」

「ええ、大丈夫」

「うおっ! 本当に言葉が分かる!」


 デデレデの声を聞いて、レオネラが驚いている。


「言ってみればペットみたいなモノですね。お供ネコとかNPC的なアレです。良かったですね、ショーエイ君」

「ははは、ペットか。そりゃ良いや」


 ギルドマスターの言葉にレオネラが乗っかるが、デデレデは一瞬表情を険しくしたものの、首輪をなでるとそのまま大人しくイスに座って腕を組む。


「それではショーエイ君、レオネラさん、あと沼の……」

「デデレデよ」

「デデレデさん。貴方達が私直属のチームになります。よろしいですね?」

「わたしを忘れてますぅ」


 エーカが言う。


「わたしもしょーえーのチームれすぅ。わたち、ちょーつよいれすよ」

「確かにそんな事言ってたね。私は賛成だけど」


 やる気になっているエーカに、レオネラは賛同している。


「そんなに小さいのが役に立つの?」

「ちょーつよいれすぅ。あんたなんて指一本れギャフンと言わせるれすぅ」


 デデレデに対しエーカは拳を突き出して言う。

 もちろんその手は届いていないのだが、エーカは絶対譲ろうとしない。


「ねー、しょーえー。わたしもチームれすよね?」

「え? あ、ええ、もちろん」

「ほら! 聞いたれしょ? ほら!」

「良かったな、エーカ」


 レオネラに言われ、エーカはニコニコしている。


「エーカちゃん込みでフォーマンセル。ショーエイ君としてはチームとしてしっくり来る人数になりましたよ。チームリーダーはショーエイ君です」

「え? 僕?」

「他に誰がいるんですか? 他のメンバーでリーダー候補がいますか?」

「私はショーエー以外に従う気は無いわよ」


 デデレデが最初に言う。


「私もショーエイならともかく、沼女の指示に従う気は無いわね」

「しょーえーしかいないれしょ?」

「満場一致ですね。ショーエイハーレム完成です。死ねばいいのに」


 笑顔でギルドマスターがとんでもない事を言う。


「ショーエイ君、この世界のルールは『何もしないモノは何も得られない』と言う分かり易いモノですよ。君が何もせずにショーエイハーレムを維持できると思っていれば、それこそ爆発してしまえって話です」

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