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第三十六話 結果発表

「ようやく揃いましたね、と言いたいところですけど一名多いし、一名ボコボコなのが凄く気になりますね。実にいい気味です」


 ギルドマスターは本当に楽しそうだ。

 よほど翔英の不幸が楽しそうである。

 一応翔英もシャワーを浴びる事は出来たので汚れは落とす事は出来たが、ダメージは大きくなっている。

 ここに集合出来たのはエーカのお陰であった。

 そのためエーカもかなりお疲れだし、デデレデとエーカはにらみ合っている。

 ただでさえ敵扱いを受けているデデレデなのに、この場でデデレデを味方だと思っているのは翔英くらいだ。

 もちろんデデレデにその危機感があれば回避も出来そうなモノなのだが、彼女は負けないくらいに敵意剥き出しで周りを睨みつけている。

 凄くハラハラするのだが、この場には翔英やエーカ、デデレデの他に射手と魔術師、大女の選抜試験のメンバー。

 左右の受付にはウェテトーレとローブの男。

 その他には、ギルドマスターの左右に見覚えの無い男女が控えていた。

 男性の方は大女のように大きく見えると言う事ではなく、物理的にデカい。

 ギルドマスターと翔英は体型的に似ているが、男性は頭ひとつ分以上大きいし、肩幅や体の厚みも一回り以上大きい。

 そのデカい体を漆黒のゴツイ鎧に包み、さらに自身の身長より長く肩幅近くの幅広な剣を背負っている。

 まず間違いなく彼が『隊長』だろう。

 女性の方は比較的小柄で、丸顔の童顔に丸い眼鏡の女性だ。

 ギルドマスターと同じローブ姿で、ウェテトーレやデデレデのような美少女が同じ部屋にいると言う事を別にしても、かなりの地味顔といっても良い。

 本人が知れば、翔英には言われたくないと言うだろう。

 おそらく彼女が『笹さん』ではないかと思う。

 翔英としては情報は無いため確認は出来ないが、エーカ辺りに聞けばすぐに分かる事でもある。

 が、今はさすがに私語を慎むところだと思う。


「さて、それでは今回の選抜結果を隊長から発表していただきましょう。では隊長、よろしくお願いします」

「では、名前を呼ぶ。レオネラ」

「あ? 私?」


 呼ばれると思っていなかった大女が、首を傾げて答える。


「君は今回の試験から降りたとはいえ、君は無謀な賭けに出ずに降りると言う勇気ある決断を行った。合格とは言えないが、俺はその点を高く評価している。もし次に選抜を行う際にも君を候補に上げようと思う」

「それはどうも」


 大女、レオネラは大して有難いとも思っていないみたいな答え方である。

 元々彼女は一度生産者に回った事もあると言っていたし、選抜隊と言うのに強い魅力を感じていないのだ。

 それは翔英も同じだった。


「さて、残る三人のお陰で沼の一族の無力化には成功したと言っていい。何しろ集落はすでにもぬけの殻になっていたのだからな」

「え?」


 翔英は思わず声を上げてデデレデの方を見るが、デデレデは翔英の視線に気付いてもそっぽを向いて答えない。

 ある意味では彼女の好きな態度と言えなくも無い。


「そこの彼女からは何も聞いていないのか?」


 隊長は翔英に尋ねる。


「え? あ、いや、僕は何も」

「そうか。では、話の流れから言わせてもらう。ショーエイ、君の戦果は大したモノだ。今回もレッドブルを討伐しているのだろう?」

「そうれす。これが証拠れすぅ」


 エーカが誇らしげに、翔英が持って帰ってきた牛の角を持ち上げて言う。

 宿に置いてきたと思っていたが、エーカは勝手に持ってきたみたいだ。

 微笑ましい限りであるが、今は大人しくしていて欲しい。


「見事なものだ。レッドブルは新米が倒せるような魔物じゃない。相当慣れたモノがチームで当たらないと戦えないし、犠牲も出るくらいなのに、大したものだ」


 隊長は手放しに褒めている。

 赤い眼の剣の話では、あの牛は夜の魔物の中では標準的な強さだと言っていたが、それでもチームでないと戦えないらしい。

 ティガーの時にも同じような事を言われたが、それで考えると赤い眼の剣の戦闘能力は翔英の想像をさらに上回っている。

 赤い眼の剣は接近戦において自分に勝てるモノはいないと豪語していたが、それも案外言い過ぎではなさそうだ。


「テレックリット、アーモンだったな」


 隊長は射手と魔術師を呼ぶ。


「お前達二人が合格だ。俺について来い。選抜隊の事を教えてやる」


 隊長の言葉に、全員が言葉を失っていた。

 正直に言うと、翔英ですら驚きのあまり反応出来なくなっていた。

 翔英は嘘偽りなく、選抜隊に入りたいとは思っていなかった。と言うより今も思っていない。

 だが、今回の事に関して言えば翔英は他のメンバーとは比べ物にならない実績を上げていたので、選抜隊入りは間違いなしだと諦めていた。

 沼の一族はあの集落から消えたらしいが、デデレデの反応を見る限りでは彼女はそれを知っていたみたいだ。

 つまりあの牛と戦った夜、デデレデは翔英と一緒に戦っていたがその後方では沼の一族は退去していたと言う事だ。

 それは翔英の手柄であっても、あの射手や魔術師の手柄ではない。


「どういう事? 何故ショーエーじゃなくて、そいつらなの?」


 何故か食いついたのはデデレデだった。


「そいつらはショーエーに手も足も出ずに尻尾を巻いて逃げ出した奴らよ?」


 デデレデが隊長に噛み付いていくが、隊長はまったく聞く耳を持たない。


「では、二人は俺について来い」

「ちょっと待って」


 デデレデが隊長の方へ行こうとした時、意外な人物がデデレデの前に立ちはだかった。

 丸顔眼鏡の女性が、光る剣をデデレデの前に突き出していた。


「ショーエイ君がいるから押さえているけど、貴女に発言する権利は無いのよ」

「さささん?」


 その行動は彼女をよく知っているエーカでも驚いている。

 その様子を見ながら、隊長と射手と魔術師はどこかへ行く。

 その間、笹さんと呼ばれる丸顔眼鏡は光の剣をデデレデに向けたままピクリとも動かない。

 あの剣は魔物の素材で作られたモノとは思えないので、おそらく彼女が持つアドバンス・ウェポンだろう。


(めっちゃカッコイイ。イイよな、僕の剣は呪われてそうだし、口も悪いし。僕のと交換してくれないかな)


 翔英はそう思ったりもしたが、見た目には素晴らしい一品だったとしても赤い眼の剣のように翔英を操ってくれるか分からない。

 そしてその能力が無いと、翔英は戦う事も出来ないのだから。


「さて、それでは詳しい話をしましょうか。笹さんも剣を収めてください。エーカちゃんもウェテちゃんも驚いてるし、怖がってますよ」


 ギルドマスターはまったく平然として言うと、笹さんの向けている光の剣の光る刀身は消えて、手の中に柄だけが残る。


(ライトセーバーだ。やべ、超カッコイイ。僕、大ファンだし)


 翔英は笹さんを見ていたが、笹さんは何事も無かったみたいにギルドマスターの傍らに控える。


「では何故ショーエイ君が落ちたのか、説明しましょう。そうじゃないと、そこの彼女がまたブチ切れそうだし。二階に行きましょう。ウェテちゃん、と笹さん、飲み物をよろしくお願いしますね」

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