第60話
前回のあらすじ
ハルトは、神殿で使徒の任命式をやっている。
神殿で、ガイア様に会い、浄化の魔法を教わった。
それでは、よろしくお願いします。
ガイア様への祈りが終わり、皆に向かってガイア様の言葉を伝えないといけないが、何も言葉を貰ってなかった。
ちょっと、失敗したなと思ったが、皆に向かい、
「ガイア様から王都風邪について、御言葉でなく魔法を戴いた。」
と言い、浄化魔法を発動させ、
「浄化」
と唱える。
すると、私の身体を中心として、激しく光り輝き、その光が王都全体を超えて包み込み、半径5kmの半球状の光の球になり、そして消えた。
「ただいま、ガイア様に代わって、浄化魔法を使いました。これで王都に住まう者で、王都風邪を患っている者は、完治したでしょう。」
と宣言した。
すると教皇が、間髪を入れず、
「これぞ、神の奇跡だ。使徒様は、ガイア様の代行者となり、皆に祝福を与えた。」
と、皆を煽ったと思ったら、その後、自然な流れで、宗教染みた訓育を皆に行った。
「流石、アドリブ上手いな。流石、人の上に立つ人は違うな。」
と思った。
式典が終わった後、控室に戻り、イザベラ達と合流した。
イザベラの顔を見ると安心する。
アメリアが、
「凄かったよー!」
と言って抱き着いてきたので、頬を擦り付けて抱きしめた。
「久々の充電だー。」
と言うと、
「ぎゃー、充電されたー!」
とアメリアが叫ぶ。
「本当に幸せだ。」
すると、控室に教皇と大司教が入ってきた。
社交辞令的な挨拶を済ませた後、教皇が、
「ヴィンツハイム神聖国にも御越し下さい。何も無い小さな国ですが、平和なところです。」
というので、
「そうですね。学院が休みになったら、皆で旅行がてら行きましょうか。」
と返答したら、教皇は大いに喜んでいた。
大司教が、教皇に対し、
「教皇様、ハルト様を神聖国で囲おう等と、邪な事を考えていませんよね。」
と、笑いながら釘をさすと、教皇は、
「何を失礼なことを。教皇が邪な訳が無いだろう。大司教も焼きが回ったんじゃないか。」
と、笑顔で言い返す。
何とも、ジジー同士、仲が良さげだ。
ヴィンツハイム神聖国の教皇は、ヴィンツハイム教のトップであり、組織として考えれば、大司教は教皇の部下に当たる。
しかし、ドルトムントの大司教は、エスリンゲン国の国王から大司教を任命されている。
教皇には、他国の神殿や教会に対する人事権が無い。
予算も、独立採算らしい。
つまり、ヴィンツハイム神聖国から、完全に独立しているという訳だ。
大司教は、エスリンゲン国におけるヴィンツハイム教のトップである。
そのため、教皇との力関係としては、実際には対等な関係に近い。
教会と冒険者ギルドが、国から完全に独立している話もあるが、このアヴァロンでは国の支配下にある。
「では、ヴィンツハイム神聖国にいらっしゃる日程が決まったら、ご連絡下さい。大司教に言って戴ければ、こちらにも伝わりますので。」
と言って、御付きの者と一緒に部屋を出て行った。
大司教は部屋に残り、
「ハルト様、これでハルト様は使徒に任ぜられ、エスリンゲン国の公爵待遇になられました。できれば、貴族街に変わって戴きたいのですが。宜しいですか。」
と言うが、
「どこか、良い場所は有るのか。引っ越すなら、新しく家を建てたい。」
と言うと、
「判りました。良い場所を手配いたします。」
と言うので、大司教との話も終わり、家に帰る事にした。
自宅に着きリビングで、皆が集まっている時、
「そういえば、アイビィーは今日も居ないな。珍しいな。」
とイザベラに言うと、
「貴賓席に居ましたよ。でも、侯爵様と一緒に帰られたようですね。」
と言う。
「喧嘩でもしたの?」
とイザベラに聞くと、
「違いますよ。アイビィーも婚約する様で、その話とか色々とあるみたいです。」
と言う。
そうか、アイビィーも15歳だからな。そういう歳なんだな。この世界は。
イザベラが、オリビアに
「オリビアちゃんも、5、6年もすると、婚約するのかな。」
と言うので、私が横から
「いやいや、私に勝てる男じゃなきゃ、嫁にやらん。」
と強く言ったら、オリビアに
「じゃぁ、結婚できないじゃん。」
と、真顔で怒られた。
「いや、そんな事は無い。愛が有れば勝てる。」
と言ったら、オリビアに
「じゃぁ、私が後ろから刺すよ。」
と真顔で言われた。
「もう、パパの負けです。」
と言って、降参した。
昼食の後、冒険者ギルドに行くことにした。
ギルドに着くと、受付にはエミリーが座っていた。
「エミリー、もう体調は良いのかい。」
と聞くと、
「はい、先々週から、出てきてますよ。ありがとうございます。」
と返答した。
「ああ、もう2週間も経つのか。ところで、ギルドマスターは居るかい。」
と聞くと、
「少々、お待ちください。」
と言って、エミリーは別室へ伺いに行った。
「貴方が、ハルトさんか。」
と後ろから、男に声を掛けられた。
振り向くと、25歳の位の剣士と思われる男のほか、男女5人のパーティメンバーが居た。
「ハルトだが、何か用か。」
と言うと、その男が
「さっきの観てたぜ。使徒様なんだよな。浄化の魔法って凄いね。」
と言うので、浄化が希望なのかと思い、
「ああ、浄化は神殿でしか使えないよ。」
と言っておいた。
その25歳位の剣士は、
「初めまして。俺の名は『アーチー』という。王都を中心に活動しているAランクパーティのリーダーをしている。」
と言った。
そのパーティの魔法師と思われる25歳位の女が、
「もし、良かったら、私達のパーティに入らない。」
と言う。
パーティメンバーへの勧誘だった。
こういうの初めてだな。
「依頼が困難で助けが欲しいなら、臨時で付き合ってやっても良いが、正式なメンバーっていうのは、遠慮しておくよ。」
と言って、やんわりと断った。
「はぁ、助けが欲しいって・・・あんた、ただの回復職だろ。」
と、そのパーティの剣士が言うので、
「私は、魔法剣士だ。回復職ではない。あと、回復職を馬鹿にするな。」
と言って注意した。
すると、リーダーのアーチーが、
「そうですか。残念です。」
と言って、あっさりと引き下がったが、さっき食い付いてきた剣士は、私に向かって、
「ちょっと、勝負しろよ。馬鹿にされて黙ってられるか。」
と言うので、
「馬鹿になどしていない。私一人でも、君ら6人より強い。それだけの差があるという事だ。君らレベルが100人いても、私には勝てない。その差も判らないのは、冒険者として致命的だと思うよ。」
と言って、優しく諭してあげた。
すると、その剣士は顔を真っ赤にして、
「訓練場に来い。勝負だ。」
と言って、息まき出した。
アーチーの顔を見るが、
「そこまで言うなら、その実力を見せて貰っても良いですか。」
と言うので、皆で訓練場に行くことになった。
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