第53話
よろしくお願いします。
3等陸佐と迷宮に関する法律について、色々と討論をしていたが、
「迷宮関係の特別法は、何て名前になりそうなの?」
と私が質問すると、
「たしか『迷宮内での活動等における刑法等の特例等に関する法律』という名前の予定ですよ。略して迷宮特例法だったかな。」
という回答だった。
「その法案には、マジックバッグや魔法については、何かしらの制限があるの?」
と聞くと、
「素案には、入ってませんね。その辺のアイテムや魔法については、政府としても公開していませんので。」
というので、
「しかし、海外から入って来るよ。魔法を使うテロリストも問題だけど、マジックバッグについて水際対策をしないと、密輸し放題だから大変なことになるよ。」
と忠告すると、
「今でさえ、黄金の国ジパングですからね。」
と3等陸佐も、納得した。
たまに世間を騒がせる金の密輸問題は、何で儲かるのか知らない人が多い。
ここに「金地金密輸の現状とその対策について」という財務省の資料が有る。
これによると、香港等の消費税が掛からない国で、2,500万円分の金塊を買い日本に輸入する。
輸入の際、税関で8%に当たる200万円を消費税として納税しなければならない。
密輸の場合、この200万円を支払わなくて済む。
密輸した金塊を日本国内で売ると買った業者から、消費税を含めた、2,700万円が支払われる。
2,700万円で買った金塊を国外に持ち出す際、輸出申告をすると消費税分の200万円が国から還付され、それを香港等に輸出する。
2,500万円の金塊の密輸1回で、200万円の利益がでる。
この繰り返しだ。
これを組織的に行う。
多量の金塊を用意すれば、日本と香港を行き来するだけで、大金が儲かるのが金塊の密輸だ。
日本の鉱山における年間の金の産出量は、約6トン。
2016年以降、日本の金の輸入量は毎年5トン程度だ。
しかし、輸出量は、毎年200トン以上だ。
どう考えても、収支が合わない。
現代でも、「黄金の国ジパング」と呼ばれる要因だ。
さらに、最近は裁判の判決で、金塊が没収されるようになったが、1年か2年前までは、金塊の密輸で摘発されても、その金塊は没収されずに、犯人の元に戻っていた。
2017年に日本から輸出された金は215トンなのに対し、正規の輸入は5トン。
財務省の試算では、消費税の脱税額は年640億円らしい。
この640億円の原資は、国民の税金だ。
暴力団や海外マフィアといった犯罪組織が、640億円を手にするのだろう。
私は、3等陸佐に、
「マジックバッグが、暴力団や海外マフィアに渡ったら、大変な事になる。」
と言ったら、
「既に渡っていると思いますよ。何せ、C国やR国が迷宮で手に入れているでしょう。そこから横流しされていると思いますよ。高く売れますからね。」
というので、
「対策はできているの?」
と聞くと、
「マジックバッグは、形状が同じなので、税関には手配済みですよ。だからハンドキャリーは無理だと思いますが、自動車等の輸入品に紛れ込まされると発見するのは難しいですね。」
と言う。
「要は、完全な摘発は無理ということか。じゃぁ金塊の消費税を無くさないと駄目じゃないか。そうすれば解決するだろう。なぜ、やらない?というか、なぜ、マスコミは騒がない。新聞を軽減税率とか言う前に金塊を非課税って、なぜ言わないんだ。毎年600億円以上の税金が、犯罪組織に流れているのに、これは急務じゃないか。」
と言ったところ、
「そんなこと、言われても、私の仕事じゃないです。」
と、もっともな事を言う。
「いや、しかし、そもそもマジックバッグがあれば、覚醒剤だろうが、拳銃だろうが、カワウソだろうが、密輸し放題じゃないか。これは、本当に由々しき問題だよ。」
と言うと、3等陸佐は、
「税関や警察に頑張って貰いましょう。」
と言う。
「しかし、3等陸佐は、だいたい何でも知っているね。本当に自衛隊の人なの?」
と聞くと、
「はい。自衛隊の3等陸佐ですよ。でも、守秘義務に当たるので、詳しい事は言えません。」
と言ってきた。
「あ、その辺りのこと、誤魔化さないんだ。」
と言うと、
「誤魔化しても、貴方が本気で聞いたら、誤魔化し切れないでしょ。」
と言った。
「確かに、その通りだね。しかし、これも由々しき問題じゃないか。天使を召喚して、マジックバッグを探させるか。」
と言うと、
「そんな事ができるのですか。それが可能なら、大掛かりな密輸が防げますね。マジックバッグが絡むので、事件として処理するより、秘密裏に回収した方が良いですね。天使様にお願いして下さい。」
と言うので、部屋を出て中庭に行き、いつもの力天使を1人と、下位天使である大天使を30人ほど召喚し、
「この国でマジックバッグを持てるのは、自衛隊と警察の人だけだ。陸揚げされた輸入品も含めて、国内でマジックバッグを見つけたら回収し、私の所に持ってきてくれ。」
と、輸入品からマジックバッグの回収業務を命じた。
「御意」
と返事をし、何処かに転移していった。
天使達よ。飛行機や船の貨物全てなので、とても大変だと思う。
頑張ってくれ。
こんな感じで、3等陸佐と雑談し、一日が過ぎて行く。
しかし、隊員達は、迷宮で頑張っている。
私は、その成果について報告を受け、その一日の仕事が終わる。
一応、管理職なので、こういう日があっても仕方ないと思うが、色々と申し訳ない気がする。
私は、仕事が終わった後、ドルトムントに帰らず、独りで東京迷宮に潜った。
ほとんど徹夜で、翌朝、出勤というペースで金曜まで続け、1,024階から1,920階まで踏破した。
娘達が使う魔法の宝玉ランク4が欲しかったからだ。
魔法の宝玉ランク4が8個と、魔法の宝玉(未)ランク4が6個を手に入れた。
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