Letters from Heaven2
「フェザー、チカちゃんから手紙を預かりました」
そう言うと1通の封筒を私に差し出してきた。
白いワンピースの子は、表情も喋り方も子供の物とは思えなかった。
大人びたというよりも、神がかったような声、そして視線。
「チカちゃん?」
長方形の封筒に「フェザー」へと子供の字で書かれていた。
悪い冗談にしては手が込んでるじゃねえか…
私はその封筒をじっと見つめたまま動けなくなっていた。
「恐れてはならない。全てを受け入れるのだ」
何言ってるんだ?と思って白いワンピースの子を見ると、そう言い残し目の前から消えていた。
おかしなもん見ちまったな…
もう、日が暮れてきてるし、錯覚かなにかか…
でも、私の右手には、受取った手紙がしっかりと握られていた。
私は封筒を口に挟むと、右手で中から便箋を抜き出した。
便箋を見ると、そこには子供の書いたような字が並んでいた。
「フェザーへ いつもやさしくしてくれてありがとう。わたしをたすけにきてくれたのを見てました。しぬのはこわいけど、フェザーにはしんでもだいじょうぶだって言いたかったです。だから、てがみをかきました。また、あそぼうね。 いしかわ ちか」
何だか分かんねえな…
チカちゃん、天国から手紙を送ってくれたのかい?
天国のポストマンは随分かわいらしいんだな。
私はしばらく星が輝きだした空を見上げた後、手紙をポケットにしまった。
渋谷ベースに戻ると大佐が酒を飲みながらソファーに横たわっていた。
相変わらずだな。
でも、ここに帰ってくると安心するよ。
「なあ、大佐。これ見てくれよ」
私はジェットブースターをカウンターの裏に置くと、大佐のそばに行きポケットから手紙を出して渡した。
「なんだ、これは?」
大佐は呆気に取られたような顔で私を見ると手紙をゆっくりと受け取った。
「チカちゃんから手紙が来た」
私はそう言うとカウンターに酒を取りに行った。
「おいおい、何言ってるんだよ…」
大佐が苦笑いを浮かべながら、手紙を読み始めた。
私はカウンターからテキーラを瓶ごと取ると、大佐の前に座った。
「なんだこれ?縁起でもねえな」
手紙を読み終えた大佐は、私にそれを返してきた。
「大佐、どう思う?知らねえ子供がやって来て、これ渡してきたんだけど、そのまま煙みたいに消えちまったよ…」
どう説明して良いか全然分かんねえ。
私も私で大佐に何を聞いて欲しいんだろうな…
「フェザー、しっかりしろ。この手紙が天国から来たのかいたずらなのかとか、そんなことはどうでも良い。この手紙のことは忘れろ。死んだ後のことなんて考えてたら、明日にでも命を落とすぞ」
大佐は鋭く目つきを変えてそう言った。
「ああ、そうだな」
大佐の言う通りだ。
いちいちこんなこと考えてたら命がいくつあっても足りねえよな。
忘れよう、そう思った。
私はテキーラを一口飲むと深くため息をついた。
天国から手紙が来たとか言い出したら、私もお終いだぜ。
何となく死神に足を引っ張られるような感じ。
嫌な予感がし始めていたが、私は気にせず酒を飲み始めた。