Letters from Heaven1
渋谷ベースから少し離れたビルの前で、私は今日も人を殺そうとしていた。
血まみれのコンバットナイフを持ったまま、ジェットブースターの出力を切った。
目の前にはあんまり育ってない根がついてる野菜を持った男が、首から血を流して転がっている。
「わりいな、こっちも食わないといけないからな」
私はコンバットナイフを地面に突き刺し、腰から25オートを取り出すと全弾男の頭に打ち込んだ。
悪く思うなよ。楽に死ねた分、感謝してくれ。
最近、この汚染された東京の真ん中で畑を作ったり、ヤギとか家畜を飼ったりする奴らが増えてきている。
アスファルトをひっくり返して耕す奴もいるが、ビルの中に土を運んでうまくやってる奴のが多い。
まあ、自給自足しようというのが増えて来てるんだが、それと同時にそいつらの作ったものを盗もうとする奴が出て来ている。
そんなわけで、こうして依頼があると私と大佐が見張って始末する。
しばらく誰も近づかないように、残忍に見せしめとなる様に殺す。
そこには、1ミリも情けはかけない。
耕す奴らも生きるためにやってるし、盗む奴らも生きるためにやっている。
そして、大佐と私も生きるために殺すわけだ。
相変わらずどうにもならねえ毎日を送っている。
殺したり怪我させたり脅したり、それが毎日続いていく。
職業軍人じゃない私と大佐は、そんなことしなくたって構わない。
だけどさ、そんなことしかできない人種には、そうやって生きることしかできない。
「大佐、喉乾かないか?なんか飲んでいこうぜ」
一仕事終えた後、私がそう大佐を誘うと大佐は横に首を振った。
「フェザー悪い。ちょっと、弾薬を仕入れに行きたいんだ。明日にしないか?」
大佐がすまなそうな顔で私にそう言った。
なんだよ、どうやってんだか分かんねえけど、良い酒集めてる屋台があるから行こうと思ったのによ。
「じゃあ、私1人で行ってくる。暗くなる前には渋谷ベースに戻るよ」
私は屋台がある市場へと歩きながらそう言った。
「ああ、分かった。フェザーも気をつけろよ」
大佐は軽く手を上げると、そのまま去っていった。
私はふらふらと市場へと歩いてきた。
屋台や壊れた店を利用した商店が集まり、前と比べて人もだいぶ集まって来て活気がある。
私はお目当ての屋台を探していたのだが、ずっと後ろの方からつけられているような気配を感じていた。
だけど、何にも仕掛けて来ない。
私は振り返って反応を見ることにした。
すると、その雑踏の中に1人だけ空気が違う奴がいた。子供だ。
見たこともない小さな子供が私の目の前まで歩いてくる。
随分キレイな白いワンピースを着ていた。
この辺じゃ絶対ありえねえものを着やがって、どこからそんなもの手に入れたんだ?