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悪逆非道なマッチ売りの少女  作者: ポカ猫
第3章 変幻自在の赤ずきん
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第49話 大罪の愛は月詠を呼ぶ

お久しぶりです。

 まるで少女は夢でも見ている気分でした。

 自身の最愛の()()の姿で、ジャンダを殺せる事が嬉しく、自然と笑みが零れてしまいます。


「大丈夫かしら?さっきの姿の方が強そうだったけど?」

「あまり舐めた口をきかないでちょうだい?あの子に失礼だわ」


 ジャンダを睨みつけ、少女は銃の引き金を引きます。


 銃弾は真っ直ぐジャンダを捉えたが、ギリギリのところで彼女の魔法により防がれてしまいます。


「そんなんじゃだ──」


 そう口を開いたジャンダの首を少女の鉈がかすったのです。


 そして、投げられたはずの鉈をキャッチした少女がジャンダの後ろで怪しい笑みを浮かべます。


「この体の1番良いところは瞬発力よ。あのマギルなんかよりも早いわ」


 ジャンダは冷や汗をかきながら首から垂れた血を拭きます。

 彼女は頭の中で思ってしまったのです。


 「勝てないかもしれない」と───


 魔法が使えない少女は弱体化などしていなかったのです。


 前回ジャンダに負けた時は契約をした半悪魔の状態であり、経験、力全てにおいて負けていた為の敗北。


 今の少女はジャンダ曰く()()()()悪魔。


 今現存する悪魔の中ではおそらく、完全体の災厄の悪魔と同程度の力を持つ悪魔になった存在です。


「魔女め……」

「悪魔だって言ってるでしょ」


 ジャンダは自身の魔法でおそらく最大であろう火球の魔法を少女に向けて放ちます。


 20発以上放たれた魔法を、銃弾と鉈で掻き消しながら少女はジャンダとの距離を詰めていきます。


 そのスピードは、ジャンダの目にも追えない程です。

 "天の声"がなければとっくに首をはねられていてもおかしくありません。


「やられっぱなしは癪に障るわね……!」


 ジャンダが杖を握り、魔法を使用する。


 少女が丁度着地した場所に、狙いをすましたかのように魔法陣を展開し炎の柱で少女の体を包みます。


「最上級魔法よ……ウェルダンにしてやるわ」


 魔法が消え、そこには身体を真っ黒に焦がした少女が立っています。


「あら、焼き加減を間違えちゃったわね。ウェルダンどころじゃないわ」


 クスクスと笑うジャンダに対し、少女は指を1回鳴らします。

 するとその瞬間、少女の体が光を放ち焼かれる前の姿に戻ったのです。


「な、なんで……!魔法は直撃したでしょ……!」

「ごめんなさいね、身体が強欲に元の姿に戻ろうとするみたいでね」


 魔法攻撃も効かない、物理攻撃はジャンダにはそもそも現実的方法では無い。


 ジャンダにとってこの状況は、"詰み"と言っても良い程絶望的な状態でした。


「剣は持ってないみたいだけど、貴方も騎士団だったのよね。じゃあ……どうして貴方は剣を振るうの?」


 少女はマギルやジルにしたのと同じ質問をジャンダにぶつけます。


「人を守る為よ」

「誰かの不幸を見て見ぬふりして救う正義に意味はあるの?」


 少女は座り込むジャンダの首元に鉈を押し付けます。


「出てしまった犠牲を忘れない為に私たちは戦っているのよ」

「そんなの貴方達の罪滅ぼしごっこじゃない」


 少女の鉈を握る力がより一層強まる。


 こいつは何を言っているんだ?と本気で思ってしまったのです。


「お前のようなやつには分からないさ!」


 そう言い放った直後、ジャンダが少女に足払いをし、転ばせます。


「なっ……!」


 転んだ少女の首に注射器を刺し、少量の血を回収します。

 そのまま少女から距離を取り、スクロールを取り出しました。


「おい!何やってやがる!!」

「多少油断しただけよ……」


 頭の中にレイカの声が響く。

 それは少し慌てたような声でした。


「ジャンダのスクロールを壊せ!面倒なことになる!!」


 それを聞いた瞬間、少女はジャンダが広げたスクロールに銃弾を打ち込みますが、銃弾が届く前にスクロールは光を放ち消えてしまいました。


「ちっ……間に合わなかったか……こいつがまだこれの所有者だとは思わなかった……」


 レイカのイラつき具合で、あれが相当不味いものだったのだと少女も気づきます。


「残念、あと一歩遅かったわね。これで私が死んでもこれから先、この周辺の街にいるエクソシストからあんたは死ぬまで狙われることになるわ」


 ニヤリと笑い、ジャンダが懐から取り出した冊子のあるページを少女に見せました。


 そこには"大罪の悪魔"という名前と、少女の姿が、写しだされていました。


「なによそれ」

「ビンゴブックよ。今のスクロールの情報がこの街周辺の全てのエクソシストの持っている冊子に記録されたわ。あんたが名乗った()()()()()って名前でね」


 つまるところの賞金首のようなもの。


 ただし、そのビンゴブックには()()()()()しか載っていませんでした。

 彼女の血からは災厄の悪魔や、変化の悪魔などの情報は得られなかったようです。


「おめでとう、この緊急用のビンゴブックに載ったのは災厄と変化、あとは月詠とあんただけだよ。もちろんネームドしか載ってない」


 月詠という聞いた事がない名前を耳にし、少女の身体が一瞬硬直します。


「月詠の悪魔は今エクソシストが封印してしまってるわ。昔は3匹で大暴れしたものよ」


 変化の悪魔がため息混じりにそう呟きます。


「もう私に魔法を撃てる力なんて一滴も残ってないわ、殺しなさいよ大悪魔(賞金首)


「お望みどおりに……」


 少女はジャンダの胸に銃弾を打ち込みます。


 それは今まで戦ったジャンダとの戦闘で、1番呆気なく後味の悪い物でした。


「ああ……そうだ……緊急用ビンゴブックはマギルも持ってるから……ハハッ!その顔が最後に見れたから私の勝ちね……」


 そう言い残し、ジャンダ力尽きました。

 その時の少女の顔は悔しさで埋め尽くされていました。


「マギルがこの街まで来るぞ、最後の最後でやられたな」


 少女は「GREED」のトランプを解き、ジャンダの死体に雷を落とします。


「最後にしてやられたわ……」

「2回目である以上、赤ずきんの変化は解けません。エクソシストに狙われ続けることになりますね」


 少女はジャンダの死体が燃え尽きるのを見ながら、考えを巡らせます。


「仕方ない……エクソシストを始末しつつ、月詠の悪魔を解放しましょう」



最後まで読んでくださりありがとうございました。

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