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終焉の龍の卵  作者: レッドヴォルト
テロニ族編
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雷雲

俺は背中に獣人の子供のエフィモアとアルセンを乗せて雪の中を歩く。こうやって移動した方が速いし2人の体力を消耗せずに移動することが出来る。


「高ーい!」


「コラ!アルセン!騒ぐんじゃありません!」


エフィモアが姉貴分らしく落ち着いてる。弟分のアルセンは俺の背中の上で落ち着きなく騒いでいる。落ちないかが心配だ。


『あー何だこの餓鬼ども』


居たのかアルファ。この子達は獣人の子供だ。訳あって村まで送ることになった。ダメか?


『私の許可を取る必要は無いだろ。寝てたから気づかなかった』


お前寝るのか。通りで反応がなかった訳だ。


俺とギューリーが気配察知をガンガンに効かせているため安全なルートで移動することが出来ている。そのため最低限の戦闘で済んだ。やっぱり子度を乗せながらの戦闘はキツい。


俺達はエフィモアに案内されて道なき道を歩く。冷たい風が吹いて来た。それに空に暗雲が立ち込めてゴロゴロと雷が鳴っている。早く村に行きたいな。また吹雪いて来そうだ。


「もう直ぐ着きます!この渓谷を抜けた先です!」


洞穴を発ってから3時間くらい経っただろうか。もう直ぐ着くそうだ。吹雪が来る前に着くことが出来るだろう。


『やっとかぁ!』


ギューリーが背伸びしながら言う。確かにギューリーからしたらこの雪道を歩くのは非常に疲れるだろう。彼等の村で休ませてやることが出来たら良いのだが。


渓谷を歩いていると崖上から突如非常に強力な気配が出現した。恐らくだがこれでもかなり抑えているだろう。

背骨を撫でられたかの様な悪寒が走る。身震いが止まらない。心臓を握られたかと錯覚する程の圧に押し潰されそうになる。


強者の気配に共鳴するかのようにギューリーが持っているウラヌスが震え鞘から抜け出そうとする。

今まで会ってきた強者に何も反応しなかったウラヌスが反応した。伝説の魔物や古龍級の怪物が此処に居ると言うことだ。


『!?!?!?何だこの気配!?』


ギューリー!フィーニス!2人を連れて先に行け!


『分かった!無事で居ろよ!直ぐ戻って来るから!』


ギューリーも感じたらしく逃げの姿勢に入る。2人で戦っても勝てない様な相手だ。子供達の身の安全を優先して貰う。せめてあの子達だけでも無事に帰す!


「ドラゴンさん!どうかご無事で!」


「死なないで!まだお礼できてないから!」


2人の顔は真っ青だ。あの圧によく耐えてくれた。下手したら圧だけで死んでたかもしれない。それほどの相手だ。


ギューリーが2人を抱えて走り出す。これで思いっきり暴れることが出来る。恐らくだがお相手方の狙いは俺かギューリーだ。


雪山の筈なのにまるで溶岩地帯に来たかの様な錯覚に陥る。


俺の目の前に巨大な何かが降りて来た。巨大な翼、真っ白な鱗、周りに白炎を渦巻かせた龍が舞い降りた。白炎は周りの雪を一瞬で蒸発させ俺の鱗をジリジリと焼いている。凄まじい圧だ。勝てるとかの次元じゃない。戦いになるかも分からない。0.1秒も掛からず殺されるだろう。


だが目の前の龍をも、凌駕する化け物が居る。白龍の背中からゆっくりとそいつは降りて俺の目の前に立った。


赤色の長髪の大柄の男が立っていた。鱗や角で作られたと思われる鎧を着こなしてまるで雷を絡ませたかの様な槍を握っている。圧倒的な格上の前に俺は立っているのがやっとだった。


「やっと見つけたぞ」


「ガァァァァ!」


『ぁぁぁぁ!』


ただ声を掛けられただけだ。俺の意思に反して俺は全力で戦闘態勢を取っていた。死期活性に暗い閃光、使える物は全て使っている。だが全てのスキルをフル活用してステータスを上げてもこいつの足元には及ばないことが分かる。


「アルバフラマ。お前は何もするな」


「分かった。貴公に任せよう。だがあまり無理させるんじゃないぞ」


念話ではなく流暢に言葉を話す龍に俺は驚く。


「少し遊んでやろう。さあ来い炎に見定められた血族よ」


こうなったらやるしかねぇ!アルファ!合わせろ!


『分かったっ!』


「ガァァァァ!」


『古兵錬成!黒槍!ダークファイア!』


古兵が周りに出現して襲いかかる。時間稼ぎくらいにはなるだろう。俺は暗い閃光を纏った拳を目の前の怪物に叩きつけた。


ドゴォォ!


まるで巨大な岩と岩が衝突したかの様な衝突音と共に土煙が舞い大地が揺れる。確かに手応えはあった。だがこの程度で倒れる様な相手ではない。俺はバックステップで距離を取った。


「ガァァ!」


『ドラゴンスケイル!』


俺はブレスを土煙に向かって吐き出す。そこにアルファが竜魔法のドラゴンスケイルを放つ。どんな耐性も貫通する竜魔法は流石に効いてくれる筈だ。それにあれだけぶち込んだんだ。傷くらい付いてくれないと困る。


土煙が晴れる。俺とアルファは目を疑い絶望した。


「悪くはない。だが届いておらぬな」


そこには傷一つもなく佇んでいる化け物が居た。あの猛攻を喰らっても傷一つなく余裕で立っている。全身の汗腺から汗が、ドバドバと出ているのが分かる。


『この化け物がぁぁ!』


「ガラァァ!」


アルファが自棄になって魔法を乱打した。俺はそれに合わせる様に顎を開き食らいつく。だが堅すぎて逆にこっちの牙が折れそうになる。


「トニトゥルス」


『避けろぉぉぉ!』


ほんの一瞬だ。ほんの一瞬だが奴から魔力が放たれた。俺はその場から全力で回避行動を取る。


ビジャァァァァン!


鼓膜を突き破る様な爆音と目が焼ける様な閃光と共に俺は吹き飛ばされる。俺の巨体がまるでスーパーボールの様にバウンドして地面に叩きつけられる。ゴロゴロと崖の一部が崩れて岩が降ってくる。


『何が・・・起きた』


俺がさっき居た場所は地面が抉れ黒煙が立ち昇っていた。まるで雷が落ちたかの様な惨状だった。


「ほう?手加減してやったとはいえあれを避けるか。面白い」


「ガ・・・ガァァァ!」


俺は心の底から目の前の圧倒的な存在に恐怖した。この男には勝てない。天地がひっくり返っても勝てない。こいつはこの世界の頂きに居る化け物だ。


「ほう?恐怖してもまだ向かって来るか。気に入った」


「ガァァァァ!」


「空斬」


奴の槍が軽く振るわれた。振るわれただけだ。俺が振るおうとした右腕が斬り飛ばされた。ボトリと腕が地面に落ちる。俺はバランスを崩して地面に倒れた。


「ホーリーチェイン」


俺の首や脚、関節が動く場所全てに光の輪の鎖が、俺を地面に固定した。1ミリも動くことが出来ない。


「グレーターヒール」


俺の腕が再生していく。出血が止まり呼吸が落ち着いていく。こいつ何がしたいんだ?アルファ、ワンチャン賭けてドデカい魔法放てるか?自爆しても良い。


『無理だ。何故か魔法が使えない』


「お前は強い。だがまだ届かぬ。もっと力をつけよ炎に見定められた者よ。今回のは小手調べだ」


男はそう言うと踵を返して龍の背中に乗った。


「我は最古の龍狩り。いずれ貴公と共に戦う者だ」


最古の龍狩り・・・何処かで聞いたことある様な気がする。それに共に戦うってどう言うことだ。


「最後に一つ言っておこう。この雪山に住む民を脅威から守れ。さすれば貴公の力となるだろう」


最古の龍狩りはそう言うと龍と共に飛び去って行った。龍が羽ばたく度に暴風が吹き荒れた。


俺には圧倒的な強者が去った安堵だけが残った。夢かと思う程恐ろしい出来事だったが、黒焦げた地面が夢ではなく現実だと教えてくれる。





あの後、エフィモアとアルセン、ギューリーが来てくれた。強大な気配が去ったことを感じて来たらしい。


俺はギューリーに支えられながらエフィモア達の村に向かった。

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