テロ二の雪山
あれから2日程歩いて俺達は密林を抜けようとしていた。段々と肉食植物の数が減り植生も変わってきた。それに段々と肌寒くなってきた。雪山に近づいている証拠だ。もう直ぐ着くだろう。
今俺達の目の前には壮大な景色が広がっている。遠くまで広がる白銀の雪に所々にある薄い緑に針葉樹林。まさに雪山ってところに来たな。それにしても寒い。爬虫類?の俺達からしたら結構辛い場所だ。
『すんげぇ寒いなぁ・・・』
ギューリーの言う通り凄く寒い。だが幸い今は吹雪いていないし太陽が、頭上まで昇っているのでまだマシなのだろう。吹雪いてきたら死ぬかもしれないの。
この時俺達は確信した。此処では魔物が脅威になるだろうが、それよりもこの自然環境が俺達に牙を剥くだろうと確信した。
歩く度に脚が雪に埋まっていく。ギューリーなんて俺より小さいから辛そうだ。辛かったら俺の背中に乗るか?
『はぁ・・・はぁ俺は大丈夫だ。沼地に比べたらまだ歩きやすい』
そうか。もし辛かったら無理せず俺に言ってくれよ。
『分かった。ありがとうな』
ザクザクと雪をかき分けて進む音だけが、聞こえる。だが静寂は唐突に破られた。
「ウギャラァァ!」
「グォォ!」
小高い雪の丘から何かが飛び降りて来た。4本の腕それぞれに剣と槍と斧と棍棒を握っている。そして長い首に鋭い牙がギラギラと口から覗かせている。
『武器を持ったドレイクか?』
『こんなドレイク初めて見たぞ!気をつけろ!』
言われなくても!チッ!この動きにくい環境での戦闘か!
(ジャエンティ B-)
アルグラ周辺に生息しているドレイク種。平均体高3メートル、平均体長7メートルの中型のドレイク種。テロニ族の言葉で『掴む者』と言う意味を持つ。その名の通り物を掴むのに適した手を持ち武器を振るう珍しいドレイク種である。
種族ジャエンティ
名前無し
level40/50
HP1500
MP1220
攻撃力580
防御力725
魔攻490
魔防680
素早さ100
スキル
ブレスlevel5 竜殴打level3 火魔法level5 槍聖術level3 剣聖術level3 戦斧聖術level3 戦棍聖術level3 槍聖技術level3 剣聖技術level3 戦斧聖技術level3 戦棍聖技術level3 噛みつくlevel3
竜の尻尾level3 咆哮level3 魔力操作level3 魔力感知level3 並列思考level2 鍛治level6
耐性
寒冷耐性level3 物理耐性level3
固有スキル
竜鱗level4 心眼level3
ランク
B-
称号
竜族
装備
鉄羽の剣 C
岩食い鷲の槍 C
雪虎の戦斧 C
鉄亀の戦棍 C
あのレベルにしてはステータスは低い。だがそれをカバーするだけの技術が奴にはある。油断出来ない相手だ。
「ギャラァ!」
『ソードクラッシュ!』
ギューリーの剣とジャエンティの槍がぶつかり合い火花が散る。だがギューリーと同じく奴は腕が4本ある。俺に向けて戦斧が振るわれる。
「グォォ!」
俺は戦斧を手の甲で受け止める。斧が俺の手の甲に食い込むが、痛みを我慢して腕に噛みつく。
「ガァァ!」
「ウギャ!?」
戦棍で思いっ切りぶん殴られた。視界がぐわんぐわんと揺れる。
「ウラァ!」
「ハァ!」
「キシャァァ!」
俺に追撃しようとしたジャエンティの攻撃を、ギューリーとフィーニスが防いだ。だが長い首を利用して俺の首に噛みついてきやがった。鋭い牙が俺の首元に食い込んで血が吹き出る。
「ァァァ!」
「ウゲェ!?」
俺は噛みついていた奴の牙を離して竜殴打で殴り飛ばした。
「ウラハァ!」
「ギャァァ!?」
俺が殴り飛ばした隙を利用してギューリーが、奴の腕の1本を切り落とした。切られた傷口からドバドバと血が吹き出てくる。
「ハァァ!」
だが奴は冷静に俺達から距離を、取り切られた傷口に火魔法で無理やり止血した。あのまま放っていたら出血死しただろう。賢い判断だ。
「グルル!ガァァ!」
「ハァラァァ!」
「キシャァ!」
斧と剣と戦棍が同時に振るわれる。ギューリーが、斧を弾きフィーニスが尻尾で剣をはたき落とした。俺は振るわれた戦棍を、避けて奴の首元に噛みついた。
「ウガァギャァ!?」
メキメキと奴の首から骨が折れる音がする。奴も俺を離そうと力一杯押し返そうとしているが、武器に頼っていたからか力が貧弱だ。俺は力任せに首を、ブチンと引き千切った。千切れた首元から血が滝のように吹き出てビクンビクンと痙攣して動かなくなった。
(経験値4700入手しました。levelが41に上がりました)
雪の中での戦闘は、かなりエネルギーを消耗する。俺とギューリーは肩で息をするかのように呼吸しながらその場に座り込んだ。
少し戦っただけでこのザマだ。雪山の環境は自分が、思っているよりも厳しいものだと実感した。
ジャエンティの肉を全て食べ終わったが俺達の腹は満たされなかった。それだけあの戦闘でエネルギーを消耗したということだ。また俺達は死界へ向けて歩き始めた。
ジャエンティを食い終わって1時間くらい経っただろうか。雪の中から気配を感じる。相手は気づかれていないと思っているんだろうが、バレバレだ。先制攻撃させて貰うとしよう。シャドーネイル!
『ファイアランス!』
アルファの放った火の槍と俺が、放ったシャドーネイルが地面を穿つ様に放たれた。
「ァァァァ!?」
雪の中から飛び出してきたのは真っ白なウナギだった。蒲焼きにしたら美味しそうだ。
(アイスイール B-)
全長10メートルはある巨大な古代魚の一種。雪原に生息しており雪の中に身を隠して獲物に襲いかかる。冷たい冷気を吐いて獲物の機動力を奪いその巨体で押し潰す。血には毒があるので生食は無理だが、タレを付けて焼いて食べると非常に美味であり高値で取引されている。よくアイスサーペントと間違われるが危険度は大違いである。
アイスイールは即座に反撃してきた。奴の口から真っ白な霧が風に乗って拡散される。あれが冷気攻撃か。確かに当たれば強力だろうが、当たらなければどうということはない。
「コァァ!」
雪の中から奴の尻尾が振るわれる。俺は古き盾を展開して防ぐ。そこをギューリーがさっき入手した鉄羽の剣で攻撃する。アイスイールの薄皮が切り裂かれる。
「コァァァ!」
まるで鑢のような牙がギューリーに迫るが、フィーニスがタックルしてアイスイールの体勢を崩した。
俺は体勢が崩れた奴の背後から噛みつく。口の中に奴の血が入る。猛毒かと思ったが、竜である俺からしたらそこまで強力な毒ではない。
「コァッ!?コァ!?」
バキっと骨が折れる音と共に奴の体がダランと崩れる。
(経験値3000入手しました)
よし結構簡単に仕留めることが出来た。こんだけの巨体だ。全部食べたら流石に満腹になるだろう。それにもう暗くなっている。何処か休める場所を探さなければ。雪山で野宿は嫌だぞ。
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