キングスレイヤー
あれから何時間経っただろうか。俺とフィーニスの体はボロボロだ。俺は体の所々に切り傷が絶えず腕は折れかけている。フィーニスに至っては肋骨が折れて顎が欠けている。お互い満身創痍だ。
「ガァァァァ!」
このまま俺達は死ぬのか?死ぬとしても最後まで争ってやるよ!俺達が抗った爪痕をお前に残してやるよ!行くぞフィーニス!気合い入れろぉ!
「キシャァ!」
「グォォォ!」
俺とフィーニスがワイバーンキングに向かって突撃しようと走り出す。奴の口元から青白い炎が漏れる。あの炎が俺達に直撃した瞬間、俺達は骨も残さず灰になってしまうだろう。
そう半ば諦めていたその時だった。聞き覚えのある声と共に瓦礫を薙ぎ払いながら丸太の様な太い血の縄が、飛竜の王に絡みついた。
『血操術!暴血縄!』
そこには堂々と四対の剛腕を組んでいる相棒の姿が見えた。
ギューリー!起きたのか!
俺の声に応えるようにギューリーは胸を張って叫ぶ。
『お前の相棒、ギューリーは帰ってきたぞ!行くぞオメガァァ!』
ギューリーが起きてくれて助かった。もしギューリーが起きて血縄を使ってくれなかったら俺達は焼き尽くされていただろう。
「ウグォォ・・・ウガァァ!」
口に絡みついてた血縄が弾け飛ぶ。ブチンブチンと身体中に絡みついていた血縄も弾け飛ぶ。飛竜の王からすれば地に伏せた者に攻撃を妨害されたのだ。口元の炎が怒りでメラメラと燃え上がっている。
『血操術!血蛇!』
血の大蛇がキングワイバーンにまるで矢のように放たれる。大蛇が奴に絡みつく。だが大蛇はいとも簡単に振りほどかれる。だが無駄ではない。
「グォォ!」
「ガァァァ!」
俺は暗い閃光を、牙に纏わせて奴の喉元に食らいつこうとした。だが奴は歴戦の猛者。俺の考えてることなんてお見通しだった。奴は翼を前にして俺の噛みつきを防ごうとした。だがその選択肢は俺を舐めているな。その選択肢、後悔させてやるよ!
俺は翼に食らいつく。奴の翼の一部が爆ぜて俺の牙は奴の片翼を食い千切った。千切れた場所から血が噴水のように吹き出してくる。
「アギャァァ!?」
予想もしてなかった激痛に奴は叫ぶ。精々翼膜が破られる程度だと思っていたんだろう。だが奴の対応も早かった。直ぐに距離を取り自分のブレスで傷を焼いて出血を無理矢理止めやがった。
だが飛行能力は奪ってやった。これで奴は空を飛べないだろう。やっとこっちの土台で戦うことが出来る。
「グォォァァ!」
奴の背後に現れた魔法陣から青白い小さな竜が、現れて俺に襲いかかってきた。俺は翼を広げて風刃を放ち相殺する。だがそれだけでは終わらない。また奴から魔法が放たれる。今度は極太の炎のレーザーが放たれた。
『アクアブレイクゥゥ!』
水の波動が炎のレーザーとぶつかり合い水蒸気が、発生して視界が霧のように真っ白に染まった。この煙幕を利用して俺とアルファは即座に魔法を展開する。
だがダメージは期待していない。こっちは囮として使うだけだ。
「ガァァァ!」
煙幕越しにブレスを吐いてきたがそれは予想していた。俺は空を飛び無防備な奴の頭に急接近した。俺は奴の頭目掛けて拳を振り下ろす。
「ガァァァ!」
「グベ!?」
ブレスを吐いていた奴の口が、勢い良く閉まり牙が何本か折れる。俺はそのまま馬乗りになり何度も殴打する。鱗が割れて奴の額から血が流れ始めた。
「グラァァ!」
だが奴も殴られっぱなしと言う訳ではない。俺を振りほどこうと何回も俺に頭を打ちつける。その度に建物が崩れて大地が揺れる。
「ウラァァァ!」
「ギャァァ!?」
ギューリーが勢い良く奴の頭に跳び乗り奴の目に剣を突き指した。激痛により奴が悲鳴を上げて大気を揺るがす。
「ガァァァ!」
「ーー!?」
ギューリーを無理矢理振り下ろして噛みつこうとする奴の首根っこに俺は噛みついた。
メキメキと奴の首の鱗が割れていく。奴がこっちに向けてブレスを開こうとするが顔面をぶん殴って黙らせる。
『血操術!血針!』
地面に飛び散った血溜まりから無数の血の針が放たれる。奴の鱗の隙間を縫うように突き刺さっていく。
「ガラァァ!」
俺は奴を咥えたまま地面に叩きつける。ドシンと大地が揺るぎ視界がぐらついた。
「グォォォァァア!」
だが奴は即座に起き上がり俺に食らいつこうと大口を開けて迫ってくる。
『血操術!血縄!』
『竜鋏!』
ギューリーの血縄で動きを止められて躓いた。その先にアルファが竜鋏を展開しており竜鋏が顎に触れる。
バチン!と言う音と共に奴の顎が砕けて血が吹き出る。勿論俺はその隙を逃さず攻撃する。
俺はありったけの力を拳に暗い閃光と共に込める。倒れている奴の頭目掛けて思いっきり拳を振り下ろす。
「ガァァァ!」
「ーーー!!!」
声にもならない叫びと共に奴の頭が爆ぜた。
(経験値25000入手しました。levelが40に上がりました。称号キングスレイヤーを入手しました)
俺達は遂にここイヴァナ山脈の王、飛竜の王を仕留めたのだ。それと同時にドッと疲れが押し寄せて来て俺達はその場に倒れ込んだ。
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