封剣ギルクそして騎士長と探求者
そこからは一方的な戦いだった。ギューリーが剣を振るう度にヒュドラの体に傷が増えていく。
「キシャァァァ!」
「グォ!」
だがヒュドラも反撃しようと魔法やブレスを放っていたが全て斬り伏せられた。尻尾を振るい叩き潰そうとするが斬られる。そして驚くことにギューリーに斬られた場所は再生しないのだ。数分後にはヒュドラは地面に倒れていた。
(経験値740入手しました。levelが16に上がりました)
ギューリーが持っていた剣が光の粒子となって消えていく。それと同時にギューリーは地面に膝を着いた。俺は慌てて駆け寄ると。
『これめちゃくちゃ腹減るな・・・飯作ってくれ』
心配して損した。まあ相棒の頼みだ作ってやろう。俺はヒュドラの肉を切り取り適当に炙る。香ばしい匂いが食欲をそそる。ギューリーに肉を渡した瞬間に一瞬で消えていく。
『うめぇ!うめぇ!もっとくれ!』
焦るな焦るな。まだまだあるから落ち着いて食え。
ギューリーが満腹になった時にはヒュドラの尻尾しか残っていなかった。俺はヒュドラの尻尾を食らいながらギューリーに質問する。さっきの力は何だと。
『あれは封剣ギルグの力だ。俺も何が起きたか分からないが気づいたら倒せてたよ』
封剣ギルグか。気になるな。世界の声ギルグの情報を全て教えてくれ。
(了解。解放可能な情報は全て表示します)
(封剣ギルグ Legends No.7)
伝説の魔物の一体であり世界最強の剣士。種族はレジェンドドラゴンリザードマンであった。4本の腕に全てに違う属性の剣を持っている。
そして封剣の名前の由来となった力、『封印の一太刀』によって様々な力が封印される。再生は止まりバフ効果も止まり呪いも止まる。斬られる度に能力は積み重なり最後には封印されてしまう。最後には剣神ヴェルナカと戦い破られた。
(封印ギルクの魔剣)
・聖剣ヴィラ Legends
ギルクが愛した女性の名前が付けられた剣。使用者が斬る度に体力が回復していく。そして邪悪な存在を打ち払う力が込められている。それは愛ゆえに起きる力なのか。
・零焔剣ゼロフレイム Legends
ギルクの魔剣でも恐ろしいとされている魔剣。一度振るうと大地を焦土に二度振るうと大地が凍り三度振るうと大地が燃え凍る。巨人の王ユミルを焼き尽くして凍らせた剣。
・神に挑む者の剣アギト Legends
神に挑むために伝説の鍛冶師ヴェンルドが打った魔剣。その剣は神に挑むための鍵である。神属性の物質を全て切り裂き滅ぼす神に挑むための剣である。
・魔龍王の剣グラム Legends
魔法を斬り龍のブレスを斬り龍の鱗を紙のように斬る魔剣。かつて友であった最後の魔龍であり王であったグラムから作られた。グラムは友であるギルクに自分を倒せと使命を与えた。そして彼は激闘の末にギルグの剣となった。
ギルクの情報と彼が使っていた魔剣の情報を入手した。ギューリーの攻撃でヒュドラの傷が再生しなかったのは封印の一太刀による力だろう。もしこの魔剣を入手できたら凄まじい力を手に入れれるだろう。魔剣も集めていくか。でもあの光ってる剣については何も書いてなかった。
(並列思考level1を入手しました)
お?新しいスキルゲットしたぞ。てか結構暗くなって来たな。今日は休むか。隣でギューリーも寝ているし。
俺は仰向けになり空を見上げながら一息つく。早く成体になりたいし明日はレベリング頑張るか。
一方その頃、施設の方ではまだ戦いが続いていた。爆音と共に大地が揺れて施設が崩壊する。1つで城が建てれる値段のする貴重な魔導具ごと攻撃するのがこの施設の主ヘルグレト・リッツである。そして大剣を振るう深紅の鎧を着た騎士は深淵の騎士長クライムである。大剣を振るう度に常人なら狂ってしまう程の深淵が撒き散らされ壁に亀裂が入る。
「クライムよ傀儡になってもその意思は変わらぬのか!」
「黙れ狂った探求者が。俺は深淵を狩る者だ。深淵を解き放つなど許す訳なかろう」
(アビスも何故こいつを鎖の王なんかにしたのだ。自分の敵である筈なのに・・・やっぱり深淵の王の考えてること何て分からん)
探求者は考え事をしながら災害レベルの魔法を放っているが、その魔法を斬り伏せている騎士長もおかしい。原罪を解放するのがアビスの願い。だがこいつは原罪の解放を阻止している。本当に謎が深まるばかりである。
「龍の牙」
クライムが大剣から斬撃を飛ばす。それはまるで龍の牙のように地面を穿ちながら突き進む。だが探求者も負けていない。
「深淵の手、龍の息吹!」
大地から黒い手が伸びてドラゴンファングを握り潰した。そしてお返しに探求者の腕から豪炎が放たれる。だが騎士長は炎の中を突っ切り探求者に急接近した。お互いの獲物が鍔迫り合う。圧倒的な力を持つ大剣に押されて探求者のサーベルが悲鳴をあげる。だがその時だった。クライムが一気に距離をとって大剣を納めたのだ。探求者もポカーンと口を開けている。
「探求者よ俺は行かなければならぬ」
「何言ってるんだ?今は戦闘中だぞ?気でも狂ったか?」
「憎きアビスから連絡を受けた。最古の龍狩りが目覚めた」
「・・・本当かクライム?」
「本当だ。龍狩りが目覚めたってことはアイツも目覚めているかもしれん」
「まさかまた世界の終焉が!?」
「龍狩りが目覚めてるなら有り得る事だ」
「原罪も気になるが・・・まあ私には関係ないことだ」
「そこで提案だ探求者、いやヘルグレト・リッツよ。ラグナロクを止めるぞ」
「ふむ・・・だが私にメリットがあるか?私は原罪の研究さえ出来れば良いのだが」
「・・・原罪の情報を一部見せようこれでどうだ?」
「よし協力しよう。龍狩りはどこだ早速始末するぞ!」
探求者はブンブンとサーベルを子供のように振り回して興奮している様子だ。無理もない。彼女は何百年も原罪については調べているのだから。原罪の情報は皆無に等しい。情報を得れるなら彼女は靴も舐めるだろう。
「はぁ・・・そもそもお前は龍狩りがどんな化け物か知っているのか?」
「書物でしか読んだことないぞ。確か山を崩して雷嵐を纏った槍で全て消し飛ばす。そして白炎龍に跨り龍を狩る龍殺しの名を奪われた英雄だったか?でも伝説上の話だろう?」
「いやその話は本当だ」
「え?流石の私も山を崩すほどの力なんてないぞ」
「奴は俺達とは違う。半神半人の怪物だ。本当にラグナロクで山を崩して全て消し飛ばしたのを見たぞ」
「・・・クライムお前って何歳だ?」
「忘れたが1000歳はあると思うぞ。まあ古龍より年下だがな」
「1000年以上前の人間か・・・もしかしてお前って初代勇者の仲間か?」
「そうだが?」
「・・・とりあえず白炎龍が目覚めていたら2体を接触させたらダメなんだよな?」
「そうだ。今の龍狩りなら俺らでも勝てるかもしれない。行くぞ」
敵同士だった彼等はお互い肩を並べて歩き始めた。世界の終焉を止めるために。