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94VS生徒会長

 昼休み、いつもの面子で昼食を摂っているとイヴを呼び出す校内放送が聞こえた。


『六道イヴさん、六道イヴさん、至急生徒会長室までお越しください。繰り返します……』


「おん? 生徒会長室?」


 不穏な呼び出しにイヴは疑問符を浮かべる。

生徒会とイヴには接点などない。それに教師に呼び出されるならまだ分かるが生徒会に呼ばれるとはどういうことだろうか。


「イヴ、生徒会に呼び出されるなんて珍しいね」


 千鶴も同じように疑問を浮かべながら呼び出された当人を見る。


「なんで生徒会? 俺生徒会に呼ばれる筋合いなんてねーぞ」


「やだ、生徒会の奴らもイヴに目をつけたのかな。仕方ない私も同行しよう」


 弁当をしまうと綾香も立ち上がる。

しかし、その姿はまるでヤンキーがカチコミか抗争にでも出向くかのような苛立った顔立ちである。

腕まくりをすると、すでに綾香の拳も腕も隆々とした筋肉で盛り上がっている。


「え、いいよ。俺だけで行くよ」


「で、でも……」


 食い下がる綾香の頭を撫でる。

撫でられただけでその怒りは消えていく気がする。

隆々とした筋肉も怒りの拳も解かれると、綾香は女の子綾香に戻ってイヴの顔を見つめた。


「別に喧嘩するわけじゃねーんだからさ」


「うん……でも、何かあったら言ってね」


「おう、じゃちょっと行ってくるわ」


 校舎へと向かっていくイヴの背中。

その背中を見ると、これから何が起こるのだろうかと残された四人には不安しか残らなかった。


「ちーちゃん、何か知らない?♡」


「え?」


「ほら、ちーちゃんなら風紀委員だからさ♡ 生徒会に呼ばれる理由に検討はつかないかなって♡」


 凛にそう問われても千鶴にはやはり思いつくものはない。

確かに風紀委員と生徒会はつながりとしては濃い。しかしそれらはあくまで行事ごとの際などで、親密さは皆無だ。

 ただ千鶴の頭に残っているのは生徒会長がちょっと嫌味な人だったなぁということだ。

金持ちでカースト最上位、生徒会会長のあの金髪縦ロール。

確か名前は南沢桃子だった気がする。


「わからない。それとも……あれかな?」


 ふと、あらぬ考えがよぎる。


「何か思い当たるの?♡」


「シンデレラコンテストのことかな?」



◇ ◇ ◇



 生徒会長室――そこは教室や部活動の教室とは異次元の空間であった。

その場だけがもっふもふのカーペットが敷かれ、中は生徒会長室、というよりは会社の社長室のようだ。

革張りの黒い椅子にふんぞり返った金髪縦ロールがイヴを睨むように見つめる。

南沢桃子、イヴを呼び出した張本人である。


「俺に何か用ですか?」


「あなたが六道イヴね」


「おん」


 同じ金髪ではあるが、対照的な二人だった。

イヴはけだるそうにしているのに対し、桃子は高飛車で見下すような好戦的態度。

だらしなく開けられた第二ボタンに対し、桃子は一番上までキッチリと閉められたシャツのボタン。

イヴのリボンが垂れているなら、桃子のリボンはキッチリとシャツの天辺まであがっている。


「あなた、これはご存じよね」


 後ろに控えていたメイドがイヴに新聞紙を渡す。

渡された新聞に目をやれば、そこにはいつかユリカに撮ってもらった写真が掲載されている。

しかも、銀賞という華やかな賞まで受賞している。


「へー、こんなのあったんだ。やっぱユリカちゃん才能あんなー」


「そのコンテストには私も応募していたのよ」


「へー、結果どうだったんですか?」


 そういうつもりはないが、イヴの言葉は桃子の神経を逆なでする。


『結果はどうだったんですか?』


 桃子は勝手に一人で『ぐぬぬぬぬ』と声をあげると、歯ぎしりをしながらイヴを睨みつける。


「審査員に見る目がなかったようね」


「あぁ……」


 そういうことですか、と頷く。


「でも、これがどうしたっての?」


「あなたは私の怒りを買ったのよ」


「え、俺が?」


「私の作品が没になってあなたが銀賞を取るなんてありえませんわ!!!!」


「逆恨みじゃん……」


「うるさい! とにもかくにも、一年で後輩なのに、このわたくしの面に泥を塗ったのよ!」


「えぇ……」


「金髪のわたくしが金賞であるべきなのよ!」


「それだったら俺も金髪なんスけど……」


「うるさい! ストレート金髪は黙って!」


 吠える縦ロール金髪。


「えぇ……」


 まるでだだをこねる子供である。

 ああいえばこういう。

というか、このような下らないことでわざわざ呼び出されたのかと思うと、なんだか帰りたくなる。


「要件はそれだけっすか?」


「まだあるわよ!! えぇ、あるわよ!!! 言いたいことは山のようにあるわ!!!!」


(愚痴なげーよ縦ロール……)


「あんまり休み時間無駄にしたくないんで、早めに要点だけお願い出来ます?」


「先輩に向かってその口の利き方はなに!!! その口も気に入らないわ!!! ぷるぷるつやつやの可愛らしい口から吐き出されるのは、

“先輩、今日も可愛いですね!”“生徒会長、今日もお美しいですね!”で十分よ」


(こいつめんどくせぇ……)


 ふんすふんすと高鳴る鼻息。

今のところは桃子のやっかみばかり聞かされて、イヴはいよいよ面倒くさくなる。

先ほどからポケットのスマホが何度も振動しているし、きっとイツメンたちが心配してくれているのだろう。


「お嬢様落ち着いてくだしあ……」


 おろおろとしたメイドが桃子に声をかけるが、桃子は怒りの眼差しをメイドに向けるとその尻を引っぱたいた。


「お黙り! 今はわたくしはお説教をしているのよ!」


「あぁん! も、申し訳ございません!」


 引っぱたかれて嬉しそうなメイド。

まだ引っぱたいて欲しいのか、メイドはちょっとだけ尻を桃子のほうに寄せている。


「あの……」


 チラリデスクを見る。そこには『生徒会長 南沢桃子』とプレートが置いてある。


「えっと……桃子先輩、俺帰っていいですか?」


「いきなり下の名前で呼ばないで!!!! なんなの!!! わたくしの恋人にでもなったつもりなの!?!!?!?!?」


「何言ってんだコイツ……あ、言葉に出ちゃった」


「下の名前で呼んだり、生意気な口を利いたり、わたくしよりもいい成績(写真的な意味で)おさめたり!!! なんなの!」


「なんなのと言われましても……」


 筒状の縦ロールから今にも火を噴きだしそうだなぁと思う。

きっとあの筒にはマグマがつまっていて、怒るとマグマが噴火する気がする。


 椅子から立ち上がり、ツカツカとイヴに詰め寄る桃子。


「んぎゃ!」


 何もないところでコケる縦ロール。


「お嬢様!」


「マヌケかな?」


 メイドよりも先にコケた桃子の身体を抱き起すイヴ。


「大丈夫ですか?」


「やだ、いい顔……じゃない!!! わたくしに気安く触れないで!!!」


 パシンとイヴの手を払い退ける桃子。


「もう休み時間終わっちゃいますよ先輩」


「うるさい!!! 休み時間がなんなのよ!!! 授業なんかでなくたっていいの!!!」


 そういえば前世のときもこういったやっかいな人間はよくいたなと思い出す。

自分の言いたいことだけを吐き散らして、こちらの意見も話も一切耳にしないやつ。

そういうとき、自分はどのように対処したか思い出す。

思い出されるのは、口でいって分からない相手には口で対抗しないこと、だ。

だが、拳で解決するわけにもいかないない。

だって、相手はまだ年ごろの女子高生であり、先輩である。


「あの、先輩」


「なによ!!!!」


 一歩前に出ると、桃子の手を優しく引き寄せる。

人差し指をそっと桃子の唇に当てると、優しく微笑む。


「桃子先輩、可愛いのに怒ってたらせっかくの可愛い顔も台無しですよ。ね? 先輩可愛いのに、もったいないです」


 とびきりの営業スマイル付き。


「ぇ……」


 ボンっと縦ロールから火を噴く。

真っ赤になった顔は頭一つ大きいイヴのことを見上げると、そのままに固まっている。


 生徒会長室にチャイムの音が鳴り響く。


「じゃぁ、先輩。俺もう行きますね。また愚痴あったら聞きますよ。今度先輩の写真も見せてください」


「あ、え、ま……」


 背を向けるイヴに手を伸ばす桃子。


「ま、まって……」


 やっと出た言葉にイヴは振り返る。

その顔は怒ってなんかいない。まだ張り付いた営業スマイルのまま、桃子に優しく微笑んでいる。


「今度……学園で“シンデレラコンテスト”をするから……あなたも応募しなさい」


「シンデレラコンテスト?」


「学園一の美女を決める写真のコンテストよ……わたくしも応募するから……あなたも……六道も応募なさい」


「わかりました。写真で勝負したいんですね。いいですよ」


「わ、わたくしが勝つに決まってますけれど!」


「そうですね。先輩可愛いから。可愛い先輩の写真楽しみにしています」


「あなたの写真なんかけちょんけちょんのボコボコにしてやりますわ!!!! 覚悟なさい!!!!」


 売られた喧嘩は買うのが女。

それは前世が任侠だったからということだけではない。

相手が先輩だからということではない。

挑まなければ、戦わなければならない勝負が、そこにある。


「楽しみにしてます、先輩」


 去ろうとするイヴに、桃子は再び声をかける。


「待ちなさい! あと一言言わせなさい!!!!」


「なんですか?」


「あ、あの写真……銀賞の写真……」


「?」


「し、新聞だと白黒だったから……今度カラーのものを持って来なさい……せ、鮮明なやつを」


「? 分かりました」


「いいわ、いっていいわよ」


「?」


 疑問符を浮かべながらもとりあえず出ていくイヴ。

桃子はやっと言いたいことが言えたと、その高鳴る胸に手を当てた。


「お嬢様……」


「何よ」


「もしかして呼び出したのはシンデレラコンテストのことではなく、しゃし……」



 スパァン!!!



 豪快な一振りが尻を叩く。


「あぁん! もっと!」


「お黙り!!!! わたくしはあの女が……あの一年が気に入らないだけよ!!!」


「で、ですが、新聞があまりに家にあるものですから……」



 スパァン!!!!!



「お黙り! お黙り! お黙り!!!!!!!!!!!!!!!!!」


 生徒会長室に、スパンキングの音が鳴り響く。




ポイントを!!!!下からお願いします!!!!!


あと一言でもいいので!!!!


感想が!!!!


ほちいです!!!


↓↓↓↓↓↓↓↓

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― 新着の感想 ―
[一言] 百合SMかよ、いいねぇ
[良い点] 遂に来ました!ツンデレキャラ!! やはり、高貴なツンデレお嬢様キャラは縦ロールが定番なのかっwww。 [一言] それ以上にスパンキング・メイドが気になるww。 ドM過ぎるwww。
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