91咲く鼓動
シャワーに打たれるイヴを見ていた。
その後ろ姿のなんと絵になることだろう。
傷一つない透き通るようで水を弾く白肌。誰に触れられたこともないであろう穢れなき柔肌。
長い金髪は泡に塗れ、背中を落ちていく泡はまるで天使の羽のように思える。
(あぁ、あぁ、あぁ!!!)
その瞳に映るモノをどう表現したらいいのか、どう言葉に表していいのか分からない。
だから、ただ胸の内に感嘆の声だけが響く。
(あぁ! イヴさん! あぁ、私のイヴさん!!!)
両手で口を抑える。
もう鼻血は出なくなったが、今度は涎の洪水が留まることを知らない。
その形容しがたき景色を一瞬だって逃さないため、ユリカの目は瞬きすら許さない。
平均して――人は1分間に20回の瞬きをする。
シャワーを浴び始めてからの時間、5分。
着替えをしていた時間3分。
それら8分間の間、ユリカの目は瞬きを一切することがなかった。
「ユリカちゃんも洗ってあげる」
「そ、そんな! 私の身体にイヴさんの指が手が触れるなんて!」
「え、嫌だった?」
「こんな嬉しいことばかりで私は生きていていいのでしょうか(お願いします)」
思いと言葉が裏返る。
よくわからなくて首をかしげるイヴだったが、ユリカを椅子に座らせると泡塗れのスポンジで背中をこすりはじめる。
「かゆいとこない?」
「むずむずするところなら……」
両手で口を抑えたまま、目を細める。
今、イヴの手が(スポンジ越しにだが)触れているッッッ!!!
愛撫れているッッッ!!!
「むずむず? どこ?」
「あ、だ、大丈夫ですから……」
ドキドキしすぎて吐息が荒くなる。
イヴの手が触れていると思うと、身体がムズムズしてくる。
すぐ後ろに泡にまみれた麗しの女神がいると思うと、今死んでもいいと思いたくなる。
(いっそ……いっそこのまま死にたい!)
最高の気分で召されるならば。本望である。
だが。
「今度は私がイヴさん洗います。イヴさん座ってください」
「おーありがとー」
場所を変わって今度はイヴが座り、ユリカが後ろに立つ。
このご神体を洗うにスポンジでは傷をつけてしまうかもしれない。
このご神体を洗うにスポンジなどどうして必要なのだろうか。
ようは洗えればいい。絶対に傷をつけぬように洗えればいい。
スポンジなど――
不要らぬッッッ!!!!!!!!!!!!!!1111
スポンジを投げ捨てると、ユリカは自身の手のひらにボディソープをたっぷりと垂らす。
「くすぐったくないですか」
背を、洗う。
「はは、ちょっとくすぐったいかも。あれ、スポンジは?」
「気にしないでください。それに手でやったほうがマッサージも出来ますし……」
言いながら肩を揉む。
柔らかさはあるが、その内側には確かな筋肉を感じらえるイヴの肩である。
「あー、いいかも。気持ちいい」
「ほかにこっているところはありませんか?」
「首かな? パソコンやらスマホいじるからどうしても首が疲れるんだよな」
「任せてください!」
肩から首へ。首から肩へ。たっぷりの泡をつけた指先が揉み込む。
(あぁ、今私の手が女神に触れている。私の手が私の愛しき人を包み込んでいる。このままなら――)
ユリカの中に、邪な気持ちが芽を吹く。
(これは洗ってる――身体を洗っている。洗身している。このままなら――)
どきどき。
指先は下へ。
どきどき。
背中からくびれへ。
どきどき。
くびれから。
「い、イヴさんのお尻……柔らかい」
「そうか? でも絶対ユリカちゃんのが柔らかいだろ」
「そんなことありません。イヴさんのほどの柔らかな臀部はこの世にありません」
「そんなことないでしょ」
(……怒らない)
濡れている姿を撮影したときも、こうやってちょっとえっちな部分を触っても、イヴは動じない。
怒って欲しいのに、こんなどうしようもない自分を叱りつけて欲しいのに。
その口から無慈悲な刃を振りかざしてザックリと切り倒して欲しいのに。
いけない自分を躾けて欲しいのに。
してくれない。
(だったら……)
手のひらをもっとボディソープで見たし、後ろから抱き着く形でイヴの前を洗う。
大きくて柔らかくて、ここならば絶対怒られるだろう場所を洗う。というか揉む。
「イヴさんのおっきい。柔らかい」
「そう?」
「はい……」
でも、怒らない。
「あの、イヴさん」
「なに?」
「怒らないんですか?」
「え、うん。なんで?」
「……ちょっと怒るかなって思って」
「別に女の子同士だし。いいんじゃん?」
(だったら――)
きゅ。
「あッ……!」
(これなら!)
「もー、そんなに怒って欲しいのか?」
(や、やっと!)
ご褒美というなの鞭がもらえる。
やっと望んでいたものがもらえると思い、ユリカは涎を垂らしながらゾクゾクが止まらない。
「あんまりそういうことしたら……めっ!」
指先で額を小突く。
ズッ――――――――
キュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウッッッンッッッッッッ!!!!
額を泡の弾丸が撃ちぬいた気がする。
(な、なに“めっ”って! なに“めっ”って!! か、かわいすぎか!!!! 可愛すぎか!!!!!!!)
またしても思っていた反応とは全然違うけれど、思っていた以上に威力の強い攻撃である。
バッサリと切り捨てるのではなく。
ふわとろあまあまの弾丸で撃ちぬくなど。
(女神は私の予想通りになんて動いてくれないよな……そうだよな……でも、幸せ)
長く短いシャワーを浴び終えると、イヴは丁寧にユリカの髪をブローしてくれた。
パジャマ姿の二人がリビングで仲良く髪を乾かし合う。
「あんら、いづしがのお嬢様でねぇが」
ぬっと顔を出したのは祖父である。
パチンコにでも出かけていたのであろうか、大層なお菓子の山を持ってきている。
「お邪魔しています。御爺様」
「あんら、どうもどうも、ようごそおいでなすって」
「今日泊っていくっていうからよ」
「んだが。イヴおめさ飯くっだが?」
「うぅん、まだ」
「んだば、寿司でもとんべ。じーちゃんパチンコさ勝ったがらよ。お嬢ちゃんもたんと食べてげや」
「ありがとうございます。ご馳走様です」
愛想とは思えぬ笑顔で祖父を見る。
しかし、ユリカは祖父を見ながらも先ほどの浴室へと視線が通り過ぎていく。
(脱衣所には――イヴさんの脱ぎたてがある)
どきどきする。
前回は制服しかなかったが、今脱衣所にはイヴが身に着けていた全てがある。
(イヴさんがつけていたワインレッドがある)
妄想する。
もし自分が――イヴのあれをああしていたらどうなるだろうか。
イヴのあれをああする自分を、イヴが見つけたらどうなるだろうか。
きっと『めっ』じゃすまされない。
(問題はいつ脱衣所にいくか――)
祖父を交えた世間話をしながら考える。
ユリカの頭はワインレッドに染まっていた。
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あと一言でもいいので!!!!
感想が!!!!
ほちいです!!!
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