66あんたのことなんてッッッ
プライバシー保護のため、顔にはモザイク、音声には加工が施されています。
六道千佳さん(仮名)にお話を伺いました。
――BLの本を出していたというのは本当ですか?
「えぇ、出しています。現在は妊娠中なので活動は疎かですが」
――ご家族はご存じなのですか?
「知っています。パパともそういった趣味を通じて出会いましたし。
娘にもたまに読んでもらって感想をもらっています」
――活動期間はどれほど?
「もう随分と長いですね。私のときは今見たいな大きな箱じゃなくて、もっと小さな産業ホールとかでやっていました。
あの頃はまだオタクっていう言葉がやっとできたくらいの時代で、まだ秋葉原にもバスケットコートがあるくらいで。
そう! 昔だと幽遊〇書とかが超流行っていて! 私の推しは〇助だったんですけど、俺のレ〇ガンでお前の」
話が長すぎ、かつこちらの話を聞いていないため割愛。
しかし、六道千佳さんの熱意はそれほどのようである。
――本を出したきっかけは?
「あの当時は今みたいなSNSとかなくて、雑誌のお友達募集によく投稿してたんです。
それで何人かと仲良くなって、私の絵を褒めてくれる人が出来て。最初は友達の小説に挿絵を描く程度だったんですけど、
そのうち同人だそうよって話になりました」
――同人を出すということはサークルをお持ちなんですね。
「はい。もう数十年の付き合いになる友達とサークルを立ち上げて、今も不定期に活動しています。
昔は同人ばかりだったんですけど、今はオリジナルも描いています。
特にこの前描いたやつなんか結構私好みのやつで、主人公はノンケなんですけど、同棲しはじめてから」
また話が長くなり、さらにR指定な言葉の祭り状態になったため割愛。
――では、今後も活動は続けるんですね。
「はい。しばらくは出産と育児に追われるとは思いますが、やっぱりこれは私の生きがいですし。
なにより楽しいですからね、好きな男同士が私の思うままに〇〇〇してるのは。
やっぱり、男同士の」
R指定な話の連続になったため割愛。
しかしながら、千佳さんの熱量は本物のようである。
取材の最後、千佳さんは今まで出してきたという同人誌を見せてくれた。
どれもこれも耽美な表紙な作品が多い。
タイトルもえぐいものが多く、本当に千佳さんが描いたとは思えないほどの作品たちだ。
現在妊娠中の千佳さんだが、おなかを愛おしそうに撫でると娘たちにもいつかはBLに染まってほしいと語っていた。
現在長女は16歳であり、BLの道への開花はしていないそうだ。
しかし、千佳さんはそれでもあきらめていないという。
――最後に一言なにかありますか?
「結婚して妊娠した私がいうのもなんですが、男は男の人と、女は女の人と恋愛したほうがいいと思います。
だって、そっちのほうが」
割愛。下ネタにはじまり、下ネタにはじまるインタビュー。
千佳さんは長い長い持論を話すと、息を荒くしていた。
娘さんたちが今後どうなるのか、優しく見守っていきたい。
(著;六道和利 六道家の大黒柱より)
◇ ◇ ◇
イヴが何を言っているのか分からなかった。
美里はその大きな瞳を見開くとただ黙ってイヴのことを見つめている。
「それうちのお袋が描いたんだよ……証拠みる?」
「ぇ……ぇえ?」
そういってスマホを取り出すと、イヴは一枚の写真を見せた。
写真の中には魔法少女っぽいコスプレをしたイヴの今より若い姿。
そしてその隣には美里が買おうとしていた本を手にした六道母の姿。
撮影された場所は――恐らくはイベント会場。即売会のようだ。
「な?」
「えぇ……ぇぇ……」
「そのサークル名シックスロードになってるだろ」
「ぁ、ぁ、ぅん……」
「ほら、六道を英語にしてシックスロード。そのままだよな」
「ぇえ……」
信じられない、という衝撃を超えていた。
まさか買おうとしていたBL本の作者が同級生の母親とは――これが現実なのか疑ってしまうほどの衝撃である。
もしかしたら夢かもしれないと思って、舌を噛んでみる。痛い。
夢では、無い。
カゴに入っていた同人誌を取り上げると、イヴは元の棚へと戻した。
「これ買わなくていいよ。うちにあるから。今度やるよ」
「ぇ、で、でも……」
「いいよいいよ。どうせ同じの何冊かあるし。それにうちにあるのサイン本だからそっちのがよくない?」
「ぃ、いいの……?」
タダで手に入る。しかもサイン本。
ファンであるならばこれほどありがたい話があろうか。
「明日持ってくるよ。だから、明日も学校おいで。な?」
「ゎ、ゎかった……」
◇ ◇ ◇
帰宅すればいつもはすぐにでもパソコンに向かってネトゲをしていたのに、今の美里は部屋でぼんやりとしていた。
帰りの出来事が忘れられない。
未だに夢ではなかったのかと思うが、机の上をみれば買ってきた同人誌やグッズが置いてある。
(夢、じゃないのか……)
まさかあのような場所で同級生に、しかも自分と真逆の陽キャに会うとは思いもしなかった。
その上、その陽キャの母は買おうとしていた同人誌の作家であるなんて――。
(普通あるか、こんなこと?)
ため息をつく。
疲れてはいないが、なんだか心がざわつくような気分。
色々と衝撃がありすぎた。昨日今日で色々なことがありすぎた。
(たったの二日で、数か月分の会話した気がするな)
また、ため息。
悩める思考に、スマホのバイブレーションが反応する。
見てみれば『りく』という人物からのラインである。
(六道さんか……)
通知を開いてみれば、そこには数枚の写真が送られてきている。
今日買おうとした同人誌。そして同サークルの過去作品がいくつも写真に収められている。
『お袋に言ったら、全部あげるって』
『いいの?』
『お袋が言うんだからいいでしょ。今度スケブもしようかって喜んでたよ』
『ほ、本当? マジならお願いしたいです』
『あいよー。今妊娠して里帰りしてるから帰ってきたらするって』
『あ、そうなんだ。大変な中なのに、ありがとうございます』
『うぃー。とりあえず明日こいつら持ってくわ』
スマホを閉じる。
「はぁ~~~~」
明日持ってきてくれるというのだから、明日も学校には行かなければならないだろう。
ちょっとだけ嫌で、ちょっとだけ嬉しい。
このよく分からない感情を流したくて、美里は風呂場へと足を運んだ。
制服を脱いで鏡に自身の姿を映す。
「あ……」
下着姿の自身。それは見たことのある姿なのに、前髪にはいつもはないものがつけられている。
ミントグリーンのヘアピン。
ヘアピンを取ると、指先でリーフ型をなぞる。
(ヘアピンもらって、明日は薄い本ももらえるのか……なんかもらってばかりだな、お返ししたほうがいいよな……?)
といっても、どんなお返しをしたらいいかなんて分からない。
陽キャの好きそうなもの――メイク用品? 金? スイーツ? ブランド品?
どれもこれも金がかかりそうなものばかりだ。
(お返しもめんどくさいな……もし高額なもので返せって言われたらどうしよう……)
下着姿のまま部屋へと戻るとラインに文字を打ち込む。
『何かお返ししたいんだけど、何がいい?』
少しの間があって、返信がくる。
『別にお返しとかいいよ』
『色々もらってばかりだし……』
「それに返さなかったらそれはそれで嫌味言われそうだしな……陽キャどもはすぐ陰のモノをバカにしやがるじゃねぇか」
『じゃーそうだなぁ。プロテインでいいよ。コンビニの』
「プ、プロテイン?」
それが具体的にどのようなものか分からない。
スマホで検索してみれば、紙パックで売れらている飲料らしい。
「筋肉女子かよ……まぁ、安いし、それでいいならいいか……」
『分かった。じゃぁ、明日買っていくね』
『うぃー。また明日なー』
連絡を終えて風呂場へと戻る。
(明日も学校か……めんどうくさい)
顔半分をお湯につけてぶくぶく。
(でも、薄い本もらえるは……ちょっといいな)
ぶくぶく。
(六道さん……キャラ変わったけど……中身はどうなってるんだろう)
ぶくぶく。
(いいよな……デビューして成功したやつは……)
ぶくぶく。
(私も……)
顔をあげる。
(いや、無いな。私はあんな風にはなれないし……なろうなんて思わないな……どうせ今だけだろ)
前髪を撫でながらそう思う。
(明日も……六道さんに会うのか……はぁ、話したくね――……)
笑顔が浮かぶ。
(……でも)
脳裏に浮かぶ姿、脳裏に浮かぶ笑顔。
(ちょっと可愛いんだよな、あの人)
赤い顔が、お湯に沈む。
感想が!!!!!!!!!!!! ほちいです!!!!!!!!!!
一言でも!!!!!!!!いいので!!!!!!!!!!1
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