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42ヒロイン会議

 いつでもこいと言われて、全員が今にも駆け出したい気持ちで放課後を待っていた。

飼い主に呼ばれて尻尾を振る犬がごとく。


 しかし、学業が終わった瞬間。

誰よりも早く動いた凛は、綾香と千鶴のことを無理やりに引っ張り出すと、図書室へと集まらせた。


 エ〇ァの碇ゲ〇ドウのように悩まし気な表情をする凛。

何故こんなことをしたのか、綾香は考える――。

予測はしていた。きっとイヴは三人全員に同じ内容のラインを送っているはず。

だからこそ、凛は綾香と千鶴を呼び出したのだ。


(凛さん……そういうことね……分かったよ。凛さんのしたいこと)


 碇凛は視線を鋭くすると、ゆっくり組まれた手を解く。


「綾香ちゃん、ちーちゃん、二人にもイーちゃんからの連絡がいっていると思う」


(やはり)


(……凛さんも綾香さんもどうしたんだろう?)


 腕組をする綾香、きょとんとする千鶴。


「綾香ちゃんは……凛がなにを言いたいか分かっているようだね」


「勿論……」


 ゆっくりと席を立ちあがると、綾香は二人向かってファイティングポーズを取る。


「いいよ。花嫁になるのは一人。気が済むまで殺し合おう」


「ごめん、違う。座って♡」


「え、違うの? イヴをめぐってファイトクラブするんじゃないの?

 てっきり“皆さんには今から殺し合いをしてもらいます”って言うのかと思った」


「そんな野蛮な……」


「うん、綾香ちゃんに答えを求めた凛がバカだったよ♡ とりえず座れ♡」


「あ、はい」


 綾香のおばかは不治の病。死んでも治ることはない。

凛は少しばかり綾香が最近成長していると思ったが、ちゃんと道を逸れて成長しているようだ。


「凛ね、考えたの。三人とも気持ちは同じ。三人とも状況は同じ、だからね、ここは一つルールを決めようかなって♡」


「「ルール?」」


「そう、誰も抜け駆けしないためのルール♡ 今は全員が放課後イーちゃんのおうちに遊びにいけるでしょ?」


「あ、私はたまに委員会と部活の呼び出しが……」


「じゃぁ、ちーちゃんは脱落ね♡ 帰っていいよ♡」


 心の底からニンマリと笑う凛。

邪魔が一人減るならばこれほどいいことはない。


 でも、千鶴も負けるわけにはいかない。

帰っていいよ、と言われて素直に引き下がれるはずもない。


「で、でも、毎回じゃないから……」


「はっきりしてくれないとルールが作れないの♡」


 凛はメモ用紙を取り出し、三人の名前を書き始めると『ちーちゃん』の名前に×印を書き込む。


「待って! 大丈夫、私も行ける。参加できるから!」


「そう? 無理しなくていいよ♡ 委員会も部活も大事でしょう?♡」


「ふ、風紀向上ウィークも終わったし、しばらくは活動はないし……部活動もしばらくはめぼしい大会もないと思うから……だから」


 しょんぼり泣きそうな千鶴。

 ニタリいじめ始める凛。

こっそりメモ用紙を取って、凛とちーちゃんの名前に×を書く綾香。


「おい、おかっぱ♡ 勝手に×つけんな♡」


「え、そっちこそ千鶴さんに喧嘩売ったんだから最期まで責任とってボコボコにされていいよ」


「う……」


 綾香も凛も、千鶴のその実力は見ている。

視線で気配を感じ取り、残像を残せるほどの脚力。

あらゆる部活動に精通しているとは聞いたが、そこまでの実力とは思っていなかったほどである。

もし、ステゴロなんか挑んでしまえば、秒殺は目に見えている。


「凛さんから喧嘩売ったんだよ? ねぇ? 分かってる?」


「……」


 小さくなる凛。


「だからさ、早くッキャットファイトでも殴り合いでもしてくださいよ? お? ロリビッチから喧嘩売ったんだろ?」


「はい……」


 珍しく綾香は凛を攻め続ける。

しかし、凛も自ら売った喧嘩だと自覚しているし、千鶴の戦闘力も思い出していた。

 珍しく反論もせず、ただただ小さくなる凛が、綾香は楽しくて仕方ない。


「オラ! ロリビッチから喧嘩売ったんだろ!!!! そのにゃんこパーカーは伊達か!!!!

ほら、猫パンチしろよ!!! 最初ハナから負けてんな!!!!1 お前のイヴへの想いはそんなもんか!!!!1」


「まぁまぁ、落ち着いて。私喧嘩なんかしたくないよ。ね? だから綾香さんも凛さんも落ち着いて」


 綾香としてはまだ凛をイビリ倒したかったが、仕方なく矛を収める。

凛はフードを深く被って震えると毛を逆立てている。まるでビビった仔猫である。


「え、えとね、ルールっていうのはね。ほらあたしたち状況は同じでしょ?♡

だから、みんなに平等に機会があればなぁって……」


「続けて」


 ふんぞり帰った綾香が先を言わせる。


「最初は皆でイーちゃんちにいってさ♡ そこから一人ずつイーちゃんちに行くっていうのは……どう?」


 綾香と千鶴に衝撃が走る。

確かに、そういった提案ならばありがたいものだ。

全員で競えば、恐らくは毎日のように全員が顔を合わせることになる。

しかし、ちゃんと順番を決めて回せば、全員に平等にイヴと一対一になる時間が設けられることになる。

邪魔がいないのは何よりもありがたいことだ。

邪魔がいなければしたいこと、出来ることはいくらでもある。

逆に邪魔があれば出来る事もしたいことも極端に減少してしまう。


「いいね……」


「私も賛成」


「よし、じゃー順番どうしようか?♡ じゃんけんで勝った順でいい?」


「そうしよう」


 言って綾香が再び立ち上がる。


「じゃぁ行くよ♡ さーいしょはグー」



 綾香は――


 そのときの綾香は――


 一番最初になりたいという願いから、その拳に力を凝縮しはじめる。



(もうこれで――終わってもいい……)



 一番最初を取って、その場で既成事実を作る。

そうすれば、もう誰も寄り付かないと思った。



(だから――)



 綾香の念が拳に集中する。メキメキと音をあげながら拳が硬くなる。


 何年、何十年と修行しないと得られないであろう肉体が綾香に宿る。

ムキムキすぎる肉体。今にも制服が破れそうな強靭な身体ぶき



(ありったけを――!!!!!!)



 ブオオッ――。


 おかっぱ頭であるはずの綾香の髪は何メートルにも伸びると、天井向かって逆立っていく。

構える拳。

もうこれが終われば、何もいらないという覚悟。

もうそれは綾香ではない。言うならば綾香さん。



「ジャン……

 ケン……

 ……」



 キィィィィィィン――。



 数年ぶんの、数十年ぶんの綾香のありったけが、拳を光らせる。



「ポン♡」


 グー。

 パー。

 パー。


 綾香、初戦敗退。


「ずるい!!!!!!!! ずるいぞ畜生!!!!!!!!!!!」


「ずるくないよ♡ あんだけ拳握ってたら誰でもグーだすって分かるよ♡」


「ちくしょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」


「あ、綾香さん」


「はいはい♡ おばかは置いといてちーちゃんはあたしとじゃんけんね♡」


「うん」


 ジャン。

 ケン。

 


(ごめんね、ちーちゃん今の私にはあなたの行動が丸わかりなのよ――)


 見開かれたその瞳には――勾玉のような3つの模様が浮かんでいる。


(この凛ちゃんの写〇眼に見切れないものはないの!!!!!!!!!!)


 もちろん、ただのカラコンである。

しかし、気持ちって大事。

凛は自らにプラシーボ効果をかけると、千鶴が何を出すのか分かったつもりになっている。


 ポン。


 凛、チョキ。

 千鶴、グー。


「うすらとんかちいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!!!!!!!!!!!」


「私が一番最初でいいのかな?」


 力を振り絞った綾香は、その場で何百年も過ぎてしまったように干からびると生気を失っている。

同じように、凛も血の涙を流すと何故か片腕を隠して倒れている。


「そ、そうだ! 最初は全員で行こうよ! ほら、凛さんも最初は全員って言ったでしょう?」


 なんとか二人を励まそうとするが、二人ともすでに虫の息である。


「ね? 皆で頑張ろう。綾香さんも凛さんも! ね?」


 眩しかった。千鶴の顔がただ眩しかった。

ライバルだというのに励ます姿も、手を差し出してくれるやさしさも何もかも。


「皆で一緒に頑張ろう」


 その微笑む顔は――


 まさに正統派美少女メインヒロインに相応しいものであった。



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