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依代と神殺しの剣  作者: ありんこ
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卒業式の変

 卒業式に思い出はありますか。ありんこはありません。小学校の時はインフルエンザで寝込んでいたし、中学校の卒業式は校長の長話が過ぎてずーっと居眠りをしていました。高校の卒業式はまともなのを経験したいです。

 話の飛ぶ先は、三月。桜が咲き始めていた。私は講堂の後ろの方でパイプ椅子にお行儀よく座っていたわ。もうわかるわね。卒業式よ。

 もちろん、私のじゃなくて、三年生の先輩方の。先輩なんて言うの、おかしい?そうね。でも、神より年上の人間なんてバケモノじみた称号を名乗れる人、世界に何億人いるのかしら。

 何度か練習をして、式の最中立ったり座ったり。役者よりはエキストラね。来た保護者の皆さんに豪華さを演出するための舞台装置。それでも、まあ、いいんじゃないかしら。主役は先輩方よ。

 卒業式をつつがなく終えると、春休みに入る……のはこの先輩方だけで、我々在校生はそれから一週間ちょっと、終業式を待たなくてはならないわ。さすがに明日はお休みだから、卒業気分は味わえるけどね。明後日からは普通に登校だわ。

 あれは三年生の二組さんが証書の授与を終えて、三組さんに移るまでの間だったわ。ろくでもない気配を察して、というよりもっと直接的に天井のどこかが崩れる音と自分とよく似た気配を感じ取ったの。

 とっさに触手を四方八方に飛ばして、落ちてきたがれきを人のいない方か体育館の外へはじき出す。

 騒ぎに乗じて、できるだけ見えにくく、そして素早く動かしたつもりだけど、何人かは今のを見てしまったかしら。天井が崩れだしたら、普通天井を見るものね。

 さすがにピンポイントで私が出したところを見た人はいないと思うけど……あーあ、せっかく作り上げたのに、充実したリアルが崩れてくわ。あまり惜しいとも思わないけどね。

 風通しのよくなった体育館は笑っちゃいそうなくらいの混乱で、パイプ椅子が倒れる音が耳障りだわ。けが人も出たみたい。

 あっちの方には「地震かもしれない!早く外へ!」って誘導してる人がいるけど、先生じゃなさそうね、どこかの親御さんだわ。先生何してるの?

 しかし、あの気配。それが何なのか、わかっている。奥さんだわ。でも……なぜ、奥さんの気配は私によく似ているの?私が彼女を食べた結果、体の構成要素が奥さんに似てきたということなのかもしれないけど、何だか不気味ね。

 彼女がなぜここへ来たかは、わかる。目につき始めた妾を始末しに来たのね。でもそう簡単に、建物の天井を落とすくらいでは殺せないこともわかっているはず。にもかかわらずここを襲撃した。そんなことをしても死ぬのは私じゃなくて、ここに集まった皆さんね。

 なら逆に、そっちが本命かしら。

 ここを襲撃する。で、少なくともけが人が出ると。それによって私への牽制を図った。こう考えると辻褄は合う。しかし彼女は(おじいちゃんの話によれば)旧支配者らしき何かにも関わらず、人間を気に入っている。妾の牽制のためだけにそれを危険にさらすかしら?

 ああ、そうね、実際にさらしたわね。気に入っているはずの人間を、妾の牽制のためだけに危険にさらした。それはなぜか?

 彼女の中で、私がまだ『人間』の範疇にあるとしたら?ありそうな話だわ。妾は人間のようだから、牽制するだけにしよう。同族を少し痛めつければ手を引いてくれるかもしれない。

 この私がいて、けが人ならともかく死人を出すわけがない。ということは、さらされるであろう危険もごく少なくなる。なるほど。

 となると……今危ないのは、おじいちゃんの方。封印が殺害に変わっても彼には抵抗できないわ。助けに行かなきゃ……ええ、もとよりそのつもりよ。もとより、おじいちゃんは助けるつもりだし奥さんは殺すつもりだわ。

 なら、決戦へ行きましょう。

 体育館を別の出口から出て、数歩歩いた時だった。

「どこ行くんだよ、衣川」

 出てきたところに見た目だけがクリーチャーな方の弓削がいたの。

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