日本史は好きですか?
昔ありましたね。「赤い部屋は好きですか?」って。普通の短い文なのに、どうして何となく嫌な予感がするのでしょう。
ということで今回のタイトルは何となく嫌な予感に仕上げてみました。え?嫌な予感の意味が違うって?気のせいです。
旅館について即落ち、からのドリームランドまでは順調だったわ。白い世界から外へ。でも出る場所が変だったの。松林。鳥居。私はそこに立っている。来たことはない。
でも文脈的にどこかは判断できるわね。
「出雲大社?」
そうじゃよ、と遠雷のようにおじいちゃんの声がして、振り向いた。
「夢の中のな」
おじいちゃんのかわりにみづらに髭のおっさんがいた。いや、白髪だからおじいさんかもしれない。それはそうと誰この人。ごついんだけど。古墳時代感あるお召し物なんだけど。
「これ、睨むやつがあるか。よく見よ。儂じゃ儂」
知らないおじさんにそんなこと言われる筋合いはないわ……でも素直に、よく見る。
頭に冠的な何か。足結。勾玉。管玉。材質はヒスイと青ガラスかしら。腰にはいた鉄剣。環頭太刀ね。背中に弓矢をしょっている。みづら。つる草のようなもので髪を縛っているように見える。
ふさふさの髭。両頬とまなじりに入った赤い線、これは鯨面の変化版かしら。白い衣の生地はおそらく、麻。その裾からちらりと見えるのはきっと文身だわ。朱丹を以って身に塗ったのね。
「どう見ても前方後円墳の中に屈葬されたクニかムラの人だわ」
「そうそう我こそは大和朝廷のって何を名乗らせるんじゃ。縁もゆかりもないわ。しかも屈葬は縄文時代じゃな。歴史の教師と宮内庁が怒るぞ」
あなただって鯨面文身してたじゃない。思ったけど言わないことにした。だって相手は古墳時代でも生きてたのよ。「え?みんなしてたけど?」とか言われたらもう私にそれ以上の反論はないわ。
「宮内庁……!?宮内庁は敵!だって一部の古墳に入らせてくれないもん!」
「別にいいではないかそのくらい……ぬし、左翼なのか?」
違いますー。ただ中に興味があるだけですー。
「一方の継体天皇陵は荒れ果ててわんこの散歩コースと化してるわッ!勝手にコート作っておじいちゃんおばあちゃんがポートボールしてるのよッ!?いいのか!?これでいいのか日本人ッ!」
「今度は右翼じみたことを言い出したのう」
「だってかわいそうでしょッ!一応人のお墓なのよあれは!?しかも入らせてくれない一部と同じ、つまり一応天皇陵なのよッ!名前もわかってんのよッ!どうしてこうも扱いに差があるのッ!?おかしいでしょッ!」
がるるるるっ。おう、落ち着け、落ち着くのじゃ。おじいちゃんFeat古墳時代が私の背中をぽんぽんと撫でる。落ち着いてきた。
「……では立ち入られて調べられている古墳はどうなんじゃ?」
「仕方ないのではなくて?現代人だって合祀されたりお墓移されたりするんだから多少はね」
ああ、そうそう、どうして古墳時代なのかって話ね。
どうやら日本神話の舞台って大体その頃になるらしいの。それで、「じゃあ衣装も合わせた方が面白くない?」って話になって、それから人型バージョンで服装を古墳時代エディションにするのが通例なんだそうよ。
ここはコスプレパーティーの会場か。
「ぬしは別に良いぞ、代理じゃし。問い詰められたら、
『え~?島田結?たすき?裳?文身?何のこと~?私AD300年ごろからAD600年ごろのことはよく知らないの~。副葬品が鏡や勾玉から武具に変わっていったことなんかわかんないの~』
とかなんとかあほの子になっておれ」
「ちょっ……おじいちゃん裏声やめてっ、こっちはドリームランドだからリアルに草生えちゃうわ」
「つまりは緑化エンドじゃな」
何をキリッとした顔で言っているのかしら。
しかもさっきのだとわかってるじゃない。それだけわかってれば日本史の古代の分野は大体何とかなるじゃない。さてはあほの子と見せかけて難関大を狙ってるわね。とんだカマトトだわ。
「とにかく、ここにいるうちはこの姿じゃからな。間違えるでないぞ」
「はーい」
会場はこの出雲大社in theドリームではなくて、ここからつながるカダスのアジア領域。
正直違いがよくわからないのだけど、たぶん、先住こと地球本来の神々はカダスに幽閉されていて、その中で日本にだけ特例作るなんてちょっとありえないってことなんでしょうね。
一度出雲大社に来る理由は、そうすると回線が速いからだそうよ。一部出てこれない人はホログラム出演になるらしいからその影響ね。
嫌いじゃないけど年号が覚えられないよーっ。




