名状しがたき夜会のようなもの
な、な、なんと……あの依ちゃんが謎の紳士に導かれて社交界デビュー!?熱い視線に困っちゃう!みたいな話です。
ついた先の会場では誰も古墳時代な服装をしていなくておじいちゃんがプッツンするまで予想していた通りだったわ。
すごい剣幕よ。そこへ直れ!儂は連絡を受けておらんぞ!連絡網の中ほどなのに!ってね。寂しいやつか。もちろん他の皆さんのドッキリだったらしくて、ドッキリ大成功のプラカードで全員古墳時代に戻ったわよ。
え、古墳時代に戻る前の服装……?名状しがたいのだけど、オタクのオフ会って言ったらわかるかしら。忌まわしくてあまり詳しく描写したくないわ。
「リューシいじるの面白いんだもん。座んなよ」
ホログラムのひとが言った。会場は居酒屋のお座敷みたいな感じで、畳敷きよ。テーブルにはご丁寧にも枝豆とサラミとビールとお冷が用意されているの……時代考証って知ってる?
一方おじいちゃんは憤懣やるかたなしとばかりにたたずんでいる。困ったわ、私が座っていいのかよくないのか迷うじゃない。
「ん、君、誰?いつものひとと違うねー」
さっきまで眼鏡に赤のネルシャツだった脂ギッシュな若者……と、あまり呼びたくないよくない方の若者が私に目をとめた。何ていうか、そう、フヒッて笑いそうね。嘗め回すように見てくるわね。
私はできるだけ不快感を押し殺してにっこりと微笑んだ。
「だ、代理ですわ」
「フヒッ」
ほら見ろフヒッて笑ったぞ!これ絶対あれだ!某アニメ映画風に言うと実家暮らしのデュアルディスプレイだ!壁とかに何のとは言わないけどポスターを大量に貼ってるやつだ!
「こら見るな、ぬしにはもったいないわい。依、こっちにおいで」
おじいちゃんは実家暮らしのデュアルディスプレイからかなり距離を取って座った。ホログラムさんが「すねた」とそんなおじいちゃんを形容する。
ということは、このひと見た目があれなだけで割とまともな神様なのかしら。
「へぇ~君、よりちゃんって言うンだ、フヒヒヒッ。はかどりますなあ」
そう思っていた時期が私にもありました。引くわー。そっとおじいちゃんの背後に隠れる。ニキビの浮いたてらてらの額に数人の神様が飛ばした枝豆がびしばしとヒットするのが肩越しに見えた。自重しろってことらしいわ。
ていうか枝豆もったいないんですけど。
しばらくしてそこでカムハカリ的な何かが始まったけど、私には内容がよくわからないからひたすら枝豆とお冷と時々サラミを楽しんでいた。あっ黒豆の枝豆だわ。小さな幸せー。
でもそうね、会話の内容としては中国を分け合う列強の会話に似てたかしらね。地図出して線引いたりしてるの。状況としても大差ないしね、ぴったりだわ。どこかの新聞社がケーキを分け合う姿で風刺しそうよ。
そっか……酒の肴に決められてるのか、日本の行く末。そりゃ行き詰るわ……。
「依、ちょっとそっちに行ってビールを二本ほど取って来てくれぬか。瓶のやつじゃ」
「はーい」
いつの間にかパシられてるような気もするけど、下積みだって大切よね。
「あー、冷蔵庫の横に伝票みたいのあるの、わかる?それに時刻と本数書いといてくれないかな」
「はーい」
ちなみに枝豆とサラミはお皿に無限にわいてくる永久機関を採用しているそうよ。どうしてビールもそうしなかったのかしら。永遠の謎だわ。
あー、お酒の匂いで頭くらくらするー。うちの家系には酒豪なんてまずいないからなあ。
「あの、おじいちゃん」
「何じゃ?」
「ちょっと外の空気吸ってきたいわ」
「ならそこをまっすぐ行って左じゃ。ちゃんと戻ってくるのだぞ」
「はーい」
私は戻ってこられなかった。戸口は別の場所へつながってしまったの。いやほんと、宝具錬成の実演が見られなかったことをいっくら悔やんでも足りないわ。
手始めにクトゥルフとボルボロスですかね、名ありキャラ。どうせこの登場人物たちも漠然としか認識していないので、旧支配者の皆さんは漠然とでどうぞ。




