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依代と神殺しの剣  作者: ありんこ
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プール・イン・依

 誰も待ってなかった水着回です。

「喉が渇いたわね」

 ぽつんと呟くように言った。でも本当に喉が渇いたってわけじゃなくて、ここまで二人して一言も口を利かずにデパートを歩いているから気まずくなったのをごまかそうとしたのね。

 ええ、とても気まずかったわ。隣にいるのが何者かっていう認識さえぐらぐらっと崩れてきそうで。もう、歩いている自分たちが人間なのか、それ以外なのか、そもそも本当に私は私なのかって、ね……。

 もちろん私は私よ。それだけは今も昔も変わらないわ。

「ジュースならあるが、どうじゃな」

 センスの欠片もない弓削のリュックサックから緑の液体の入ったペットボトルが出てきた。どうやらおじいちゃんも沈黙に耐えられなかったらしいわ。

「……気が利くのね」

 ありがたいけど、本当に喉が渇いたわけじゃない私はちょっと面食らった。準備のいい人だ。

 別にお腹がタプタプとかそういうことはないからもらっておこうかしらね。ちょっと甘さが控えめで、薄いジュースだったから喉が良く潤ったわ。

「これ、どこの何てジュース?」

「さあのう。どこぞの自販機で買ったような気もするが忘れたわい。ペりペりするアレは気になって剥いでしまうものでな」

 由香のおじいちゃんみたいなことしやがる。由香のおじいちゃんは何でも剥がしたくなるのよ。傘の握る部分についてるビニールとか、ペットボトルの、ジュースの名前とか成分とかが書いてるやつとか、袋とじとかね。全部剥がしちゃうの。あのペりぺり感が気になるんだって。

 何飲まされてるかわからなくって怖いから、人にあげるときは剥がしてないのを渡しなさいね。うふふ。

 ちまちま飲んでいたと思うのだけど、気づくとペットボトルは空になっていた。デパート内のごみ箱に放り込む。何かの気配を感じて上を見上げた。

 何も見えないわ。天井だけよ。季節的にスイカとかの飾りがついているわ。でもきっと何かいる。だって相手もこっちを見ている。

「あ、逃げた」

 それっきり私は興味をなくして、昼食だけデパート近くの回転寿司でご一緒して帰ったわ。

 味の好みは変わったんじゃなかったかって?変わったわよ。ただ、あれからまた少し変わって、好みが広がったの。もう何だって来いよ。

 おじいちゃんは、そうね、いつも通り笑ってたわ。弓削の顔で。弓削じゃない笑顔で。

 夜、久しぶりに夢を見た。ドリームランドに行くような、はっきりした夢じゃなくてよ。もやもやして、ふわふわして、夢らしい夢だったから内容もよくわからない。でも何だか懐かしかったような気がするわ。どうしてかしら。

 プールに行ったのは結局八月になってからだった。おじいちゃんセレクトの水着、なかなかよかったわ。プールの視線が後姿に釘付けよ?正面向いたらちょっと残念だものね。主に顔が。

 だからかしら、弓削はずっと視線をそらしてばっかりだったわね。うふふ。

 そうそう、このプールにもかき氷を売る店はあってね、バケツに一杯かき氷を作って、これを五分以内に完食したらタダ!っていうのをやってたのよ。面白いでしょう。入場料も安くてね……今でもやってるのかしら?

 あらら、プール自体廃業しちゃったの。惜しいわねえ。

 あそこにもいろいろ居たから、殺して食べてあげたのになあ。ちぇ、無駄骨だったわね。

 脱線失礼。戻るわ。

 もちろんバケツかき氷の件よ。参加したに決まってるでしょ?五分以内に食べる自信はあったもんね。だって普段片手間に妖怪を貪る女子高生よ。バケツ一杯のかき氷くらいなんてことないわ。当然完食。私大勝利。

 心配されたのが心外だったわ……主に弓削。あいつ、あんな魚類みたいな見た目のくせにろくに泳げないの。

 なのにどうして私をプールに誘うかなああははは。ずっと浮き輪にしがみついてるだけで全く面白くなかったわ。ばっかじゃないの?

 唐突だけど話は盆踊りまで飛ぶわよ。夜闇を駆けたり妖怪駆逐したり大したことしてないからね、きっと面白くないと思うわ。だってワンパンだし。

 浴衣はおばちゃん経由で手に入ったの。白と紺のよくあるやつ。しましまの。

 え、今はレースとかついてるの?はぁ……ジェネレーションギャップで全身打撲だわ。今や私がおばちゃんね。ということはおばちゃんはおばあちゃん!?年を取るわけね。

 本人には内緒よ。

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